アメリカの株式市場で27日、ハイテク株が大きく売られた要因となったのは、中国の新興企業の発表だった。立石修フジテレビ報道局・解説委員室長がその背景を解説する。

「エヌビディア」株価が前週末比約17%下落の背景に「ディープシーク」

27日のニューヨーク株式市場では、ハイテク株が売られ、半導体大手・エヌビディアの株価が前の週末と比べて17%近く下落した。

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現地メディアによると、時価総額約6000億ドル、92兆円近くが失われた。

その引き金となったのは、中国のAI企業「ディープシーク」が先週、低コストの生成AI(人工知能)「R1」を開発したとの発表で、これまで好調だったアメリカのAI産業への打撃になると警戒感が広がった。

この発表についてトランプ大統領は演説で、「競争に勝つことに全力を注ぐ必要があるという警鐘になる」と述べた。

中国を念頭に国内のAI産業を鼓舞する狙いがあったとみられる。

起業したのはヘッジファンドも運営している技術者

ここから立石修フジテレビ報道局・解説委員室長が解説する。

青井実キャスター:
92兆円の暴落ということで「ディープ シーク ショック」とも言われておりますが、相当インパクトがあるようですね?

立石修フジテレビ報道局・解説委員室長:
これまでAIの分野ではChat GPTなどアメリカ企業が独走状態だったが、そこに中国のDeepSeekが立ちはだかった形です。

先週、最新型のAIをリリースして、アプリのダウンロード数も米国内で、Chat GPTを抜きトップという人気ぶりなんです。アメリカメディアによると性能もOpen AIに匹敵、もしくは凌駕する部分もあると言われています。

青井キャスター:
DeepSeekは使ったことないんですよ。

立石フジテレビ報道局・解説委員室長:
早速試したくなりますよね。
実はいまサイバー攻撃を受けているとのことで、日本では登録ができず、試していないが、Chat GPTに画面上は似ている。今は英語と中国語バージョンがあるのみで日本語はない。

電気自動車がそうだったように、AIでも後発の中国がアメリカに追いつき追い越そうとしている。

青井キャスター:
性能が良いだけではなく、コストも注目されている。

立石フジテレビ報道局・解説委員室長:
そこもポイントです。
アメリカのAIに比べて圧倒的に開発コストが低い。CNNによると、Deep Seekは開発コストが560万ドル(日本円で約8.7億円)ということで、アメリカ企業の数億ドルから数十億ドルと比べると遙かに低コスト。そのためアメリカ企業を揺るがすのではという見方が出てエヌビディアの株価が大幅に下落した、という状況です。

青井キャスター:
AIでも中国がいよいよ存在感を出してきた、ということですね。

立石フジテレビ報道局・解説委員室長:
「DeepSeek」という会社は2年前に作られた新しい会社、いわゆるスタートアップ。起業したのはヘッジファンドも運営している技術者で資金を豊富に投入できるようです。

中国政府のバックアップもあり、「新世代人工知能開発計画」を打ち出し、2030年までに世界をリードするAI先進国になる、という目標を掲げていて、「百度」や「アリババ」もAIを開発している。ただ、共産党政権の公式見解に合わない内容は検索できないなどAIへの「警戒感」が伺われる。

青井キャスター:
米中のAIの覇権争い、本格化してきたようですね、山口さん。

山口真由SPキャスター:
米中競争という視点もあるが、ハイエンドと低コストで電気自動車のように共存する可能性も出てきていて、未来はなかなか見通せないのかなと思います。

そんななか、AI戦力に注力するトランプ新大統領がどう出てくるかも注目される。
(「イット!」 1月28日放送)

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