岩手・大船渡市の山火事では発生10日目を迎えた7日、初めて一部地域で避難指示が解除された。その一方で、今回もたらされた甚大な被害の全容はまだ明らかになっていない。7日、同居する90歳の父を今回の山火事で亡くした男性が、悲痛な思いを語った。
父を亡くした柴田さん「悔やんでも悔やみきれない」
7日、FNNの取材に悲痛な胸の内を明かしたのは、同居する90歳の父・吉郎さんを今回の山火事で亡くした柴田修幸さん(63)。

柴田修幸さん:
もうちょっとね自分が(火事の状況を)早く分かって助けに行けられたらと思う。そればっかりもう、悔やんで悔やんで、悔やんでも悔やみきれない。

父の亡きがらとの無念の対面は、現場でのつらい状況を強く思い起こさせるものだった。

大船渡市の綾里地区で90歳の父親と暮らしていた柴田修幸さん。
2月26日、仕事中だった修幸さんは、山火事が起きたことを知り、父の吉郎さんを助けようと車で自宅に急いだという。

柴田修幸さん:
綾里地区にトンネルがある、そのトンネルで(警察官に)止められて。「父親と連絡取れないから行きたいんだけど」って言ったが「これ以上は入らせられないから」と。

広がる火の手に遮られ、父のいる自宅にたどり着けなかった。

その翌日、柴田さんは警察から焼けた自宅近くの路上で父の遺体が発見されたという連絡を受けた。
対面してすぐには判別ができないほど、変わり果てた姿だったと話す。

柴田修幸さん:
焼け焦げて(すぐには)断定できなかったんですけど、DNA鑑定で父親と断定されて。(見つかった場所は)結構坂道になってる。(父親は)足も悪いし、心臓も悪かったんで、父自体、一生懸命逃げようとしたんじゃないですか。だからそれを思うとやっぱり、どうして俺が早く助けに行けなかったんだろうって。そればかり悔やんでいますね。
避難指示解除も「帰れない人もいるから…」複雑な思い
山火事発生10日目の7日、火の勢いが収まってきた大船渡市内に「避難指示を解除します」という待望のアナウンスが流れた。

久しぶりの帰宅を果たした住民は、安堵の思いを口にする。
自宅に戻ってきた人は「帰ってこられてよかった」「(Q.自宅からの眺めは)最高です、最高」と話した。
ただし、喜び一色というわけではない。

避難指示解除になった住民は「早く帰りたいというのは確かにあったけど、同じ赤崎町でも帰れない人もいるから…」と話す。
避難指示が続く住民は「(Q,避難指示解除の対象ではない?)家も燃えちゃったから帰るところない。ここ(避難所)にしばらく(いる)」と語った。

7日、避難指示が解除された住民は全体の約20%。
残る約3600人の住民が自宅に戻るまでには、まだ時間がかかりそうだ。
(「イット!」3月7日放送より)