みずほ銀行は13日、ライフプラン相談などに特化した新店舗「みずほのアトリエ」を横浜市都筑区に開店した。ATMを置かない店舗にライフプランアドバイザーを配置し、場所も商業施設内にするなどして来店ハードルを下げ、顧客との新たな接点を創出していく狙いだ。専門家は「長期的な関係性が銀行の資産になる」と、顧客生涯価値の重要性を指摘する。

“ATMなし”新店舗は気軽に相談できる場所

みずほ銀行が、顧客との新たな接点を求めて、横浜市都筑区に新型店舗をオープンさせた。

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「それでは、これより開店します。いらっしゃいませ」

13日に開業を迎えた、白を基調とするオープンな空間。その名も「みずほのアトリエ」。みずほ銀行が運営する新店舗だ。

明るく開放的な店舗にATMが見当たらない
明るく開放的な店舗にATMが見当たらない

福井慶仁記者:
こちら、今日オープンしたみずほ銀行の新しいタイプの店舗です。入った瞬間、開放的な作りになっています。そして、ATMが見当たりません。

こちらの店舗では、現金を取り扱うサービスではなく、これまでに関わることのなかった“顧客との新たな出会いの創出”に注力している。

店舗には、ライフプランアドバイザーによる相談対応のほか、将来設計に掛かる金額を“見える化”するツールを設置し、銀行窓口に行くハードルを下げる。

さらに、商業施設内に店舗を開業し、土日や平日夕方にも営業することで、買い物帰りなどに、気軽に立ち寄れる空間作りを目指している。

来店客:
普通の銀行だと何となく相談しづらいけど、ここならすっと相談ができる。もう年で、資産運用をやらないといけないので、相談できればありがたい。

来店客:
銀行っぽくなくて、開放的で明るくて、しかもショッピング施設の中に、こんな広い店舗があり、来たくなってしまう。(Q.銀行の店舗は行く?)自分の持っているのが、オンラインの銀行ばかりなので久しぶりです。

デジタル化などの普及により、2001年に1万5000以上あった銀行の店舗は、2024年には約1万3500と、20年ほどで大幅に数を減らした。(全国銀行協会調べ)

メガバンクでは、顧客との出会いの機会を逃さないよう、店舗戦略を見直す動きが相次いでいる。

三井住友銀行は2024年、カフェやコワーキングスペースを併設した店舗を開業した。

口座開設に特化した店舗
口座開設に特化した店舗

みずほ銀行でも、今回のアトリエの他に、東京・豊島区に口座開設に特化した店舗を設置するなど、ネット銀行とは一線を画したリアルでの進化にも、積極的に取り組んでいくという。

みずほ銀行・加藤勝彦 頭取:
デジタルが、利便性が高く身近になるのが前提ですが、(今後の店舗は)より身近・相談型になっていくと個人的には思っている。「みずほのアトリエ」は、まさにリアルな中のひとつの戦略で、これまでの店舗戦略・店舗のイメージを一新する。

顧客争奪戦で模索されるメガバンクの“店舗改革”。みずほ銀行は、今後、全国にある個人専用店のうち、半数にあたる約70店舗を、「みずほのアトリエ」に転換させるとしている。

銀行の対面サービス「信頼と安心」が鍵に

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
新しい銀行の店舗、どうご覧になりますか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
この20年余りで、銀行の店舗数は、全国で1割以上減りました。口座の開設、お金の出し入れ、送金といった機能が今では、スマートフォンなどで完結するようになり、顧客と銀行との接点は、デジタル起点へシフトしています。

この対極にあるのが、今回の店舗で、銀行員というお金のスペシャリストを起点としたサービスの強化であり、対面の強みを活かした新しい顧客接点のように思います。

堤キャスター:
対面の強みとは、どういうことでしょうか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
大切な金融資産を守り、大きく育てたいけど、難しいことは、よく分からないという方は多いはずです。これを気軽に相談できる安心感は、銀行にとって、とても重要です。

安心や信頼は、銀行のイメージそのものであり、今回の店舗はみずほ銀行と、一生付き合おうという気持ちを顧客に持ってもらうことを狙っているように思います。

顧客の生涯価値を重視する新たな戦略

堤キャスター:
銀行の顧客との向き合い方が、変わってきているようですね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
近年、短期的な売上よりも、LTV(顧客生涯価値)の重要性が指摘されています。これは企業が顧客の人生に、長く寄り添うことで生まれる総合的な価値を指します。

例えば、銀行でいうならば、顧客の社会人デビューや、結婚出産、さらに、マイホームの取得や親からの相続など、人生のライフステージの変化には、当然お金が関わってきます。ここで資産の形成や運用について、銀行が相談に乗ってくれるわけです。

堤キャスター:
顧客との関係を強めるための鍵というのは、何でしょうか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
何より、緩く、長く、顧客との関係性を継続することがポイントになります。通常の銀行の店舗よりも、気軽に訪れることができるのは大切です。

大手金融機関がこれまで培ってきた強みをどうシフトして、お客様との関係性を今後築いていくのか、その進化が楽しみです。

堤キャスター:
人生100年と言われていますが、暮らしを支える資産を守ることは大切です。気軽に誰かに相談できたり、任せて安心できたりすることは、重要であるように思います。
(「Live News α」3月13日放送分より)