中国・上海で開催中のアジア最大級の家電展示会で、AIを搭載したスマート家電が注目を集めている。中でも、中国企業ディープシークの技術が各製品に採用され、家電業界の技術革新をリードしている。専門家は、家電がプラットフォーム化する未来において、日本企業の「安心・安全」の強みが大きな競争力になると指摘する。
次世代スマート家電と中国勢の台頭
AI搭載の「スマート家電」が主役のアジア最大級の家電展示会が開催された。

記者がとあるエアコンに「お好み焼きはどうやって作るの?」と問いかけると、「材料は、小麦粉100g、水150ml、卵1個、キャベツ適量…」と作り方を回答してくれる。

展示会には、このようなお好み焼きの作り方を教えてくれるエアコンや、キラキラ光る派手な洗濯機のようなものも展示されている。

20日から23日まで中国・上海で、アジア最大級の家電展示会「AWE2025」が開催されている。

世界中から1000社以上の家電メーカーが参加し、最新技術がお披露目されるこのイベントは、4日間で36万人を超える来場者が見込まれている。

中国の国営メディアによると、中国での2024年の家電の売り上げは、前の年と比べて12.3%増え、過去最高となった。

そんな中国の家電業界の主流は、AI搭載のスマート家電だ。
中でも各社が特に力を入れていたのは、中国の新興企業「ディープシーク」が2025年に発表したAIを搭載した商品だ。

沖本記者:
ディープシークを搭載したこちらのエアコン、実はこんな機能があるんです。(エアコンに話しかける)暑いです。
エアコンの音声:
すでに一番低い温度です。

これは、会話のできるエアコンで、話しかけると温度や湿度を変化させるだけでなく、冒頭で紹介したように、さまざまな会話ができる。

こちらの冷蔵庫は、カメラを搭載した引き出しに食材を入れると、色や光沢から鮮度まで判断し、最適な保存モードを提案してくれるという。

他にも、コミュニケーションの取れるテレビや、服の種類に応じ洗い方を提案する洗濯機など、AI搭載商品がずらりと展示された。AIにより「生活のコンシェルジュ」へと、家電の役割が変化してきているという。

Hisense・葛如洪さん:
ディープシークの登場によって、中国の家電業界の技術進化が加速している。10年以内には、すべての中国家電にディープシークが搭載され、多様なニーズに対応できるよう進化すると考えている。
“家電×AI”連携競争は日本の安全技術に商機
「Live News α」では、デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんに話を聞いた。
海老原優香キャスター:
この展示会、どんなところに注目しましたか。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
「家電×AI」が注目なんですが、さらに進むと家電だけでなく、色々なものがつながるプラットフォームの競争になっていくという事にも、注目する必要があると思うんです。
今回、中国メーカーのディープシークを搭載したものが話題になっていますが、これから家電だけでなく、例えば、電気自動車ともつながってプラットフォームになり、競争になっていくという未来も予想できます。
ただ一方で色んなものがつながると、やはり個人にとっては情報のセキュリティとか、安全性が不安になってくる側面もあると思います。
海老原キャスター:
確かに、安全性については万全の配慮をしてほしいですよね。
デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
実はこの安全性は、逆に日本のメーカーにとってチャンスにもなり得ると思います。元来、日本のメーカーは、製品やブランドの安心・安全が強みなので、これからこういったのが求められる社会分野でプラットフォームを作っていくと、ここが勝ち筋になると思います。
スマート家電の防災・医療と連携を
海老原キャスター:
具体的には、どういうことなんでしょうか。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
例えばAIの家電と空調を掛け合わせて環境に優しい空気を作ったり、電気を自動制御したり、有事の時にもコントロールできるような仕組みにしたり。
さらには住宅だけではなく、電力網とか色んな防犯にも使えるような、災害対応に使えるスマートシティといったニーズがますます広がると思います。
さらに、スマートウォッチから健康データを取って、医療機関や福祉機関と連携すると、広域の中で見守りサービスができるといったニーズが、より深まります。
日本企業の安心・安全といった強みを、社会に必要なプラットフォームとして活かしていくことが競争力にもつながる、このような展開に期待したいと思います。
海老原キャスター:
日本のものづくりの良さを、うまく活かしてほしいですね。
(「Live News α」3月21日放送分より)