ロシアによるウクライナ侵攻開始から3年が経過した。トランプ大統領がゼレンスキー大統領を批判し、対話が難航する中、ゼレンスキー大統領は平和実現のためなら辞任も辞さない姿勢を示した。

「辞任する用意がある」ゼレンスキー氏が発言

ロシアによるウクライナ侵攻から、2月24日で3年が経過した。ウクライナの首都・キーウの教会で23日に行われた礼拝では、市民から「何らかの合意が結ばれることを願っています」と平和を願う声が聞かれた。

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各地での戦闘が続くウクライナでは、これまでに国土の約2割をロシアに占領された。そうした戦況の移り変わりを色濃く反映しているのが、ロシア西部のクルスク州だ。

ウクライナは2024年8月、ロシア領クルスク州への越境攻撃に踏みきり、約1300平方キロメートルを占領した。しかし、今ではその64%の約800平方キロメートルあまりをロシア軍が奪還した。

戦況がロシア軍優位に傾く中、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ウクライナの平和が実現するなら、辞任する用意がある」と発言。この発言の裏にあるとみられるのが、ゼレンスキー氏を独裁者呼ばわりしたトランプ大統領の存在だ。

トランプ大統領は、大統領復帰後、ロシア寄りの姿勢を鮮明にしている。

アメリカ・トランプ大統領:
プーチン大統領にはリーダーシップがあり、私は彼が個人的に好きだ。

一方で、ゼレンスキー大統領に対する批判を強めている。

アメリカ・トランプ大統領:
ゼレンスキーは3年間、大統領として戦争を止めるための会議や電話さえ一度もしていない。恐ろしいことだ。

18日には、ウクライナ侵攻の終結に向けアメリカとロシアの高官が協議したが、その席にウクライナは招かれず、ゼレンスキー大統領は「ウクライナ抜きの全ての交渉は、何の結果ももたらさない。我々に関するいかなる合意も認めることはできない」と不快感をあらわにした。

そうした中で、「平和が実現するなら辞任する用意がある」と発言したゼレンスキー大統領。その真意はどこにあるのか。

辞任の条件にウクライナの「NATO加盟」を提示

青井実キャスター:
トランプ氏の返り咲きでさまざまな動きがある中、停戦の実現性はどう感じられていますか?

外交ジャーナリスト・手嶋龍一さん:
まさに、関係者の努力次第ですね。日本では侵攻から3年と言っていますが、私どもから見ると、2014年のクリミア半島侵攻以来、その時は私は現地にいましたが、それ以来10年を超える戦闘が行われていますから、10年に及ぶロシア・ウクライナ戦争というのは、それだけに簡単には終わりません。しかし、おびただしい数の人命、民間人も含めて失われておりますので、どんなに困難でも、停戦の可能性を追求すべきだと私は思います。

宮司愛海キャスター:
こうした中で23日、ゼレンスキー大統領からこういった発言がありました。「ウクライナの平和のために、必要があれば辞任する用意がある」などと発言したわけです。
ただ、この辞任には条件がありまして、NATOにウクライナが加盟するならば辞任しても構わないとしました。これはトランプ大統領から選挙を経ていない独裁者などと批判を受ける中で、このような発言が飛び出したと思われます。

青井キャスター:
プーチン大統領は、ウクライナのNATO加盟に反対し続けてきたわけですから、納得しなさそうですよね。

外交ジャーナリスト・手嶋龍一さん:
この発言の真意が、平和のためにということと、NATO参加というところにあるのだと思います。ゼレンスキー大統領としては、プーチンが何としても頑として「うん」と言わないNATOの参加という、ウクライナの安全保障全体を担保するものになりますので、極めて難しい条件が実現するのならば、辞めても構わないということだと思います。逆に言うと、それだけNATOの参加、そしてその後、ウクライナ全域の安全保障をどういうふうに国際社会が担保していくのか、これがいかに難しいのかを示している発言だと思います。

宮司キャスター:
アメリカ側からNATO加盟に関して新たな案が出てきたということです。アメリカのテレビ局NBCが、トランプ政権が検討中の案として報道したのが、停戦合意後にロシアが再びウクライナに侵攻することがあれば、手続きを経ずにウクライナのNATO加盟を認めることを検討しているということです。

青井キャスター:
アメリカの1つの案もありますし、両国の案とも互いにハードルが高そうなんですが、どうでしょうか。

外交ジャーナリスト・手嶋龍一さん:
仮に、和平交渉が順調に進んでテーブルに着くとしても、両国の条件、そして案は全く平行線をたどっていますから、大変難しいのだと思います。そうした中で、本当にトランプ大統領がこれでいこうというところまで詰まっていない可能性もあります。NATOにウクライナが参加をすることは極めて難しいわけです。

そして、停戦が終わった場合は、更に大きな意味で国際社会がロシアを含めてウクライナの安全保障を担保するわけですから、それを破ってロシアが再侵攻ということになれば、アメリカも対応をせざるを得ないということを示しています。ただ、停戦交渉のテーブルに乗ってくる最終案であるかどうかとなると、まだそこまでには距離があると思います。

和平の実現に向け…日本が取るべき行動は

宮司キャスター:
この背景には、多くの方が亡くなった紛争をどうにかしたいという思いがあるわけです。この紛争で亡くなった方の数は、ウクライナで兵士の死者が4万5100人、そして民間人の死者1万2654人、子供の死者が669人、ウクライナでの行方不明者の数が6万2948人、さらにロシア側では、兵士の死者が9万5026人とされています。

青井キャスター:
そんな中、トランプ大統領は今後どう動いていくと見ますか?

SPキャスター パトリック・ハーランさん:
1期目の北朝鮮との交渉を思い出しますと、ちょっと難航したりすると、トランプ氏はすぐ諦めたりすることがあるんですよね。ですから集中力が切れる前に、今のうちに不利な条件でもウクライナに飲ませて、早目に終わらせようというのがトランプのスタンスかなと思います。ただ、トランプに対して、今同じ共和党内からも反発が上がっているんです。院内総務もそうだし、有権者もそれはだめですよという声も上がっているから、当時者の声を聞かなくても、それを代弁する党内の声を聞いていただきたいなと思います。

青井キャスター:
日本時間24日夜に首脳会合がオンラインで開かれるわけですが、手嶋さんはこの中で日本などが取るべき行動というのは、どうお考えでしょうか。

外交ジャーナリスト・手嶋龍一さん:
日本はついこの間までG7の議長国でありましたし、広島で会議を開いた重い責任を負ってると思うんです。G7広島サミットのことを思い浮かべていただければ、岸田元首相は、あの時まさにロシアによって力で奪われた全領土をウクライナが奪還する、それを断固支持すると言っていて、この段階で少しでも和平に向けたリーダーシップは取られていないです。
それが、今日これほどの悲劇と死者を出していますから、日本はまさしくこの事態を我が事として、和平の実現に向けて一刻も早く、撃ち方やめ、というために、日本はまだまだすることがありますので、最大限の努力を固めるべきだと思います。そして、日本はやるべきことをほとんどまだやっていないと申し上げたいと思います。
(「イット!」2月24日放送より)