日々の暮らしに欠かせない道路だが、車で走っていると不思議な道路に出くわすことがある。九州を南北に貫く大動脈の「国道」なのに閑散としている道路や、渋滞必至の交差点に出現した“謎の斜線エリア”の不思議に迫る。

両端が行き止まり…閑散とした国道

多くの鹿児島県民にとって身近な道路の一つ「国道3号」。

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福岡県から熊本県を経由し鹿児島県までを南北に貫く大動脈で、“3号線”と呼ばれ親しまれているが、交通量が多いというイメージが定着している。

しかし、鹿児島県の本土西部・いちき串木野市湊町では3号線の様子が少し違っていた。

いちき串木野市湊町の“3号線”
いちき串木野市湊町の“3号線”

道幅も広く、中央分離帯もしっかりと整備された片側2車線の立派な道路だが、走る車を見かけず、閑散としていた。

地元の人に「これは“3号線”ですよね」と聞くと、「そうみたいですよね」「そのように聞いています」と曖昧な答えが返ってきた。

あまりにも車が通らないため定点観測してみると、30分の間にカメラの前を通ったのはわずか20台で、1分に1台も通過しない計算となった。

道路の両端は行き止まりだった
道路の両端は行き止まりだった

実際に車で走ってみたところ、道路沿いには住宅が立ち並び普通の道路に思えたが、途中で道路が行き止まりとなり、強制的にストップ。ならばと、Uターン可能な場所から来た道を戻って直進すると、逆側も行き止まりだった。

正体は880メートルの「バイパス」

国道を管轄する鹿児島国道事務所に、この道路の不思議を問い合わせたところ、龍博文副所長が「国道3号のバイパスで、『市来バイパス』という道路です」と教えてくれた。

地図で確認すると、確かに3号線の隣を並走するように、両端が切れた道路「市来バイパス」があった。市来バイパスは3号線の渋滞緩和のため、40年以上前に事業に着手し、1995年に開通した。

距離にするとわずか880メートルの市来バイパス。もちろんこれで完成というわけではない。

龍副所長によると、本来の国道3号とつなげて全長3kmの道路となる予定だったという。しかし、バイパスに並行する「南九州西回り自動車道」が1991年に事業化されたことで、バイパスの事業は休止してしまった。

南九州西回り自動車道は、熊本・八代市を起点とし、水俣市、出水市、薩摩川内市を経て鹿児島市に至る全長約142kmの高規格幹線道路だが、現在供用されているのは約73%。この幹線道路の整備が優先され、市来バイパスの工事が止まっているのだ。

地元の人からは「こんな広い道路が必要なの?」という声も聞かれるが、国道事務所によると、今後の方針は南九州西回り自動車道を全線開通させたのちに判断するそうだ。

渋滞スポットに“謎の斜線エリア”

鹿児島市の鹿児島大学法文学部前交差点は、市内屈指の渋滞スポットだ。

“謎の斜線エリア”
“謎の斜線エリア”

この交差点に“謎の斜線エリア”が出現している。歩道を削り、車が入れないようにポールも立てられていて、不思議な光景が広がっている。

道行く人に聞いてみても、「原付の駐車スペースですか?」「謎ですね」と首をかしげるばかりだ。

鹿児島市道路建設課に斜線エリアの目的を訪ねたところ、郡山庄二課長が現地に来て「右折専用レーンを作るための暫定的な工事です」と教えてくれた。

通勤時間帯には右折車を避けるために左側車線に車が集中する
通勤時間帯には右折車を避けるために左側車線に車が集中する

この道路は2車線あるものの、右側車線は「直進と右折の混合レーン」となっていて、右折車が前にいると後続車は直進できないことが多い。このため、直進したい車は右折車を避けるため左側車線を通りがちとなる。特に朝の通勤時間帯では、左側車線だけ長い車列ができてしまうのだ。

こうした渋滞を解消するため、右折レーン設置工事の第一段階として、2023年度にこの斜線エリアが設置された。

右折レーン設置工事の完成予想図
右折レーン設置工事の完成予想図

今後はこの斜線エリアを車道にして道路を広げ、右折レーンを設置するが、完成時期などについて郡山課長は「(できるだけ早い時期に)本格的に着手し、早期の完成に向けて取り組む」と意欲を見せた。

謎の斜線エリアは、ドライバー待望の“右折レーン設置のための準備”だったわけだ。

市来バイパスのように紆余(うよ)曲折の歴史があったり、右折レーン設置で渋滞を解消しようと準備を進める道路があったりと、道路には様々な背景がある。「なぜここにこんな道路が?」「この道路どうにかならないの?」という疑問や不満から、身近な道路に秘められた地域の歴史や未来像が見えてくる。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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