東京都の2025年度予算案が確定した。
一般会計は、前年度8兆4350億円を上回る過去最高の9兆1580億円となった。

法人税が増えるなど、都税収入も過去最大の6兆9296億円、特別会計と公営企業会計を加えた全会計は17.8兆円で、スイスの国家予算14.7兆円を上回り、スウェーデンの国家予算20兆円に迫る財政規模となっている。

予算案は、都議会の承認を経て決定されるが、ほぼ修正されずに通過するとみられる。

都政を“爆速”で進める「知事査定」とは

小池都政の予算編成を取材すると、過程にある「知事査定」が、“爆速”で都政を進める原動力と思われた。

知事査定とは、福祉局、建設局など各局から出された予算案を知事が査定することを意味する。

小池都政の知事査定とは
小池都政の知事査定とは
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本来の趣旨はそうなのだが、小池都政の知事査定は少し違う。

例えば、2024年7月の都知事選挙で知事の公約に掲げた、第一子無償化、無痛分娩無料化。

2025年度予算に向けて、福祉局などの各局は、2024年末、財務局に対して予算要求しているのだが、そこには、第一子無償化や無痛分娩無料化が盛り込まれていなかった。

国であれば、その時の首相が推進する施策や与党が公約に掲げた対策を所管する省庁が、必ず予算要求のなかに、新規なり、増額などをして盛り込むのが一般的だ。

知事の公約を予算要求に盛りこまず

しかし都庁では、知事が公約した案件を、昨年末の予算要求には盛り込まなかった。

なぜか?その理由は知事査定のためにわざととっておいたからだ、と関係者は語る。

現場に任せると、補助や助成など事業を実施するための方法や安全性を考えることから始まる。

現場に任せると一般的に半年間ほどの期間を要する(イメージ)
現場に任せると一般的に半年間ほどの期間を要する(イメージ)

区市町村や関係団体の協力も必要なので、一般的に予算要求に盛り込むための準備に、半年間くらいの期間を要するのが普通と言える。

それだと、来年度の予算要求には間に合わない。

だから、準備作業を後回しして、知事査定という形で予算案に盛り込んだのではと関係者は指摘する。

「知事査定」のメリット・デメリットとは

この手法には、メリットとデメリットがある。

メリットは、知事の言う通り、爆速で新しい政策を実行できる。

デメリットは、準備不足によるミスや想定外のトラブルが起きかねないことだ。

「018サポート」では過払い問題も
「018サポート」では過払い問題も

2024年、「018サポート」の過払い問題が明らかになった。

担当する幹部職員が経緯を説明する中で、過払いが発生することは、ある程度実施前から想定していたと述べた。

それよりも、「018サポート」を年度内に確実に支給する事としたと述べ、記者たちを驚かせた。

“過払い”予期もスピード優先…

幹部職員は直接的には言っていないが、爆速で実施するよう小池都知事からの指示だったので、準備不足のため、ある程度過払いが生じるとは思ったがスピードを優先させたと言っているのと同じではないだろうかと感じた。

第一子無償化や無痛分娩無料化について、子育て世帯や出産を経験した女性などからは賞賛する声があがっている。

新年度から実施される状況を注目していきたい。
【取材・執筆=フジテレビ社会部 大塚隆広】

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。