11日、東京・新宿区の路上で動画を配信していたとみられる20代の女性が刺され、死亡した。
現場にいた40代の男が殺人未遂の現行犯で逮捕されたが、調べに対し「女性とトラブルがあった。殺そうとは思っていませんでした」と供述しているという。

一方、専門家は「今回の犯行は殺意が明確である」と指摘するが、一体どういうことなのか。

“動画配信中”に何度も刺され…20代女性死亡

11日午前、東京・高田馬場で、動画を配信していたとみられる20代の女性が突然、男に刺される事件が起きた。

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現場は、高田馬場駅から300メートルほど離れた路地。
周りは住宅街に囲まれていて、鑑識が作業をする路上には血痕が残されていた。

事件は、11日午前10時前「人が刺されている」と通報が入った。警察官が駆け付け、現場にいた40代の男を殺人未遂の現行犯で逮捕した。

警視庁は、逮捕した40代の男について、精神的なトラブルを抱えている可能性があるとして、氏名を明らかにしていない。

犯行を目撃した人は、“男が女性を何度も突き刺していた”と話します。

事件を目撃した人:
ナイフでドンドンやっていた。びっくりした。

女性は、刃渡り約13cmのサバイバルナイフで刺されたとみられ、男は、この他にももう1本サバイバルナイフをリュックサックの中に所持していた。

女性は、頭や首などを複数回刺されていて、心肺停止の状態で病院に搬送されたが、午前11時過ぎに死亡が確認された。

現場では女性の悲鳴が10秒ほど響いていたと話す人が。

女性の悲鳴を聞いた人:
すごい叫び声。「助けて、ぎゃー」という声が聞こえた。切羽詰まっているというか、ものすごい叫び声だなと思って。10秒くらい聞こえていた気がする。

犯行後もその場に居続ける男の不可解な行動

男は、犯行後も現場を離れることなくその場に、居続けたという。

容疑者と会話した人:
すごく血を流している方がいて、その横に立っている人がいて「警察に連絡してくれましたか」って犯人に言ってしまった。携帯を持って、けがをした人の顔を写真撮ってた。なんか気持ち悪いなと思ったんですけど。

通報から7分後に男は逮捕され、その際の様子について、現場にいた人は「ずっと女の人の横に立ってて、警察が来たときに『犯人は?』となって、『僕です』と言って、そのまま手錠かけられて。おとなしく。ずっと落ち着いていました」と話す。

午後1時半、規制線が解除されると献花に訪れる人の姿があった。

献花に訪れた人は「どうかご無事で天国に行けますように。お願いします、天国へ連れていってください。犯人が捕まりました。よかったです」と話す。

血痕が残された事件現場の真ん中には花束が置かれていた。

手を合わせにきた人:
受け止めたくない、この思いを。ただもう事実だということで、居ても立ってもいられなくて、手だけ合わせたいと思ってとんできた。

40代の男の犯行直後の行動が目撃されていた。

現場を目撃したタクシー運転手:
お客さんを降ろして進んでいったら、外国人の男女が走ってこっちに向かってきてた。何かあったのかなと思いながら進行してたら、倒れている女性を無言でスマホで撮影しながら、蹴っ飛ばしていた。3、4回。異常は異常ですよ。

男は、なぜ女性を狙ったのか。逮捕された男は、調べに対し「女性とトラブルがあった。殺そうとは思っていませんでした」と話しているという。

実際に2人に面識があったかどうかは不明で、警視庁は殺人容疑に切り替えて動機などを調べる方針だ。

“投げ銭”がトラブルの原因の可能性も

今回起きた事件について、元埼玉県警捜査一課の佐々木成三さんに詳しく話を聞いていく。

――被害女性は動画配信中だったという話があるが、この犯行から何が見えてくるのか?
元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:

今回の犯行は殺意が明確であり、明確な殺意を持っている者が、被害者の場所についてリアルタイムの配信を見て確認を取ったということ。これはかなり危険な配信だったと感じています。居場所が分かる、リアルにどこを歩いているのか分かるということですね。

――男は女性とトラブルがあったという趣旨の話をしているが、動画配信が事件に関係しているとしたら、どんなことが考えられるのか。
元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:

これはまだ明らかになっていないことがあるんですが、もしこの容疑者が動画配信の視聴者であるということであれば、今、配信者を応援する気持ちで“投げ銭”という、お金を渡す、お金を投げ銭するシステムがあるんですね。過去、こういった動画配信者のトラブルの中で、こういった投げ銭を行うことで配信者側と視聴者側のミスコミュニケーションが起きて、それがトラブルになる可能性が十分あるなと。過去の事件からもあるので、これは後の捜査で明らかになると思います。

青井実キャスター:
お金の受け取り手と、出し手の関係になってしまうということですね。

元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:
そうですね。ある意味、投げ銭を重ねることで、いろんな視聴者側が多くを求めてしまい、配信者側はそれの期待に応えることができないと、そういった形でトラブルになるということは過去にもありましたね。

男は刃渡り13cmのサバイバルナイフで女性の頭、首、胸などを刺して死亡させているわけだが、一方で「殺そうとは思っていませんでした」と殺意を否認している。

――この供述をどう見る?
元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:
この供述には多く矛盾があると思います。実際、刃渡り13cmという殺傷能力の高いナイフを2本、所持していたということと、刺してる部位ですね。顔や首や胸、複数箇所を刺しているわけですから、これは、現場の状況からしても殺意が明確であるということは立証できると思います。それにおいては、容疑者の供述との矛盾が多くあるということです。

SPキャスター・山口真由氏:
ファンとの距離感とか、位置情報を発信するリスクというのは指摘されてきましたけど、もしそういうリスクが顕在化したのならば、そういうのは自己責任で身を守るしかないのか、その身を守るシステムを提供できるのか、議論すべき時期なのではないかという気がします。

青井実キャスター:
女性が動画配信をしていた前提になるわけですが、良くない視聴者をブロックすることもできると思うんですけれども、その辺りはどうでしょうか。

元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:
もし、これがお金の中で投げ銭という関係性がある場合は、やはりお金をくれると、ブロックをするとお金をもらえないという関係性があってブロックできなかったというのも考えられます。ただ、こういったトラブルがあった場合は、配信者側から明確な意思でお金を受け取らないという、こういった流れを作ることも必要なんじゃないかなというふうには感じていますね。

――犯行の動機、2人の面識については捜査中だが、今後どのように捜査していくのか。
元埼玉県警捜査一課・佐々木成三さん:

犯罪行為の立証においては、現行犯逮捕されていますので問題なくできると思いますが、やはり動機ですね。あとは容疑者と被害者の関係性。動機につながるような金銭トラブルといったものがあったのか否か、こういったことは捜査で明らかにしなければいけないと思います。
(「イット!」3月11日放送より)

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