住宅を取り囲むようにして積み上がった大量の、一見、廃棄物ともみられる物品。一体、誰が何のために積み上げたのか?

住宅の壁のように積み上がった物品

福岡市城南区の住宅街一角の交通量の多い道路沿い。歩道を拡張する工事の先を覗いてみると、何やら大量の物品が積み上がっている。工事で発生した瓦礫なのか?

道路拡張工事の先に積み上げられた大量の物品
道路拡張工事の先に積み上げられた大量の物品
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工事中の作業員に尋ねると「持ち主から『触らないで下さい』って言われています。片付けるの大変なんよ。落ちんごとせないけんけん」とやや迷惑そうに話す。

まるで壁のようにうずたかく積まれていた物品は、工事で出た瓦礫ではなく、近くに住む人物の所有物だというのだ。

モノが積みあがっている隙間に人が1人、通れるくらいの空間がある。ここの住人はここから出入りしているのか?近づいて見てみると、それは大量のスーツケースのほか、人気キャラクターの置物、サーフボードに家電製品など多種多様な物品だった。

敷地外に飛び出している物品もある。樹木に囲まれた住宅を取り囲むように、壁のように物品が積み上がっている。

不安な表情で見守る近隣住民

近隣住民の1人は「俗に言う“ゴミ屋敷”かなって。スゴイっすよね、ほんと」と驚嘆の表情を見せ、また別の近隣住民は「ちょっとあそこ、謎なんだよね~。地震になって倒れたら危ないからね。すぐガチャンってなると思うよ」とやや迷惑顔だ。

生ゴミなどの悪臭はしないものの、地震や台風などで倒壊しないかと近隣住民の多くは心配している。歩道が狭く、交通量も多い道路で、通行人がモノを避けながら歩くようすも見られた。

いつごろからこの状態なのか?「2016年あたりかな」と話す近隣住民。少なくとも9年ほど前にはモノが積み上がっていたとみられる。

グーグルマップで調べてみると、12年前にモノは積み上がっていないことが確認できる。しかし10年前に少しずつ置かれ始め、2023年には現在と変わらない状態になっていた。

2015年の現場
2015年の現場
2017年の現場
2017年の現場
2021年の現場
2021年の現場

なぜ、スーツケースをはじめとした大量の物品が外に積み上げられているのか。家主の帰りを待ちながら住宅街で取材を続けるとさらに驚きの事実を発見した。

1軒だけではなかった“ゴミ屋敷”

道路拡張工事現場近くの”ゴミ屋敷”から徒歩で5分ほどの同じ町内。緑が生い茂っている別の住宅の周囲にもスーツケースが積み上がっている。人が住んでいる気配はない。

「持ち主が、10年近く前かな、積み上げだして、どんどん、どんどん。ここから100メートルくらい行ったところかな、左側にやっぱり積み上げてある。(同じオーナー?)そう」と話す近隣住民。10年ほど前からモノが積み上がり始めた住宅の所有者は、道路沿いのあの“ゴミ屋敷”と同一人物だという。

1台の車が、近くに停車した。「何ですか?」とスーツケースを引く男性。住宅の所有者だ。早速、記者が話を聞いた。

「雑貨を集めるのが好きなので、車の中もいっぱい入れとる。ためてるんです。スーツケースに入れて。これやったら頑丈なんですよ。スーツケースの中には雑貨が入ってます。(どこから貰ってきた?) 買うんですよ!」と話す雑貨収集が趣味だという70代の男性。「家の中に入りきらんから、外にこういう具合にしてスーツケースに入れてる」のだという。

男性は、30年ほど前からキャラクターのぬいぐるみや食器などを買い込み、住宅内に保管し始めたらしいが、いつしか収容できなくなり、家に続く通路にまで置くようになったというのだ。

男性は、もう1軒の住宅も倉庫代わりにしていた。「有毒ガスが出るということはないと思いますね。ただ落ちてくるとかになったらいけんからさ、片づけないかん。整理したいという気持ちはあるんですよ」と男性は、近くに住む人たちの不安の声に理解を示した。

体調が芳しくなく、また通路が歩道の拡張工事の計画地に入っているため、近く業者を雇うなどして片づけたいという男性。「人から見れば“ゴミ屋敷”と、自分からすれば“ゴミ屋敷”かどうか知らんけど、趣味の範囲で品物、集めているという感じですね」。

敷地内に積みあがった大量の物品。歩道の拡張工事も進むなか、物品の片付けに残された時間はもう余りない。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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