オンラインカジノに関与した疑いで、警視庁は吉本興業所属タレント10人近くを任意で事情聴取している。
元利用者を取材すると、「ギャンブル依存症」となり、自己破産になるまで金をつぎこんでしまうケースもあった。
利用者の感覚を狂わせる“卑怯な手口”について、元従業員の男性が語った。
「親の口座使い…」高校でまん延も
今、海外のオンラインカジノから日本人が狙われている。
海外のオンラインカジノ会社 元従業員:
(オンラインカジノの)運営会社さんがよく言うのは日本のパチンコ市場。市場規模が大きいっていうのを見て。
日本にも一回勝負を仕掛けたいって。やっぱり日本人はナメられている。
最新の調査では、1年以内でオンラインカジノを利用したことがある人は340万人以上。
しかも…。
公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 田中紀子代表:
高校でまん延しているっていう相談を受けたことがあります。親の口座を使って、600万円ぐらい全部空っぽになってたとか。

日本で違法のオンラインカジノに、なぜ人々は取り込まれていく?
元利用者やカジノ側の実情を取材すると、巧妙な罠の数々が散りばめられていた。

海外のオンラインカジノの運営会社で働いていた、日本人男性は言う。

海外のオンラインカジノ会社 元従業員:
規制がない日本だと、オンラインカジノは、まぁやりたい放題できるんで。ちょっと卑怯な手法があって。
日本人をカモにする“卑怯な手法”とは…?
「無料版」「有料版」の二段構え
オンラインカジノに関与した疑いで、警視庁が吉本興業所属のタレント10人近くを、任意で事情聴取している。
オンラインカジノは合法の国で運営されていても、日本で賭けるのは違法。しかし、日本の著名人が起用された広告を見たことが、利用するきっかけの一つになるという。
カジノを研究する木曽崇氏は、その広告には、日本人を引き込む戦略があるという。

国際カジノ研究所 所長 木曽崇氏:
二段構えというのは、彼らが意図してやっていることですね。無料版っていうものを別途、切り出して作るんですよ。無料版であるということで、広告を載せる側もそれを拒否しないということで。

国際カジノ研究所 所長 木曽崇氏:
社会的認知を、そういう広告の無料版広告という形で稼いだ上で、実際、有料版というのが存在していて、インフルエンサーとかが(有料版へ)誘導していく解説動画だとか、実践動画みたいなのを配信していたりだとか。
それが合法なんじゃないかと、誤認してしまう人も当然いますよね。
「Mr.サンデー」の取材に応えたのは、オンラインカジノの元利用者だという20代の男性。

元利用者:
スマホのバナーで出てくる広告。なじみのあるサッカー選手が映ってたので、スマホゲームみたいなイメージで。少額でやってみようかな。百何十円で、1ドルなり5ドルなり、すごく少額を入金したのを覚えています。

広告を見て、軽い気持ちで利用を開始。
しかしその後、自己破産に至るまで、のめり込んでしまったという。
利用者をはまらせる“罠”とは?
そこには、利用者が深みにはまり続けるいくつもの“罠”が…。
元利用者:
色々スロットゲームとかあったんですけど。僕はなんとなく名前を聞いたことがあった、バカラというトランプゲームを最初に選びました。

男性が、当時利用したオンラインカジノは大きく分けて、ルーレットや、スロットゲーム、テーブルゲームだったというが…
業者によっては、スポーツを対象にした賭けもあるという。
そんな中、トランプゲームを始めた男性だが…。

元利用者:
(勝率)2分の1のトランプゲームで賭けて、勝ったら倍になって、負けたらゼロになるというすごくシンプルなゲームで。結果が30秒で出て、倍かゼロかになってまた次の勝負。
そのスピード感とゲームのシンプルさとかが、すごく連勝する時ももちろんありますし、連敗する時もありますし。僕はもう一気スイッチが入って、ずっと繰り返すという感じですね。
基本的に24時間利用できるオンラインカジノ。
ゲームは、短時間で次々と行われるため、延々と賭け続けてしまうという。
「ずっと頭をギャンブルで支配」依存症に
さらに、日本人をターゲットにしたこんな仕掛けも…。
ライブ配信でディーラーを務めている人の中に、日本人女性が多くいたという。
元利用者:
チャット欄でコメントとかを入力できたりするんですけど、入力したら日本人のディーラーの人が 「〇〇さんおめでとうございます」。安心感みたいなのもありますね。

こうして、ほぼ毎日賭け続けた男性は、4カ月で300万円を借金。
危機感を覚えた男性は、賭けを辞め、8カ月かけて100万円ほどを返済したのだが…
元利用者:
すごく苦しくて生活自体は。そのタイミングで、たまたま(借金返済の)支払いが1万円足りないという。
「どうしようどうしよう」と考えて「1万円だったらオンラインカジノで1回バカラに1万円賭けて、勝てば2万円になるからそこで増やしてやめよう」と。

再びオンラインカジノに手を出した男性はその後、借金が400万円以上に膨らみ…。

元利用者:
異常な時は朝起きてすぐログインしてすぐ賭ける。仕事行く道中でも賭けるし、朝ごはん食べている時も賭ける。
信号待ちとかでもスマホ取り出して賭けちゃったり、お風呂の中でも賭けますし。トイレ行くタイミングとかもずっとですね。
あと、寝る前賭けてやめられなくなって、結局次の日までなんてこともありました。ずっと頭をギャンブルで支配されている。
一晩で最大3000万円溶かす…自己破産した男性
一晩で負けた金額は、最大3000万円。
男性はギャンブル依存症を自覚し、支援団体に相談。
自己破産し、現在も週3回、支援団体に通い立ち直りを目指している。
男性の人生を狂わせたオンラインカジノ。

さらに、2024年まで、外国でオンラインカジノの運営に携わっていた日本人男性を取材すると…。利用者に“勝ち逃げ”を許さない、恐るべき仕組みがあるという。

海外のオンラインカジノ会社 元従業員:
ちょっと卑怯な手法があって。例えば(利用者が)10万円勝ちました。出金を要請します。
カジノにその出金をわざと遅らせるんですよ。「システム上のトラブルがあって」とか言って。

海外のオンラインカジノ会社 元従業員:
3~4日たって、全然(お金が)出てこないから、もうちょっと遊ぼうってなって、プレイヤーがまたその(勝った)10万円分で遊んで、どこかで(勝ったお金以上に)負けるまで、カジノは待って。
依存症当事者の3割以上が犯罪に…
勝ち分の支払いを遅らせる間に、利用者はさらなる賭けに手を出してしまう。
最終的に利用者が負ける状況を意図的につくるケースもあるというのだ。

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 田中紀子代表:
本当にオンラインカジノは、依存症の温床だと思いますね。
何度も借金問題が出てくることに疲れ果てて(当事者の)、お母さんであったり、奥さんであったりという人たちが、まず相談に来るっていうパターンが多いですよね。
そう語るのは、ギャンブル依存の当事者や家族を支援する団体の代表・田中紀子氏。

相談に訪れた人の中で、オンラインカジノをやっている人の割合は、2019年から11倍以上に増加。
その影響が及ぶのは、本人や家族だけではない。

公営ギャンブルも含めた依存症当事者の、実に3割以上が犯罪に手を染めるといい、その行為は、横領、窃盗、さらには、社会問題化する闇バイトも。
「営利集団の厳罰化」求める声も
こうした状況を目の当たりにしてきた田中代表は…。

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 田中紀子代表:
スマホを使っているギャンブルなので、昔みたいにギャンブル場に行かないようにしようとか、そういうような対策って取れないわけです。
SNSのCMとか、記事を読んだりとか、遊び方なんて、YouTuberたちが動画でいくらでも説明しているんで、簡単にできちゃうんですよ。
その動画を見てしまうと、関連動画でひっきりなしにオンラインカジノの動画とかCMが流れてくるわけですよ。ここまで野放しだったということが悔しくてならない。
オンラインカジノに加担している日本側の営利集団ですよね。そこを厳罰化するべきだと思います。
さらに、専門家たちが期待を寄せるのは…。

元埼玉県警捜査一課 警部補 佐々木成三氏:
警察はその捜査能力を上げて、オンラインの決済業者ですね。決済業者の持っている情報から関与している人物が浮上する場合もある。

国際カジノ研究所 所長 木曽崇氏:
日本のユーザーが違法性を認知していないこと自体が、最大の原因なので。オリンピック選手が送検され、今回吉本の芸人が事情聴取をされという形で、違法性の認知がさらに高まってくれると期待をしながら見ています。
(「Mr.サンデー」2月16日放送より)