人材不足が深刻化するなか、新たな人材確保の戦略として、60歳の定年を過ぎた社員への処遇を見直し“シニア厚遇”に取り組む企業が増えている。

あいおいニッセイ同和損保では、「手あげ転勤制度」という独自の転勤制度を4年前から導入。
60歳以上は転居転勤の対象ではないものの、この制度では社員が希望し会社側が認めた場合、原則1年間(※更新制)転居転勤を可能とし、社宅の貸与や、処遇の上乗せを行う。
「生き生き」と!定年を気にせずに働けるのが魅力
手あげ転勤制度を利用するシニア社員の千葉晃久さん(61)は、取材に訪れた私たちをさわやかな笑顔で出迎えてくれた。
「生き生き」として「エネルギッシュ」な立ち振る舞いに、出会った瞬間から圧倒された。

千葉さんは、家族が暮らす京都府を離れ、長野県で単身赴任を続け2024年に定年を迎えたが、引き続き長野県で働き続ける決心をした。
「会社に残り、自分の経験やスキルを後輩に伝えたいと考えていたところ、制度の趣旨が自身の思いと一致し、迷わず手を挙げた」と、制度を利用した時を振り返る。
「現役時代と同じではないが、それなりの対価が得られるため、定年を意識せずに働けるのが魅力」と、この制度の利点についても語った。
「生成AI」も率先して学び、会社に貢献
この日、千葉さんは、生成AIで作成したイラスト入りの資料を披露。

「私の仕事そのものが課題をいち早く察知し自分が勉強したうえで、みんなに伝えること。それで組織力が強くなると思うので、自分が率先して伝えていくことが役割。」と話した。
定年を過ぎても働く理由は「楽しいから」
千葉さんは、定年を過ぎても働く理由を「娘が大学1年生なので、これから大学生活に必要なお金も必要になるし、お金を持っているパパはモテるらしいので、モテるパパを目指して、やっぱりずっと働き続けていきたい」と語った。

一方で、「半歩先のことをやろうとしているから、働くことは全く苦じゃない。次のことを考えるのが楽しい。お金は必要だけど、お金のためだけに働いているわけじゃない。そういう働き方も許してくれるこの会社もそういう意味では好き」と笑顔を見せた。
後輩への尊敬の念を忘れない
また、千葉さんは、シニアとして後輩職員へ接する際に、「尊敬の念を持って接すること。みんなそれぞれ頑張っているので、それを受け止めて、その人の良さを引き出せるようなアドバイスができたらいいなといつも思っている」と話し、“指導でなくアドバイスや情報共有”を心がけるという。

シニアだからこそ、日常の気配りや声がけが、社内に明るい雰囲気を生み出すのだろう。

同僚からも「大きな仕事だけでなく、若手の成長も見守られていて、役職が変わっても非常にずっとみんなが頼りにしている。信頼できる方だ」や「この先のキャリアを考えたときに千葉さんのように頑張っている方がいると目標になる」といった声が聞かれた。
頑張り過ぎないことも大切
シニアらしい言葉の“重み”と周囲からの“憧れ”を感じさせる千葉さんだが、一方で、「頑張り過ぎないこと」も大切だという。

千葉晃久さん:
私も仕事を頑張りすぎて倒れそうになったことが何回かある。結局、体を壊しちゃうと良い仕事ができなくなっていく。仕事を受けすぎると仕事のクオリティーが下がってしまう。
キャパを超えた仕事をして体調を崩すと、結果的には組織からもいらない人間になったりもする。
だから頑張りすぎや、やりすぎは推奨しない。自分のペースを守りながらやっていくことが結果的には一番いい。
【取材・執筆=フジテレビ経済部 栁原 弥玖】