東京新宿区のJR高田馬場駅近くで起きた女性刺殺事件。その後の調べで、殺人未遂の現行犯で逮捕された高野健一容疑者(42)が、被害女性に「200万円以上貸していた」とした上で、「金を返さないのに配信をしていてやるせなくなった。2023年ごろから会えなくなった」と供述していることが新たに分かった。警視庁は、こうした供述の裏付け捜査を進めている。
「『助けてーぎゃー』という声」被害女性には数カ所もの傷
事件は11日午前10時前、東京新宿区のJR高田馬場駅から南に300mほど離れた路上で起きた。被害に遭ったのは佐藤愛里さん(22)で、当時、現場付近で動画のライブ配信をしていた。

現場に落ちていたのは、佐藤さんが使っていたとみられるスマートフォン用の自撮り棒。佐藤さんは徒歩で現場に差し掛かったところで、刃渡り13cmほどあるサバイバルナイフを持った高野容疑者に襲われたとみられる。
現場に居合わせた人は、「すごい叫び声で『助けてーぎゃー』という声が聞こえたんです」「女の人が『助けて助けて』って言いながらバタバタして暴れてて。しばらくしたら何も言わなくなって…」と話す。

搬送先の病院で死亡した佐藤さん。身体には、上半身を中心に数カ所もの傷が残されていたことが分かった。
「200万円以上貸したが返してもらえない」
高野容疑者の供述によると、20歳ほどの年の差がある佐藤さんを知ったきっかけは、4年ほど前に佐藤さんの配信動画を見たことだった。その翌年には、佐藤さんが当時勤務していた飲食店に高野容疑者が客として訪れたという。その後、佐藤さんから「携帯料金や当面の生活費がない」などと相談され、お金を貸したとしている。

高野容疑者は、「200万円を超える金額を貸しているが返してもらえない状態が続いた。お金は消費者金融で借りた」と供述しているという。
実際、高野容疑者は2024年1月に自宅がある栃木県で警察に「お金を貸したけど返してくれない」などと相談していたことがわかっている。

そして、犯行に及んだ経緯については、「佐藤さんが山手線を一周するという配信動画の予告を見たので、事件当日の朝、上京した。配信動画で場所の当たりをつけて被害者を探した」と説明しているという。
逮捕直後の調べに、殺意を否認していた高野容疑者。逮捕された際には、凶器とみられるサバイバルナイフとは別のサバイバルナイフをリュックサックに入れていた。この2本のサバイバルナイフをどう入手したかについて、高野容疑者は「サバイバルナイフを2、3カ月前に通信販売で購入した」と供述しているという。警視庁は、サバイバルナイフを入手した目的など事件の詳しいいきさつを調べている。
犯行時の様子もライブ配信されたか
小雨が降る事件現場には、12日、事件を知った人からの花束や飲み物などが手向けられていた。静かに手を合わせる人の姿も多く目についた。

「受け止めたくない。この思いを。とにかく居ても立ってもいられなくて、手を合わせたいと思って今飛んできた」「お願いします。天国に連れて行ってください。犯人が捕まりました。よかったです」。10日午後に規制が解かれた現場。駆けつけた人が口にしたのは、悲痛な言葉の数々だった。

死亡した佐藤愛里さんが襲われた直後のものとみられるライブ配信動画には、「おい!何やってんだよ!」と、現場近くにいた人が高野健一容疑者に対し叫んでいるように聞こえる。

他にも、「紺色のパーカー」「意識はあるの?」「いや、ないんじゃないですかね」などと、緊迫した現場の状況がうかがえるやりとりも記録されていた。
10日、山手線を徒歩で一周するテーマでライブ配信していたとみられる佐藤さん。現場付近を歩きながらライブ配信をしていたため、高野容疑者に襲われる様子や、犯行後の高野容疑者の顔も流れていたとみられる。

調べに対し、高野容疑者は「佐藤さんに200万円以上を貸していた」とした上で、「金を返さないのに配信をしていて、やるせなくなった。2023年ごろから会えなくなった」とも供述していることが新たに分かった。警視庁は、こうした供述の裏付け捜査を進めている。
(「イット!」3月12日放送より)