中国・湖南省の長沙市で、人口減少に危機感を抱く地元政府が若者の結婚を促す施設を整備した。3人の出産を促す政策に対し、若者からは反発の声が上がり、インフルエンサーらも「結婚しない」選択を発信している。経済的負担や価値観の変化に対し、中国政府は有効な手を打ち出せないでいる。
前年比約20%減…中国で結婚する人の数が急激に減少
中国では今、結婚する人の数が急激に減っている。人口も3年連続で減少していて、危機感を強める中国政府は若者に結婚してもらうため、ある対策を打ち出したが評判は良くないようだ。

取材班が訪れたのは、中国南部の湖南省にある長沙市だ。ここにはある変わった商店街がある。入り口には、「愛がこの街で出会う」と書かれた看板が見える。また至るところでハートマークや愛の言葉が掲げられている。
実はここは、若者の結婚を促す目的で地元政府が整備した商店街で、その名も「婚育文化街」だ。
約14億人の人口を抱える中国だが、今国内では結婚する人の数が急激に減っている。2024年に結婚したカップルは前の年と比べて約20%減少し、記録が確認できる1985年以降で最も少ない数になった。危機感を抱く中国政府は、様々な対策を打ち出している。

記者:
商店街の中心部まで歩いてみます。ありました!入り口に「嫁校」と書いてありますね。
「嫁」の学校を意味するこの施設は、一体どんな施設なのか。入り口に飾られている提灯には「適齢期に結婚する」「家庭を繁栄することは国家の利益」と書かれている。
ここは2024年10月にオープンした、若者に結婚や出産を促す政府肝いりの施設だ。

嫁校スタッフ:
これは人口の長期的なバランスを保った発展を促進するために作り出した国家政策です。我が国は今、人口の高齢化に直面しています。
施設では結婚や出産についての法律や政策を学べるパネル展示のほか、赤ちゃんのオムツ交換やミルクの飲ませ方を体験できるコーナーもある。他にも妊娠に伴う大変さを理解するために、男性が陣痛を体験する装置もある。

施設内には、ポップな漢字のステッカーが並んでいた。一つ読んでみると、「あなたのために毎日、愛の晩ご飯を料理します」と書かれている。結婚する際の約束だそうだ。中には「2人子どもを産む」「3人子どもを産む」という言葉もある。
中国政府は今、国民に3人の出産を促していて、クイズ形式のパネルでも、子どもを3人産むことが提唱されている。
ただこの施設、取材した際には見学者の姿はほとんど見られなかった。若い人たちはどう思っているのか。

ーー「嫁校」をどう思いますか?
街の声:
私は支持しません。出産は女性自身の考えを配慮しなければなりません。
街の声:
3人子供を産むことを提唱するなんて…子育てはとても難しいですよ。
街の声:
嫌な気分になります。なぜしつこく催促するのですか?嫌ですね。
反応は冷ややかだ。かつて「一人っ子政策」を導入していた中国政府は、2016年に方針を転換した。その後、出産を促す政策を打ち出したものの効果は薄く、2024年の人口は1949年の建国以来、初めて3年連続で減少し、少子高齢化が急速に進んでいる。
「結婚も出産もしない」インフルエンサーに支持集まる
背景の一つにあるのは、若者の価値観の変化だ。中国の首都・北京市で未婚女性に「結婚観」を聞いてみた。

ーー将来的に結婚や出産を考えていますか?
未婚女性:
今のところまだ考えていません。子どもができたら負担が増えるし、自分も縛られてしまうかもと思うからです。
未婚女性:
子どもを産むには子どもにとって良い環境を提供する必要があるので、ただ子どもを産めば良いという話ではありません。経済的に余裕がないのであれば、結婚しないで1人のままでも良いと思います。
さらにSNS上には「結婚も出産もしない」ことをアピールするインフルエンサーが、次々と登場している。
インフルエンサー(中国SNSより):
私は2025年で30歳になりました。一生結婚するつもりはありません。結婚生活が好きではないし、憧れてもいないからです。私は一人で生活するのが好きです。結婚にはより多くの責任が求められます。
自由で優雅な一人暮らしを紹介する動画は、若い女性たちの支持を集めている。

フジテレビ国際取材部・崔雋デスク:
今の中国の若者の話を聞くと、結婚は恋愛の先にある個人の選択。しかし、政府が前面に出て達成すべき目標を押し付けられているように感じてしまう。そこに反感を持ってしまいます。
また中国経済の減速も結婚離れに拍車をかけていて、中国政府は有効な手を打ち出せないでいる。
(「イット!」2月28日放送より)