「会いたい。だってまだ9歳やもん」。2024年7月、高知市で起きた水泳授業中の死亡事故から約8ヶ月。当時の教育長ら7人が書類送検されたことを受け、亡くなった男児の両親が胸の内を明かした。

水深の深いプールで9歳の命が奪われる 高知市教育長ら7人を書類送検

2024年7月、高知市・長浜小学校4年の松本凰汰さん(当時9歳)が水泳の授業中に死亡する事故が発生した。事故当日、長浜小学校のプールはろ過装置の故障により使用できず、より水深の深い南海中学校のプールで授業が行われていた。

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この事故を受けて高知県警は捜査を進め、2025年2月26日、当時の高知市教育長や校長、教師など計7人を業務上過失致死の疑いで高知地検に書類送検した。

「返事はもらえんけど話しかけるわね、毎日」

書類送検から翌日の2月27日、凰汰さんの両親は報道陣の取材に応じた。父親は現在の生活について、「この子がおらんなったのが一番の大きな変化。この生活に違和感しかない」と語った。そして、「返事はもらえんけど話しかけるわね、毎日」と、息子を失った悲しみを抱えながらも日々を過ごす様子を明かした。

父親はさらに、「毎日毎日帰ってきてほしいしか思わない。会いたい。だってまだ9歳やもん」と、幼くして命を落とした息子への思いを語った。「あの子もいっぱいしたいこともあったろうし、けど俺もあの子といっぱいしたいことがあった。いろんなところ連れてって、いろんな景色見せたり、いろんなことをして遊んだりしたかった」と、叶わなくなった未来への後悔と悲しみを吐露した。

事故後も学校から行事の連絡が…「耐えれんかった」

両親は、事故後の学校の対応にも強い不満を示した。父親は「あの後の学校からの対応もひどいものがあった」と語り、学校側が自ら謝罪に来なかったことを批判した。「基本的に謝罪に来ないっていうのは違うと思う。自らの意思で来るのと、人から言われた後で来るのとは値打ちが違う」と、学校側の姿勢に疑問を呈した。

さらに、学校の連絡網システム「スグール」を通じて、凰汰さんが亡くなった後も4年生の行事の案内が届いていたことに両親は強い憤りを感じていた。母親は「12月ごろまで届いていたが、もう耐えれんかった」と、その心情を吐露した。

父親も「体裁の問題じゃない、道義的なことや人間として」と、学校側の対応を厳しく批判した。

「結局犠牲になるのは力のない者」遺族の無力感と願い

書類送検された人々について、父親は「起訴されるなり、何かしらきちんと責任を取ってほしいと思う」と述べた。事故の背景について、「何の協議せずに了承したとか、そういうことを僕らも見た。命を軽んじちゅうというか」と、学校や教育行政の対応を問題視した。

今後の捜査や検証委員会の動向について、父親は「見守るもなにも僕らは基本的に手が出せない」と、無力感を隠さなかった。「うちができることといえば、いずれ起こるであろう裁判に備えて、例えば弁護士に相談してとかね。もう待つしかない」と、今後の展開を静かに見守る姿勢を示した。

自宅の祭壇には、凰汰さんが好きだったお菓子や食べ物、キャラクターのフィギュア、お気に入りのリュックやランドセル、サッカーシューズなどが供えられている。

父親は最後に、「教育委員会などは去年から『来年度の授業に向けて』っていうけど、今回の話もまだ終わっていないのに、来年度の話も何もない。急いでもいいことはない。ゆっくりじっくりちゃんと考えて、みんなが納得できる答えを出さないといけない」と、慎重な対応を求めた。そして、「結局犠牲になるのは力のない者やきね」と、この悲劇が二度と繰り返されないことへの願いを込めて語った。

事故の検証委員会は2024年度中に報告書を公表する予定だ。

(高知さんさんテレビ)

高知さんさんテレビ
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