台湾からの輸入が去年解禁されたばかりの高級魚「龍虎ハタ」が、福岡で今、注目されている。いったいなぜなのか、高級魚の正体とそのワケに迫る。

輸入解禁されたばかりの高級魚
取材班が13日に訪れたのは、福岡市南区のレガネット南長住店。店にはこの日も献立に頭を悩ませる多くの客が訪れていた。

鮮魚コーナーには高級魚のキンメダイや親しみのあるアジ、ほかにも切り身類が並ぶ。そこで異彩を放つのが「龍虎ハタ」という見慣れない名前の魚。なんだか強そうな漢字が並ぶ名前に買い物客は「見たことないですね」とやや困惑気味だ。

その魚の正体は台湾から輸入された「龍虎(りゅうこ)ハタ」。龍や虎を彷彿とさせるうろこの模様から名付けられ、台湾では繁栄を象徴する高級食材として知られているが、日本への輸入は毒性の懸念から禁止されていた。

マイナス25℃の冷凍コンテナで輸入
去年10月、日本の厚生労働省が安全性を認めたことで輸入が解禁され、福岡の西鉄グループは独自のネットワークを活用し、安全な状態でマイナス25℃のコンテナを使って輸入を始めた。西鉄が運営する県内28のスーパーで切り身や弁当が販売されるほか、ホテルでは丁寧に火入れした「ソテー」やお出しでさっぱり仕上げた「揚げ出し」、それに「スープ仕立て」から中華の王道「あんかけ」まで和洋中さまざまな料理で提供されている。

ホテルの料理長も「淡泊でシンプル・イズ・ベスト。うまみのある料理に仕上げた」と胸を張る。

記者がさっそく「揚げ出し」を試食すると、淡泊なハタにしっかりとしたおだしの味が絡んで上品な味わいで、「台湾の高級魚」というのもうなずける。

しかし、なぜ福岡を地盤とする西鉄グループが輸入に乗り出したのか。そこに関わるのが台湾の半導体製造大手TSMCが熊本県に作った工場だ。熊本は福岡の隣。そこで台湾の「故郷の味」として売り出すことにしたのだ。西鉄の林田浩一社長は「安全、おいしい、そして郷土を感じられる。そうしたものが食材としてあるということをビジネスチャンスとしてとらえ拡大していく」と説明する。

「初めてやけん食べてみようと思って」
再び、スーパーの鮮魚コーナー。果たして台湾の高級魚は消費者に受け入れられるのか。切り身の価格は100グラムあたり430円(税込み)。物珍しさに立ち止まる客はいるものの、龍虎ハタに手を伸ばす人はなかなか現れない。
しばらく見ていると、迷いに迷ったあげく男性客が購入を決めた。「初めてやけん食べてみようと思って」。

スーパーの担当者は「まだまだなじみがないので手に取っていただきにくい方もいると思うが、台湾では高級魚として人気なのでこの機会に一度食べていただきたい」と話す。
台湾からやってきた高級魚「龍虎ハタ」の切り身や弁当は福岡県内の西鉄ストアなどで3月23日まで販売される予定だ。
