引退した競走馬には厳しい現実が待っている。寿命を全うするのは1%と言われ、次のステージがあるのは一握り。しかし馬にとってレースだけが全てではない。人と触れ合い生きていくセカンドキャリアもあるのだ。

引退競走馬が流鏑馬の晴れ舞台に

引退した競走馬を支援するイベント「UMA CONNECTION」。2025年3月に佐賀・江北町で開かれたこの催しには多くの人が訪れ、馬と触れ合う楽しい一日を過ごした。

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この日のメインイベントは、走る馬の上から矢を放ち的に当てる「流鏑馬」。

走る馬の上から矢を放ち的に当てる「流鏑馬」
走る馬の上から矢を放ち的に当てる「流鏑馬」

江北町では、江戸時代に200年近く継承されてきた流鏑馬は途絶えたものの、2014年に馬を止めた形で復活した。

そしてこの日、155年ぶりに走る馬から矢を放つ本格的な流鏑馬が披露された。

「厩務員として競走馬を支えてきた」

流鏑馬の復活で見事な健脚を見せたこの馬は“元競走馬”だ。

そして馬に乗り矢を放ったのは、引退した競走馬を地元の江北町で支援している「CLUB  RIO」の代表理事、永松良太さん。
永松さんは、かつて騎手を目指していたが、背が高く身長の基準を満たせず断念。厩務員として競走馬を支えてきた。

自分が担当する馬がレースでけがをして復活できないこともあったという。そうした中で永松さんは競走馬が置かれている厳しい現実を知ることになる。

活躍の場がない…引退後の競走馬

JRAなどによると、2024年は7900頭あまりのサラブレッドが生まれた。一方、引退や地方競馬への移籍などで、JRA所属の競走馬のうち約5500頭が登録を抹消されている。

繁殖馬、乗馬、ホースセラピーなど、次のステージが用意されているのは引退した競走馬のうち一握りだという。

永松さんによると、ほとんどの馬は最終的に食肉処分されるか所在不明となり、20~30年の寿命を全うするのはわずか1%と言われている。

「引退競走馬に次のステージを」

永松さんは、引退した競走馬のセカンドキャリアの道が狭いことに問題意識を持ち、地元の江北町で「CLUB RIO」を立ち上げた。

CLUB RIOには現在、競走馬を引退した2頭とポニー1頭の計3頭がいる。競走馬を一時的に預かり、心身ともリフレッシュさせる事業にも取り組んでいて、現在厩舎では5頭が静養している。

流鏑馬で活躍 30年の寿命を全う

CLUB RIOに最初にやってきたのは、競走馬を引退し、佐賀県内の牧場で流鏑馬の馬として永松さんとともに活動していた馬だった。その名は「マックス」。

永松さんとマックス(画像提供:永松さん)
永松さんとマックス(画像提供:永松さん)

マックスはCLUB RIOで16年間過ごし、去年(2024年)3月、馬としては高齢の30年の寿命を全うした。

競走馬引退後も活躍できる舞台を

永松さんは、人と馬がともに生きる未来、引退した競争馬が活躍できる場所や役割をつくることで「馬への恩返しをしたい」と語る。

永松良太さん:
人生の喜怒哀楽は自分の場合は馬を通じて教えていただいたところもある。馬たちに自分が、何ができるかなというところで恩返しが少しでも(できれば)。まだ叶っていないですけれどね。叶えばいいなと思っている

競走馬を引退して年を重ねても馬が活躍できる舞台を広げていきたい…。永松さんは日々、馬のセカンドステージづくりに情熱を注ぎ続けている。

(サガテレビ)

サガテレビ
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