小岩井乳業の「小岩井 生乳100%ヨーグルト」は発売40周年を迎え、伝統の製法を守りつつ、親子向けワークショップを開催し新たな魅力を発信。効率を重視せず、独自の「前発酵」製法を貫く一方、ブランド価値向上のために消費者とのリアルなコミュニケーションを強化。専門家は、ロングセラー商品は進化が必要と指摘し、情感に訴える価値創出が重要だと分析している。
40周年ヨーグルトの変わらぬこだわりと進化する楽しみ方
ロングセラー商品が愛され続けるために、変えるべきもの、変えてはならないものとは。

都内で行われた、親子でヨーグルトの魅力を体感するワークショップ。その主役は、2024年に発売40周年を迎えた“ロングセラーヨーグルト”の「小岩井 生乳100%ヨーグルト」。

カメラマン:
どうですか?バウムクーヘンとヨーグルト。
イベントに参加した女の子:
おいしい。
女の子のお母さん:
おいしい?すごいね。(この組み合わせ)初めてだね。

女の子のお母さん:
(あらびきこしょうをかけながら)ほら見て、おつまみです。
カメラマン:
何がいいですか?お酒は。
女の子のお母さん:
ワインですね。

時代に合わせたヨーグルトの“楽しみ方”を提案し、新たな魅力を伝える一方、一貫して変えていないのが、こだわりの製法だ。

ブランド価値の向上へ、小岩井乳業による“変わらぬもの”と“進化するもの”とは。

岩手県雫石町。白銀の世界が眼下に広がる「小岩井農場」で作られる、小岩井乳業の主力製品・「小岩井 生乳100%ヨーグルト」。

際だつ“なめらかさ”の秘訣は、原材料に、生乳のみを使用するだけでなく、「前発酵」という特徴的な製法にある。

まず、一般的なプレーンヨーグルトは、短時間(4~5時間)で発酵が終わる乳酸菌を使用。量産が可能な「後発酵タイプ」がほとんど。
一方、小岩井の「前発酵」は容器に充填する前に、専用のタンクで12時間以上かけ、じっくりと発酵させ丁寧に攪拌するため、「やさしい酸味」と「なめらかな口あたり」を実現しているという。

小岩井工場・杉田忠彦 工場長:
時間と製造する量がタンクの大きさで決まってしまうので、効率が悪いと思われるかもしれませんが、“味を守る”ことを続けることが逆に小岩井らしい。

自然本来のおいしさを届ける“モノづくりへのこだわり”。決して効率的とは言えないプレミアムな戦略は半世紀近く変わらず、今後も変えないという中、ブランド力を強化する取り組みは、“進化”を遂げている。

イベントに参加したお母さん:
このもったり感は絶対、小岩井さんだ。
子どもたち:
おいしい!

これまでは商品のメインユーザーとされる50代から60代女性へのセミナー形式の催しを行ってきたが、親子で参加するワークショップを開催し、ファン層の拡大へ、親子で楽しめる体験型イベントに変えたのだ。

6歳と3歳の子を持つイベント参加者:
何回も買ってるんですけど、ちょっと高いから頻繁には買えなくて。でも食べたらやはりおいしいなというのが、すごくわかりました。子どももわかるんだなって、たくさん食べてるから。
変わらぬモノづくりをベースとしながら、その魅力を伝えるための、リアルなコミュニケーションの場作りなど、ブランド価値向上に向けた新たな取り組みを行っている。

小岩井乳業・西村努 マーケティング部長:
我々の製品を通じて笑顔が生まれ、家族だったら人とのつながりが生まれて、幸せと健やかさの循環が、自然と牛と人とにつながっていくようなそういう世界を作っていきたいなと。“三方良し”じゃないですが、すごく幸せな循環が作れるものになるかなと。
伝統の製法を守りながら変化する魅力を発信
「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
小岩井乳業の挑戦、企業のブランディングを研究されている鈴木さんの目にはどのように映っていますか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
企業にとってロングセラー商品は、安定した収益をもたらしたり、新規顧客の獲得に向けたコストの削減など多くのメリットがあります。しかし、それを維持・発展させることは決して簡単ではありません。
ロングセラー商品は、変わらないことが大事、そう思われがちですが、むしろ進化が必須です。消費者を飽きさせず、新しい魅力を提供するために商品のリニューアルという手法がよく取られます。
堤キャスター:
リニューアルされた商品に、どんなものがあるのでしょうか。
一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
近年では、ポッキーやハッピーターン、そして、リカちゃんのパパとママなどのロングセラー商品がリニューアルされています。
世界に目を向けると、イギリスのバーバリーは、定番商品であるトレンチコートを良き伝統は残しながら、若者にも歓迎されるように、刷新を図っています。
情感に訴えブランド価値高めるマネジメント
堤キャスター:
ロングセラー商品が、これからも長く愛されるためのポイントは何なんでしょうか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
ブランドの良さを強化するために、その価値をしっかりマネジメントする必要があります。商品そのものを変えるのか、あるいは商品の良さを伝えるコミュニケーションの対象やアプローチを変えるのか。さまざまな手法があります。
今回の小岩井生乳100%ヨーグルトでは、昔ながらの製法と味を守ることを選んでいますが、消費者に商品の良さを知ってもらうためのコミュニケーションに力を注ぎ始めています。
堤キャスター:
VTRにあった親子で参加する体験型のイベントというのも、みなさん楽しそうでしたよね。
一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
子供が美味しいと喜んでいる姿を見て、幸せになれる場を提供しているように感じます。商品のコモディティ化が進み、差別化が難しくなっている中では、情感に訴えるブランド価値の創出はとても大切です。
ロングセラー商品がブランド価値の向上によって、更なる顧客のファン化が進むことを期待したいです。
堤キャスター:
あえて何かを手放したり、変えたりする。こうした選択が守るべきものを守ることにもつながるように思います。ロングセラー商品が長く愛されるための鍵が、ここにあるのかもしれませんね。
(「Live News α」3月5日放送分より)