監督した映画「Black Box Diaries」がアメリカ・アカデミー賞にノミネートされたジャーナリストの伊藤詩織さんが、20日に予定していた会見をキャンセルした。一方、伊藤さんの元担当弁護士は会見で、伊藤さんの映画制作について批判。伊藤さんは映像・音声の無断使用について、謝罪と対応策を書面で発表した。
監督作品がオスカー候補…映像の無断使用が物議に
自らの監督作品がアメリカ・アカデミー賞にノミネートされている、ジャーナリストの伊藤詩織さんだが、20日、ある人物によって批判された。

伊藤さんの映画制作について批判する西廣陽子弁護士:
幾度も約束は守られませんでした。そして私は、彼女側から「底知れぬ悪意を感じます」と、そう非難されています。
日本外国特派員協会での会見で涙ながらに訴えたのは、性被害を巡るかつての民事裁判で伊藤さんの弁護を担当していた、西廣陽子弁護士だ。

西廣陽子弁護士:
こんな将来が来ることなど予想すらせず、私は8年半もの時間とエネルギーを、彼女を守るために必死に費やしてきました。なんて惨めなのでしょう。
一体なぜ、元弁護士がこのような主張を展開したのか。
答えは、伊藤さんが制作した映画にあった。

伊藤さんは2015年、当時TBSの記者だった男性から、酔って意識がない中で性的暴行を受けたと主張し男性を提訴し、2022年には、男性側に332万円の賠償を命ずる判決が確定した。

伊藤詩織さん(一審判決後 2019年12月):
きちんと答えを出していただけて感謝。受けた傷が癒えるわけではない。

その後、伊藤さんは自らの性被害についてのドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」を制作した。
この作品は既に海外で公開されていて、3月に授賞式が行われるアメリカ・アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされている。

しかし西廣弁護士らは、その作中に使われている現場ホテルの防犯カメラ映像について、事前の取り決めに反する“目的外使用”だと指摘したのだ。
西廣陽子弁護士:
ホテルの防犯カメラ映像について、裁判手続き以外では一切使用せず、報道やインターネット配信しないと書かれた誓約書に伊藤さんはサインをしました。
伊藤さん声明「ご本人の確認抜け落ちたまま使用…心からおわび」
西廣弁護士はさらに、無断使用は他にもあると続けた。その1つが、伊藤さんと西廣弁護士が交わした会話の音声だ。

西廣陽子弁護士:
(上映会では)伊藤さんが私(西廣弁護士)と電話で話している映像が使用されており、ずたずたな気分にされた、その瞬間でした。(その後)伊藤さんが通りかかり、「先生また相談させてください」といってハグをされました。私には彼女のハグを拒否する気力すらありませんでした。

その後、伊藤さんらと協議を行ったものの、双方の見解は現在に至るまで対立したままだとしている。
西廣弁護士らが行ったこの会見の後、本来であれば同じ場所で伊藤さんも会見を行う予定だった。

ところが、伊藤さんの会見は体調不良でキャンセルになり、代わりに書面で声明を発表した。

無断使用が指摘されるホテルの防犯カメラについて、「この映像があったからこそ、警察も動いてくれました。映画への使用について、ホテルからの承諾は得られませんでした。そのため映画では、外装・内装・タクシーの形などを変えて使用しています」と釈明した。

また、西廣弁護士との会話音声を無断で使用した点については、「ご本人の確認が抜け落ちたまま使用し、心からおわび申し上げる」と謝罪したうえで、映像を無断で使用した人などに関して、「差し替えなど、できる限り対応します」としている。
(「イット!」2月20日放送より)