漁師にとって“厄介者”となっている「サメ」に商品価値を見出す試みが、宮崎県川南町で進められている。町や漁協、商工会など5団体が締結した連携協定に基づき、未利用魚を美味しくいただくプロジェクトが始動。町ではサメをブランド魚として確立し、広く流通させることで、漁師の収入向上をめざしている。
未利用魚の活用をめざして

釣れても商品価値がなく、海へ戻していた魚「未利用魚」の活用をめざし、宮崎県川南町や地元の漁協、商工会など、5つの団体が「水産資源を活用した新たな価値創造に関する連携協定」を締結した。

川南町の未利用魚とは…サメ! 中にはユニークな頭をもつシュモクザメ・別名ハンマーヘッドシャークという個性的なサメも。

主にマグロを水揚げしている川南町漁協の俵伸二組合長(漁師歴50年!)によると、ここ4、5年で、魚と一緒にシュモクザメなどのサメが年間を通して仕掛けにかかるようになったそうだ。
500kgをとるのに…わずか1日

川南町漁業協同組合 俵伸二組合長:
漁師に「サメをとって来て!」と言えば、「1トンやそこらはすぐ釣るよ」って。500kgくらい仲買さんが買ってくれるということで、とってきてと漁師に言ったら1日で終わった。量が取れる。
なぜサメは厄介者なのか?

一方で、サメはアンモニア臭が強く、加工に手間がかかる上に卸売価格が非常に安く、収入にはつながらないという。

キハダマグロが1kg1500円〜2000円で取引されるのに対し…サメはなんと1kg50円にもならない…。サメが仕掛けにかかっても収入につながらないため、漁師は大量のサメを海へ戻しているのが現状だ。さらに厄介なのが…

川南町漁業協同組合 俵伸二組合長:
サメが来て、魚を食べるついでに縄も切断するから、縄がなくなったりする。だから大赤字になる。サメが多いから結構、魚が食べられて、商売・仕事にならない。
動き出したプロジェクト

漁師が頭を抱える“厄介者”のサメに利用価値を見出すべく、連携協定によって動き出したプロジェクト。加工や調理に精通した2人がブランディングアドバイザーに就任した。

1人は、オリジナルブランド豚を生産・加工・販売する、ゲシュマックの山道洋平社長。主にサメの臭み対策や加工の省力化をサポートする。
ゲシュマック 山道洋平社長:
業種は違うんですが、弊社の今までのノウハウをアウトプットできればと思っている。
そしてもう一人が、川南漁港のすぐ近くで生まれ育ち、父親が漁師というイタリアンレストランのシェフ、俵哲也さん。昔ながらの「漁師めし」をヒントにサメの活用策を考えたいと話す。

イタリアン食堂Tawara 俵哲也さん:
フカ(サメ)なんかは、干物で食べられている方もいらっしゃるし、普通にフライにして食べられる方もいらっしゃる。まったく新しいものではなく、この料理にした時にちょっとここが問題なんだよな、というところに自分たちがコメントできればなと思っている。
サメを町のブランド魚として確立させ、商品価値を高める。そして、誰もが食べられる形で広く流通させる。心強い2人のアドバイザーの協力を得て、川南町は、この試みを漁師の所得向上につなげたいとしている。
おそるおそる…いざ試食してみると…?

サメの干物。あっさりとしていておいしい。焼酎に合う!教えてもらっていなければ、サメとは思わないかもしれない。

サメの湯がき。あっさりした白身魚で、何のクセもない。ほどよく歯ごたえがあり、高級白身魚のようで、どんなお料理にも合いそうだ。
食べてみると、実はおいしかったサメ。川南町では、2026年度中のブランド化をめざしている。
(テレビ宮崎)