匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」による偽ロレックス売却事件で、西日本の23店舗が被害に遭い、被害総額は3700万円以上にのぼっている。

高知市の老舗質店の社長が、精巧な偽ロレックスを見破るポイントを明かした。
本物?偽物?見分けるポイントは3つ
2024年7月、高知市の大原質店に30代の男が偽のロレックスを持ち込んできた。創業59年を迎える同店の大原豊社長(58)は、40年の鑑定歴を持つプロの目で偽物を見抜いた。

「パッと見たら全然、偽物と分からない。客に『どこで買ったか?』と聞いたが『もらいました』。300万円も400万円もする物をもらうこと自体があまりない」と大原社長は違和感を覚えたという。

偽物と見破った3つのポイントがある。
1. 日付のにじみ
ロレックスの日付の部分を顕微鏡で拡大して見ると、本物は綺麗に印字されている。しかし偽物は、まるで筆で書いたように文字の周りに滲みが出ている。

比べて見てみると一目瞭然なほどに違いが出ているのだ。
2. レーザー刻印
ロレックスのガラスには、肉眼では見えない「王冠」の模様が刻印されている箇所がある。

顕微鏡でピントを合わせないと見えない、高度な技術を要するレーザー刻印が偽物にもあった。それでも大原社長は違いを見抜いた。

偽物は、王冠の左から2番目の部分の刻印が薄くなっていたのだ。
3. 保証書の日付
国内の正規販売店で買った場合は、保証書に日付が印字されるが、持ち込まれたものは細いマジックで書かれていた。

海外店で買った場合は手書きもあるが、大原社長は他の怪しい点を総合して、持ち込まれた時計が偽物だと確信した。

保証書まで付ける巧妙さは、これまでにないパターンだったという。大原社長は、男に「これは買い取りできない品物です」と伝えた。
質店の判断を狂わせた巧妙な手口
大原質店には、その後も異なる4人の男が偽ロレックスを持ち込んできたが、全て偽物と見抜き、警察に通報した。

犯人たちは、質店側の判断を狂わせるために「早くしてください」と急かしていた。大原社長は「早くしてくださいと言われて早くするとミスが起こる」と指摘する。
「今までで一番精巧」総額3700万円以上の深刻な被害
偽ロレックスによる被害は西日本の23店舗で3700万円以上に上る。

そのうち高知県内では7店舗で1200万円の被害が出ている。大原社長が「今までで一番精巧」という偽ロレックスが、深刻な被害をもたらした。
偽物見破る“鑑定のプロ”育成が急務
大原社長は「もし店頭に並べて売っていたら大ごと。こういう犯罪は絶対にしないでほしい。事件の全容を解明してほしい」と訴える。全容解明への最大の課題は、精巧な偽ロレックスの入手ルートの特定だ。海外で製造されている場合は、捜査は非常に困難となる。

再発防止には、以下の2点が鍵となると考えられる。
1. 鑑定のプロを育成する研修制度の確立
2. 偽物の情報を業界全体で共有するシステムの構築
偽ロレックスを作る技術は年々向上しており、今後も同様の事件が起こる可能性は高い。質店や買取店は専門知識の向上が求められている。消費者も十分な注意を払う必要がある。
取材:玉井新平(高知さんさんテレビアナウンサー)