北陸・能登半島から沖縄に移住し、15歳の少女の視点で沖縄の素顔を描く沖縄テレビが製作したドキュメンタリー映画「ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記」が、全国で公開されている。

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監督を務めたのは、沖縄テレビでキャスターを務める平良いずみアナウンサー。

少女の目に映ったリアル沖縄とは…

石川から沖縄にやってきた15歳の少女 交流で気づいたことは

沖縄の言葉・ウチナーグチには、「悲しい」という言葉はないという。
それに近い言葉は、「ちむぐりさ」。
でも、ただ悲しいという意味じゃない。
誰かの心の痛みを、自分の悲しみとして一緒に胸を痛めること。

(映画「ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記」より)

「ちむぐりさ」は、15歳で石川県能登半島から沖縄に渡った、坂本菜の花さんが好きになった沖縄の言葉“ウチナーグチ”。

石川県出身 坂本菜の花さん:
ちむぐりさってどういう意味でしたっけ。肝が苦しいってどういうことだろうって。内地(県外)にはない感じでした。胸が痛むとはちょっと違うなって感じがあって

菜の花さんは、沖縄県にあるフリースクール「珊瑚舎スコーレ」に通うため、単身で沖縄へやって来た。スクールには夜間中学も併設され、戦争で学校に行けなかったお年寄りたちも通ってる。

石川県出身 坂本菜の花さん:
沖縄では、みんなの目がキラキラとして元気に見えた

沖縄の人々との交流を通して、彼女が気づいたこと。それは…

石川県出身 坂本菜の花さん:
わたしは(沖縄の人の)明るい面しか知らなかったことに気が付きました。なぜ明るいか、それは明るくないとやっていけないくらい暗いものを知っているからだと思います

15歳の少女が見た“リアルな沖縄”

15歳の少女が見たのは、米軍基地から派生する事件や事故に晒される沖縄の姿だった。基地あるが故に人々の暮らしが脅かされる現実に胸を痛めた菜の花さんは、この現状を自分のこととして考えてもらいたいと、故郷の新聞にコラム「菜の花の沖縄日記」を書き続けた。

2016年4月28日に起きた「米軍属 女性暴行殺害事件」。うるま市に住む20歳の女性が行方不明になって3週間、警察は、女性遺体を遺棄した疑いで米軍属の男を逮捕した。

石川県出身 坂本菜の花さん:
20歳の女性が暴行され、殺された。わたしとは4つしか違わない、かわいらしい女性が…。どうしてこのようなことができたのか。わたしには考えられません

事件を受けて開かれた大規模抗議集会には、約6万5,000人が参加。そこには、「同じ世代の女性の命が奪われる。もしかしたらわたしだったかもしれない、わたしの友人だったかもしれない」と訴える女性の姿が。

石川県出身 坂本菜の花さん:
本土では、今回起こった事件がどう受け止められているのでしょうか。報道されるのは、抗議活動が大きくなるおそれとか、最悪なタイミングとか。使われる言葉1つ1つが、わたしの喉に刺さって抜けません

2017年12月7日に、宜野湾市の保育園で、アメリカ軍ヘリの部品とみられるものが見つかった。

石川県出身 坂本菜の花さん:
わずか50cm。50メートルじゃなくて、50cm。人と落下物の距離。人というのは、幼い園児

緑ヶ丘保育園 父母会 知念有希子さん(2017年12月):
12月7日に、今ブルーシートなんですけど、この部分に(米軍ヘリの部品が)落ちてしまって。落ちてバウンドして転がって、この辺で止まったんですけど、その時園庭には子どもたちもいたのでギリギリ。もしかしたら、ちょっとでもズレてたらケガしていたかもしれない

その6日後の2017年12月13日、普天間基地に隣接する普天間第二小学校で、またしても米軍機からの落下物事故が発生した。金属製の外枠とあわせた重さは7.7kgにのぼる。
2年生と4年生の児童、約50人が体育の授業を受けていた。

米軍機からまた落下物。母親たちは子どもの命を守るため、立ち上った。
2カ月余りで集まった署名は、実に12万人分。しかし、政府は何もしない、何も変わらない。“わじわじー”するくらい何も変わらない。

童んちゃー、ごめんね(こどもたちよ、ごめんね)。

(映画「ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記」より)

主人公と監督の共通する思いとは

2020年2月に、沖縄で先行上映され、公開初日に劇場前には長蛇の列ができるなど話題となり、県内で共感の輪が広がった。

観客:
もう涙がいっぱい出て、やっぱりこういうことは、もう本土の人にも伝えてほしい

観客:
自分に反省を求められるし、勇気づけられる映画だったので、傑作だと思いますね

“映画を通して、沖縄の現状に目を向けてほしい”。
主人公の菜の花さん、そして、今回メガホンをとった沖縄テレビでキャスターを務める平良いずみ監督の共通する思い。

石川県出身 坂本菜の花さん:
(県外の人間にとっても)対岸の火事じゃないっていう。これは同じ日本で起こっていることで、もし何かあったときに置かれる状況は、沖縄もわたしが住んでいる石川も、全部一緒なんだよって

監督・平良いずみアナウンサー:
沖縄の基地問題って、わたしたちにとって暮らしの問題であり、命の問題なんですよね。それをどうにか人の心に届けたい

映画「ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記」は、10月には東京、神奈川、長野、兵庫、福岡、熊本で順次公開される。

【取材後期】
2017年、沖縄・普天間基地周辺では米軍機からの落下物で子どもの命が危険に晒されることが2度も起きました。事故直後、取材に向かった先で出会ったお母さんにマイクを向けたものの、怒りと悲しみと不安と様々な思いが押し寄せてきて言葉が出ませんでした。しばらくしてお母さんが「普天間基地は無くなってほしい。でもそれが辺野古に移設されてほしいとは願わない。だって、辺野古の人が同じ思いをするんでしょ、それはちむぐりささぁ」と絞り出すように仰いました。
どうすればこの沖縄の声を伝えることができるのか、考えあぐねていた時に、映画の主人公・坂本菜の花さんの言葉に出会いました。彼女は、「もし、自分の子どもや孫が通う学校や保育園で起きたら…」、想像してほしいと懸命に言葉を紡ぎ続けていました。菜の花さんの澄み切った姿と言葉は分断が進む時代にあって、“希望”そのもの。そう感じた私は取材を申し込み、彼女との共同作業が始まりました。
映画で描いているのは、菜の花さんというひとりの少女の小さな小さな声―。でも、その声が、県境を、国境を越えて、きっと誰かの心に届く。そう信じて、映画を世に送り出しています。

沖縄テレビ・アナウンサー 平良いずみ

(平良いずみ 沖縄テレビ・アナウンサー)