財務省が発表した2024年の国際収支速報によると、2024年の経常収支が過去最大を記録した。輸出や海外投資の収益増が主な要因だが、専門家によると、日本の輸出競争力低下を懸念する声も出ているという。
一方、デジタルサービスの支払いに伴う「デジタル赤字」が過去最大となり、国内の次世代企業によるデジタル赤字の縮小が課題と指摘する。
経常収支の黒字過去最大 その要因とは
2024年1年間の経常収支が過去最大の黒字だ。

財務省が発表した2024年の国際収支速報によると、日本が貿易や投資でどれだけ稼いだかを示す経常収支は29兆2615億円の黒字だった。
前の年に比べ、29.5%拡大し、比較可能な1985年以降で過去最大となった。

海外での投資の利子や、海外子会社から受け取る配当金などの第1次所得収支が、40兆2072億円の黒字となったことが主な要因だ。

また、輸出から輸入を差し引いた貿易収支の赤字額が、前の年から40%縮小したことも影響した。併せて発表された2024年12月の経常収支は1兆億773円の黒字で、黒字は23ヶ月連続だ。
円安で輸出増も競争力低下に懸念の声
「Live News α」では、エコノミストの崔真淑さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
今回発表されたデータ、どのように見れば良いでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
国際収支は海外との、物・サービス・投資のお金の流れを捉えた統計になります。中でも注目されるのは、国際収支の大部分を占める経常収支です。
一概に経常黒字が良い、赤字が悪いとは捉えられず、また、これだけでドル円の動向が決まる訳ではありません。
なので、この経済指標は日本が世界の中で、どういう立ち位置になっているかを把握するのに、重要な指標と認識することが大事だと思います。
今回の注目点は2つあります。1つは経常収支にカウントされる貿易収支の動向です。
堤キャスター:
これは、どのような点に注目していますか。
エコノミスト・崔真淑さん:
2024年の貿易収支の赤字幅は3兆8990億円で、2023年から40%縮小する動きになっています。
その背景には、4.5%も輸出が増えたこと。円安が輸出額を押し上げ、半導体関連や自動車の輸出が好調なのが影響しています。
そして、原油などの資源価格そのものが下落し、輸入コストが減少していることも影響が大きいです。ただ、今回の結果を見て、円安で日本の物が世界で人気になっていると認識するのは少し違うと思います。
円安で輸出金額は増えているのですが、実は輸出数量そのものは、2008年以降は減少傾向で、日本のものづくり産業の競争力が落ちているのではないかと、懸念を示す声も出ています。
拡大する「デジタル赤字」…
堤キャスター:
もう1つの注目点は何でしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
デジタルサービスの支払いに伴う「デジタル赤字」が気になりました。
日本がDX化を進めると、主にアメリカのソフトウェアサービスを使うことが多いです。するとDX化の費用が海外に流れていくことが非常に増えてきています。
他にも、広告におけるシェアの半分がインターネット広告と言われるが、その過半数はYoTubeなど海外企業で、やはり広告費用が海外に流れやすくなっている。
こうした「通信・コンピュータ・情報サービス」の収支は2兆4941億円の赤字で、赤字幅は54.4%のプラスと、過去最大にもなっています。
堤キャスター:
「デジタル赤字」は拡大していきそうでしょうか。
エコノミスト・崔真淑さん:
現在は国内のベンチャー企業を中心に、国内でのクラウドやデータセンターサービス、そして、広告の最適化サービスなども非常に頑張っています。
こうした次世代企業によるデジタル赤字の縮小にも期待したいと思います。
堤キャスター:
海外への投資だけでなく、日本の経済を回し、私たちの生活に直接的なプラスの影響をもたらすような、国内への投資が求められているように思います。
(「Live News α」2月10日放送分より)