2024年の1人あたりの給与は4年連続で増加したが、物価上昇の影響で、実質賃金は3年連続の減少となった。
厚労省は「実質賃金がプラスになるには、消費者物価指数の伸びが落ち着くことが重要」としているが、専門家は、民間企業の努力がある一方で、物価高と社会保険料増加に対する政府の対応不足を指摘する。

物価高に賃上げ追いつかず厚労省は物価安定を注視

2024年の1人あたりの給与は4年連続増加した一方で、物価の上昇を反映した実質賃金は減少し、物価の上昇に賃上げが追いついていない現状が浮き彫りになっている。

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毎月勤労統計調査の速報値では、2024年の1年間の働く人1人あたりの現金給与総額は、前の年より2.9%増えて34万8182円となり、4年連続で増加した。

一方、物価の変動を反映した実質賃金は、前の年より0.2%減り3年連続のマイナスとなった。
マイナス幅は縮小しているものの、物価の上昇に賃上げが追いついていない現状が浮き彫りになっている。

厚生労働省は、「今後、実質賃金がプラスになるには、消費者物価指数の伸びが落ち着くことが重要で動向を注視したい」としている。

民間企業は過去30年で最高水準の賃上げ実現

「Live News α」では、働き方に関する研究・調査を行っている、オルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
ーーせっかくの賃上げも、物価高には追いつかない。石倉さんはどうご覧になりますか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
賃上げというのは、民間と政府で協力して推進しているわけですが、それぞれの成果においては、明暗がはっきり分かれています。

民間企業は、生産性を上げたりして賃上げを行っています。課題とされてきたパート労働者の平均時給も、ここに来て上がってきてるんです。

なので、賃上げ率が過去30年の中でも高い水準になっているということを考えると、民間の賃上げは成果が出ていると言えるんじゃないでしょうか。そうなると問題は、やはり政府ということです。

堤キャスター:
ーー政府のどこに問題があるのでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
名目の給与賃金は過去最高の伸び率になっているのですが、実質賃金は下がっているわけです。

要因として大きいのは、物価高が止まらないということ。そして、社会保険料の増加などで手取りが減っているということです。

この2つに対して手を打つのは政府の仕事であるにもかかわらず、その成果がまったく見えないということです。

政府による構造的な賃上げ促進策の実施が必須

堤キャスター:
ーー額面と手取りには、大きな違いがありますよね?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
今は民間の努力を政府が帳消しにしてしまっているような状態だと思います。その結果、苦しくなっているのは働いている人になっています。

民間の賃上げ努力にも限界がありますから、本当に悪い循環が始まってしまう前に、政府として手を打ってほしいと思います。

堤キャスター:
ーー具体的には、どうすればいいのでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
1つは、やはり賃金が上がったら、それと同じくらいの比率で手取りが増える、使えるお金が増えていくためのマクロ経済政策というのが必要だと思います。

もう1つは、民間が賃金をさらに上げていくことに対してインセンティブが生まれるような政策の導入。

今、民間企業は賃金を上げると負担が増えることになりますから、インセンティブとしては少ないんです。ただそれでも、社会の要請や人手不足に対することを対応するために頑張って上げているというような状態です。

この善意とか努力に頼ることなく、構造的に賃金が上がり続ける仕掛けこそ、政府にやってほしいですし、そのための政策を作るという仕事に正面から向き合ってほしいと思います。

堤キャスター:
物価高に負けない賃上げの先には、景気の回復も見えてくるはずです。
日本という国が取り残されないためにも、何か行動を起こす必要がありそうです。
(「Live News α」2月5日放送分より)

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