野生のイルカが海水浴客にかみつきけがを負わせる被害が、3年前から福井県で相次いでいる。県は2025年の海水浴シーズンに向け、対策に本腰を入れることに。イルカに発信器を取りつけリアルタイムで位置情報を把握できるシステムの開発や、市町の対策費用を半額補助する方針だ。

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2月18日、県庁でイルカ被害対策会議が開かれ、警察や沿岸自治体、観光協会などから50人が出席。県農林水産部の稲葉明人部長が「今年の海水浴シーズンに向け、一体となってイルカ被害の防止、対策を講じていく」と決意を述べた。

被害は県外客中心に53人、観光業に影響も

2022年からの3年間で、野生のイルカが県内各地の海岸で相次いで目撃された。海水浴場では、野生のイルカが突然、海水浴客にかみつく事件が頻発。「イルカが出没している。近付かないように」とアナウンスするなど対応に追われた。

福井県イルカ対策検討委の森坂匡通委員長
福井県イルカ対策検討委の森坂匡通委員長

イルカの専門家である県対策検討委員会の森阪匡通委員長は「イルカは人に会ったら絶対に寄ってくることはなく、基本的には人間を避ける。今回は人に慣れる経験をしてしまったのが原因」と話す。

野生イルカによる被害は3年間で53人
野生イルカによる被害は3年間で53人

県によると、この3年間で野生イルカの被害にあった海水浴客は、中京・関西圏を中心に53人。発生場所では、福井市で21人、敦賀市で10人、美浜町で22人だった。

一時捕獲でGPS取り付けへ

県は2025年度の当初予算案に「イルカ被害対策事業」として約2840万円を盛り込んだ。杉本知事は「県民がかまれるだけではなく、観光事業にも影響がある。

福井県の杉本達治知事
福井県の杉本達治知事

福井に二度と来たくないと思ってほしくないので、県としては広域の移動を事前に察知できるようなシステムを考えたい」と述べた。

被害をもたらしたイルカは1頭とみられている
被害をもたらしたイルカは1頭とみられている

専門家の見解では、これまでに県内沿岸に出没した“かみつきイルカ”は「ミナミハンドウイルカ」とみられ、県はこの“一頭のみ”が被害を及ぼしていると考えている。ミナミハンドウイルカは国の法律で、捕獲や施設への収容はできない。ただ、国の許可があれば、一旦捕まえて位置情報が分かるGPSなどを装着して放すなど、試験研究目的の一時捕獲は可能だ。

イルカを一時捕獲し発信器を取り付ける
イルカを一時捕獲し発信器を取り付ける

そこで県は、海水浴シーズンまでにイルカへの発信器の取り付けを試み、位置情報をスマートフォンなどの地図上に表示させ、自治体や地元の観光協会が注意喚起を促せるシステムを開発するとしている。対策検討委員会の森阪委員長は「共存を考えると、いまできることはこれくらいしかない。世界的に見ても重要な例になると思う」と話す。

市町の対策費にも半額補助

イルカ対策の強化は市町レベルでも行われている。敦賀市は初めてイルカ対策として約300万円の予算を計上し、海水浴場関係者の対策費用を補助する。

敦賀市も対策費を予算に計上
敦賀市も対策費を予算に計上

県は、市町が監視員を雇って監視を強化したり、イルカが嫌う超音波発信装置を購入したりした場合、その費用の半額を補助する方針だ。

会議は6月にも行われ、県や市町のイルカ対策の進捗状況が報告されることになっている。野生のイルカが現れてから4年目を迎える夏、対応策が功を奏するか注目される。

福井テレビ
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