3月3日に政府広報のホームページで公開された、薬の乱用を啓発する30秒の動画が物議を醸している。
オーバードーズ「OD」、相談「SD」と略し物議
薬の瓶を持ち物憂げな表情を浮かべた羊が登場し、社会問題化している薬の乱用「オーバードーズ問題」を啓発する厚生労働省の広告動画だ。

ところが、オーバードーズを「OD」、相談を「SD」と略したキャッチコピーなどが物議を醸していた。
街で話を聞くと、「ツイッター(X)とかで話題になっていて」、「ODとSDをかけて簡単に済ませるじゃないけど、羊が相談しようとか言っても、は?って」、「ちょうどここに来る時、電車で見てて、動画で気づけるかと言われると正直なんとも言えない」などの声が聞かれた。

自民党の大空幸星衆院議員もこの動画について、自身のXに「酷すぎる」と投稿するなど問題視していた。
「突き放された感じがする」の意見も
取材班が話を聞いたのは、実際にオーバードーズの経験があるという女性。
OD経験者の女性(20代)は「私ODで救急搬送されたことがある。(Q. なぜODする?)けさ、やっちゃって。寝ちゃうときもあれば、すごくハイテンションというか、無敵?無敵になれる感じ」と話す。

この女性に啓発動画を見てもらい感想を聞くと、「後先のことを考えられない人が、ああいうのを見ても意味ないと思う。だって相談するより、今薬を飲んで楽になった方がいいやと思っちゃう。相談役って突き放された感じがする。上から目線で見られてるってなるから。友達に話そうっていう、(相談相手は)友達でも何でもいいってところを表現しないと」と話した。
「柔らかく伝えたい意図あった」
この動画の制作意図について、厚労省の担当者は「市販薬の乱用をする若者が増えていて、防止する目的で政府広報を行った。羊自体に意味を持たせているのではなく、若者にも『ダメ絶対』と圧迫するのではなく、柔らかく伝えたい意図があった」としている。

市販薬の乱用やオーバードーズは避けなければいけない問題だが、広報の狙いと世間の反応とのずれはなぜ生じるのか、桜美林大学・西山守准教授は「非常に多くの人にメッセージを伝えたいということで面白い表現を作っていく。多くの人に伝わったら、伝われば伝わるほど一定数の人が不快に思う人たちがいる」と指摘している。
(「イット!」3月10日放送より)