2024年12月に開催された高校バスケットボールの全国大会「ウインターカップ」で、鳥取城北高校が山陰勢で初めて準優勝を果たした。
高校バスケ界ではこれまで“無風”の鳥取県のチームが、頂点まであと一歩に迫る快挙だった。
いまや全国のライバルからも一目置かれる存在になった鳥取城北高校の躍進の原動力を探った。

前年覇者も撃破 頂点へあと一歩

2024年12月28日、東京体育館。全国高校バスケットボール選手権、「ウインターカップ」の実況を担当したアナウンサーは「試合終了!鳥取城北の快進撃は遂に決勝の舞台へ!」と絶叫した。
1回戦から強豪校を次々と撃破してきた鳥取城北が、準決勝で前年覇者の福岡第一を破り、決勝進出を決めた瞬間だ。
鳥取城北はウインターカップ6回目の出場で、ついに頂点まであと一歩に迫った。

<鳥取城北の戦績>
・1回戦  87-47黒沢尻工業(岩手)
・2回戦  84-65國學院大學久我山(東京)
・3回戦  85-69京都精華学園 (京都)
・準々決勝  85-45延岡学園(宮崎)
・準決勝   81-58福岡第一(福岡)

決勝で涙も鳥取県勢初の快挙

決勝戦の相手は3年ぶり4回目の優勝を狙う強豪、福岡大学附属大濠。インターハイ準々決勝で接戦の末敗れた因縁の相手だ。
ここまで快進撃を見せた鳥取城北だったが、一時リードを奪ったものの、主導権をなかなか奪えない苦しい展開の末、57-77で敗れた。

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しかし、準優勝は鳥取県勢として、高校3大大会(インターハイ、国スポ、ウインターカップ)を通じて初の快挙だ。

「堅守速攻」 切り替えの早いバスケで快進撃

強豪を次々撃破した鳥取城北のバスケスタイルは「堅守速攻」。堅い守りからボールを奪い、速攻。一気に攻めに転じ、得点につなげる戦術だ。相手の守備が整う前に攻撃を仕掛ける切り替えの速さを身上にしている。

新チームの主将・新美鯉星選手(2年)は、「堅く守って、速攻を出すというチームなので、それがウインターカップでは、しっかり最初から最後までできた」と大会を振り返った。

“無名校”時代を知るOB監督

鳥取城北を率いるのは、河上貴博監督(36)。就任9年目、鳥取城北のOBだ。

「県大会の1回戦を勝てるかどうかみたいなレベル。本気で全国を目指すような感じではなかった」と高校時代を振り返るが、本気でバスケに打ち込みたいと関東の強豪・拓殖大学に進学。

同じ山陰、島根・松江市出身で、Bリーグ・群馬クレインサンダースで活躍する藤井祐眞選手とチームメートとしてプレーした。

「鳥取のバスケを強くしたい」

選手として出場機会は多くなかったそうだが、コミュニケーション能力の高さを買われ、キャプテンに就任。インカレベスト4入りに貢献した。
充実した大学でのバスケ生活だったが、そこで地元・鳥取県で指導者になりたいという思いを募らせたという。

チームメートから「鳥取ってバスケット弱いでしょ」といじられ、「絶対に鳥取を強くしたいという思いを持って、できれば指導者として鳥取に帰れたら」と考え、2016年、母校の監督に就任した。

県内出身選手で全国の舞台を目指す

「鳥取を強くしたい」という強い思いを胸に、指導者として帰ってきた母校だったが、高校時代も使っていた体育館は老朽化が進み、雨漏りすることも。しかも、複数の部活動で共用するため、バスケ部が使えるのは週に数回ほど。決して恵まれた練習環境ではなかったそうだ。

それでも、河上監督は「まずは絶対に鳥取県内の子たちで優勝したかった」と、県内各地から集めた選手たちをメインにチームのレベルアップに取り組んだ。

その取り組みが実を結んだのが、2019年のウインターカップ予選だ。初優勝を果たし、初めて本戦への切符をつかむことができた。

選手・監督が一丸「鳥取のバスケを強くしたい」

この躍進がきっかけで、学校も支援に動いた。あの体育館が改修され、男子バスケ部専用のアリーナとして毎日使えるようになった。
練習環境が改善されたことで、県外の選手も進学してくるようになった。

奈良県から進学した豊村豪仁選手(2年)は、「やっぱり一番は環境が良いということ。体育館を専用で使わせてもらっているので、毎日練習できるし、毎朝シューティングできる」と、練習環境の良さを鳥取城北を選んだ理由に挙げた。
鳥取出身の選手と県外出身の選手が切磋琢磨(せっさたくま)し、高みを目指す環境が整った。

快進撃を見せたチームで主将を務めた蓑原歩選手(3年)が「中学のころから鳥取を強くしたいという気持ちがすごくあった。自分がそういう気持ちを持ってやらないと何も変わらないと思って、鳥取県一強い鳥取城北に来て、全国で戦うという目標を持ってやってきました」と振り返るように、「鳥取のバスケを強くしたい」という、選手、監督の思いが、快進撃の原動力にもなっていた。

“バスケ弱小県”からの挑戦は第2章へ

河上監督は、「憧れの舞台で名だたるチームを打ち破っていくというのは、もう…なんとも言えない気持ちでしたね」とウインターカップの戦いを振り返り、「めちゃくちゃ誇らしかったし、出来すぎ…みたいな感じだった」と続けた。
そして、全国の頂が見えた今、次に見据えるのは「もう日本一しかないですよね」と決意を示した。

快進撃の余韻が残る中、1、2年生による新チームも始動。2025年、“バスケ弱小県”からの挑戦は、第2章の幕が上がる。

(TSKさんいん中央テレビ)

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