大阪の淀川などの河川敷で、約50年前から違法な「ヤミ畑」が問題化している。
野菜や果物を勝手に育て、国の撤去要請に応じない人も多く、いたちごっこが続いている。
京都・木津川では大雨の際に農機具が流出し、被害を及ぼす恐れも指摘されている。

「淀川ゲートウェイ」開通など観光活性化期待も…

16日、大阪の淀川で「淀川ゲートウェイ」が新たに開通した。
京都から大阪湾まで船で移動することが可能になり、万博の会場・夢洲へのクルーズ船の運行など観光の活性化が期待されている。

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大阪府・吉村洋文知事:
水の魅力があるのが、大阪だと思っています。最も重要なキーになるのが、この淀川だと思います。

50年続く淀川の「ヤミ畑」…違法栽培の実態

しかし、その淀川で約50年前から続く問題が、河川敷で不法に野菜などが耕作されるいわゆる「ヤミ畑」だ。

河川敷の利用者は、「野菜とか作られてると思うんですけど、違法ですよね」「何人かいる。出来た作物を顔見知りの人にあげている」と話す。

地域住民などが話したのは、淀川の河川敷にあるという“畑”の存在だ。
男性が教えてくれた場所に向かってみると、見えてきたのは「河川法違反」と書かれた看板。

川のすぐ近くに柵で囲われた場所があり、中を見ると野菜のようなものが栽培されている。

そこで育てられていたのは、大根、白菜、そしてネギのようなものもある。
実はこの河川敷で育てられている野菜はすべて不法耕作、いわゆる「ヤミ畑」だ。

河川敷のある場所は国有地で、無許可で畑を作ったり小屋を建てたりするなどの行為は、河川法違反にあたる。国土交通省によると、この周辺で不法耕作が始まったのは約50年前で、大阪市旭区にある赤川地区の河川敷では、今も約10人が違法に野菜などを作っているという。

「わしら25年このままやで」84歳男性の“ヤミ畑”

一体、どのような人物が野菜を作っているのか。FNNは不法耕作者を直撃取材した。

記者:
あっちの畑見てもいいですか?

不法耕作者:
なんやったら入場料!ははは!

記者:
お父さんの(土地)じゃないでしょ、国のところでしょ。

不法耕作者:
国の土地いうても、わしら25年このままやで。

84歳の男性は、「会社を定年してから河川敷で畑を始めた」と話す。

不法耕作者:
向こうのあれはニンニク、ホウレンソウやエンドウの種。

記者:
種を買ってきて、植えてるんですか?

不法耕作者:
そうそうそう。出来たら持って帰る。

「楽しみでやってんねん」身勝手な言い分

そもそも、違法に耕作している認識はないのか。

不法耕作者:
二十何年もこのままでやってる。今更出ていけ言われても、国交省の土地と分かっててもなぁ…。

記者:
収入がないから、畑をやられているってことですか?

不法耕作者:
そうとは限らんけど。楽しみよ。楽しみでやってんねん。みんな年取ったら何もすることないからな。

男性のなんとも身勝手な言い分だ。

別の不法耕作者:
はいどうぞ、入って。すごいやろ。モモ、ビワ、こっちもモモ、みんな植えてるねん。めちゃくちゃ美味しいんやから。

まだ実はなっていないが、野菜だけでなく果物まで栽培されている。まさにやりたい放題だ。

記者:
なんで、やろうと思ったんですか?

別の不法耕作者:
ワシの連れがやってた。今はもう寝たきりやからな、俺が(代わりに)やってる。

記者:
今すぐはやめない?

別の不法耕作者:
今、元気やからやめられへんやん。土いじってたら、体のためにええからな。

京都・木津川にも“ヤミ畑”が

ヤミ畑は、淀川だけではなく、京都府を流れる木津川にもある。
茶畑など一部は私有地に作られた畑だが、その横には国有地に勝手に作られたヤミ畑があった。

不法耕作地を見てみると農機具が置かれていて、さらに奥には小屋まで作られている。
近くで不法耕作している男女に声を掛けてみた。

記者が「許可を取って耕作しているんですか?」と問うも、無言の男女。

記者:
どうして不法耕作をしているんですか?

不法耕作者:
(理由は)何もないよ。昔から作らしてもらっているから、やっているだけ。

70代の2人は「長年やってきたから今も続けている」という。なぜ続けているのか、改めて話を聞いた。

不法耕作者:
何もせんといたら、1年もしないうちに(荒れて)薮になるやろ。(荒れ地になるよりは)きれいにしておいたら、ええんと違うか?

増水時にリスクも…強制退去は困難か

国土交通省によると、国が管理する一級河川での不法耕作は、2024年3月時点で全国で795件確認されている。なぜヤミ畑は放置されているのか、河川事務所の担当者に聞いた。

国交省 淀川河川事務所・担当者:
河川管理者として、自主撤去を行うように粘り強く指導を続けてきました。ただ指導によって実際に撤去される方もいるが、新たに(不法耕作を)始めてしまう方もいて、いたちごっこが続いている。

記者:
強制退去の手続きは、難しいんでしょうか?

国交省 淀川河川事務所・担当者:
(強制退去は)河川管理上の重大な支障があり、緊急的に是正する必要がある場合に行うものです。個人の財産に対して、本人の意思に反して、行政が勝手に処分してしまうということになるので、そういった行為に対しては、慎重な対応が求められています。

「わしらも年やからなぁ」取締りに聞く耳持たず

河川事務所は、定期的に取締りを行っている。

不法耕作者:
またようけ連れとるなぁ。子分がようけおるなぁ。

国交省の職員:
やめてくれと言いに来てるので、分かってもらわないと。

不法耕作者:
わしらも年やからなぁ。

国交省の職員:
やめてほしいという話をしに来てるので。

不法耕作者:
なんとか考えましょうかね。

国交省の職員:
なんとかじゃなくて真剣に考えて。頼むわ。

ヤミ畑の横行が続くと、どのようなリスクがあるのかだろうか。

摂南大学 都市環境工学科・石田裕子教授:
川は普段は穏やかですが、木津川も淀川も大雨や台風の場合は、増水して普段陸地になっている部分まで水が浸かるわけです。例えばトラクターや農機具なども一緒に流れて、下流で被害を及ぼす可能性があります。

約50年続く不法耕作者とのいたちごっこは、いつまで続くのだろうか。
(「イット!」3月20日放送より)

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