バスの運転手不足に対応するため、鹿児島・南さつま市では12月14日から、自動運転バスの実証実験を始めた。持続可能な地域交通の維持・確保につながるのか、記者も乗車し、乗り心地や市民の声を取材した。
自然に恵まれた人口3万人の街
南さつま市は、日本三大砂丘「吹上浜」や、九州百名山にも選ばれている「金峰山」など、雄大な自然に囲まれた人口約3万人の街だ。鹿児島市に隣接しており、車を利用すれば約60分で行くことができる。

しかし本坊輝雄市長によると、南さつま市はバス運転手の不足に直面していて、「お金を出しても、『ドライバーがいません』」という状況だという。
自動運転バスの実証実験は県内初
このため、南さつま市はNTT西日本、マクニカと連携して、12月14日から自動運転バスの実証実験を始めた。これは県内初の試みだという。

実験を始めて6日目となる19日朝、記者が南さつま市役所のバス乗り場で待っていると、1台のバスが入ってきた。ホワイトの車体にかわいらしいイラスト、これは地元にある鳳凰高校の生徒がデザインしたものだ。定員は9人。記者も市民と一緒に、バスに乗車した。さあ、出発だ。
オペレーションは?操作は?
自動運転バスは時速約20キロで走り、車内にはコントローラーを持ったオペレーターがいるものの、基本的に操作は行わない。NTTビジネスソリューションズの佐々木瞭さんによると、バスは信号機の位置に来ると、青でも赤でも自動で止まる設定にしているという。

しかし佐々木さんは、「青で止まっちゃって後続の車が来ていると追突の危険性があるので、その時には自動走行から、オペレーターによる手動走行に切り替える」と語る。
乗車した市民の感想は?
自動運転バスは、市内の商業施設や病院など5つの停留所をめぐるルートを走る。

1日5往復運行し、運賃は無料だ。この日、乗り込んだ市民に話を聞くと、目的地があるわけではなく、自動運転を体験するためにバスに乗ったという。乗車した感想は、「快適だった」という声もあれば、「不安だった。良くなったら、(自分が)車を運転しなかったら乗ってみたい」と、今後の更なる性能アップに期待する人もいた。
将来は遠隔監視・操作する時代に
自動運転バスが街中を順調に走行する一方、南さつま市役所にある遠隔監視室では、スタッフがバスに搭載されているカメラの映像や走行速度を確認しながら、バスが正常に動いているか監視していた。

システムのモニターには、バスがMANUAL(手動)、AUTO(自動)どちらの方法で走行しているか、市内のどの位置を走っているかなどが表示されていた。

佐々木さんは、「システムが自動で運転する世の中になってくると、人(オペレーター)が乗っていない車を遠隔監視室から監視して操作したりとなっていく」と、それほど遠くない未来の技術を教えてくれた。
持続可能な地域交通を維持するために
バスに乗車するには、専用のアプリから予約が必要だ。

2週間の実証実験について、本坊市長は、「(オペレーターが)それぞれ何台かの車を操作できるレベルまでやっていければと思うが、道路環境も信号機など色々なものを改善していかないといけないので、まずは第一歩」と、ファーストステップへの挑戦には一定の手応えがあったようだ。

少子高齢化による人手不足や、いわゆる2024年問題によって、地域交通の維持や交通機関におけるドライバー不足など社会課題が深刻化している。持続可能な地域交通を維持するためには、自動運転などのモビリティ技術の活用も大きな力となるに違いない。
自動運転バスによって地域交通を支える。
南さつま市の取り組みはまだ始まったばかりだ。
(鹿児島テレビ)