宮城県第2の都市、石巻市の中心部を流れる旧北上川の中州には宇宙船のような建物がある。石ノ森章太郎さんの作品をはじめ、さまざまな漫画に関する展示を楽しめる石ノ森萬画館だ。マンガッタンという愛称で呼ばれている。その縁で名付けられたJR仙石線の列車「マンガッタンライナー」の初代車両が3月23日、老朽化のために引退を迎え、石巻駅には多くの鉄道ファンが駆けつけた。

愛された初代マンガッタンライナー
「楽しい電車だった」「マンガッタンライナーありがとう」。集まった子供たちは口々に話し、自ら書いたという絵を見せてくれた。石ノ森さんの作品「ロボコン」などが書かれた車両。親しみと愛情が感じられる絵だ。

仙台と石巻を結ぶ仙石(せんせき)線を走るマンガッタンライナーは2003年、JR東日本と石巻市が共同で運行を始めた。4両編成の車両には石ノ森章太郎さんが生んだ「ロボコン」や「ゴレンジャー」が描かれている。

マンハッタン島から名付けたマンガッタン
「マンガッタン」という名称は、石ノ森萬画館のある場所がニューヨークのマンハッタン島に似ているということから付けられた。列車の名前を公募で決める際にも、マンガッタンに連れて行ってくれる列車として「マンガッタンライナー」の名前が選ばれた。
ちなみに名称募集には1973通の応募があり、「JR009」や「石巻ヒーローライナー」など、石ノ森章太郎さんにちなんだものが多かったという。

震災を乗り越えた復興のシンボル
2011年には東日本大震災が発生。石巻市を含む宮城県の沿岸部は津波で被災し、仙石線も列車が津波にのまれるなど、壊滅的な被害を受けた。だからこそ、2015年に仙石線が全線で復旧したとき、沿線の住民は感慨深くその光景を見守った。

初代マンガッタンライナーのラストランを見送りに来た男性も「石巻まで仙石線が戻ってきた時『マンガッタンライナーを石巻で見られて良かった』という気持ちでいっぱいになった」と当時を振り返る。マンガッタンライナーをはじめ仙石線の車両は、いわば「復興のシンボル」として、住民の心の支えにもなってきたのだ。

2代目は健在 漫画の夢はつづく
仙石線の初代マンガッタンライナーは3月23日、多くの人に見送られ、石巻駅を後にした。
今後は2008年に登場した2代目がその役割を一手に担うことになる。2代目にも初代と同じく「サイボーグ009」や「仮面ライダー」など石ノ森章太郎さんの人気キャラクターが描かれている。漫画の街を目指すという、石巻市の街づくりの方針に共鳴していたという石ノ森さん。その夢はまだつながっている。
