秋田県内では年末年始、市街地などまさに私たちの生活圏を中心にクマの目撃が相次いだ。本来なら冬眠しているとされる時期に、なぜクマの出没が相次いでいるのか。専門家に見解を聞いた。

年末年始にクマの目撃相次ぐ

2024年12月28日に美郷町金沢で、雪が降り積もった田んぼの上を歩くクマの姿が撮影された。撮影した人は、「1メートル以上、かなり大きかった。最初は大きい犬かなと思った。シカやタヌキならよく見るがクマは初めてだった」と話した。

田んぼの上を歩くクマ(秋田・美郷町)
田んぼの上を歩くクマ(秋田・美郷町)
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田んぼと近くの住宅との距離は約50メートル。「あまりにも近くで見たので怖くてびっくり。痩せていなくて丈夫だった。まんまるとしていて、今時期に見るクマなのかなというくらい餌とか食べているのだと思う。猟友会の人たちにも動画を見てもらったが、かなり大きいと言っていた」と、撮影した人は非常に驚いた様子だった。

同じ日、近くでは別の目撃情報も寄せられた。車で通りかかった人が、雪をかき分けながら歩くクマを捉えた。クマは周辺に約30分とどまった後、林に立ち去ったという。

クマの出没はこれだけでは終わらなかった。2024年12月末から2025年の年明けにかけ、県内各地でクマの目撃が相次いだ。秋田県のクマダスによると、12月22日から1月5日までのクマの目撃件数は68件。前年の同じ時期は5件だった。

住民「いくらなんでもこの辺では…」

2023年はクマによる人身被害が70件と過去最悪となったが、冬場はほとんど目撃情報はなかった。昨冬と比較すると今冬の異常さが浮かび上がる。また特徴的なのは、クマが捕獲された後にも、同じ地域で何度もクマが目撃されることだ。

秋田市にある自動車整備工場の倉庫にクマが侵入
秋田市にある自動車整備工場の倉庫にクマが侵入

大きな話題になったのは2024年12月26日、秋田市仁井田での騒動。国道13号線沿いの自動車整備工場の倉庫にクマが入り込み、約1日かけて体長1.2メートルの雌の成獣が捕獲された。捕獲されたとはいえ、付近の住民にとっては衝撃が走る出来事だったようだ。

現場周辺を散歩していた人は、「近くの幼稚園に子どもを通わせている親から、『秋田南高校の周辺にクマがいるので注意するように、というメールが来た』という話を聞いた。まさかと思った。雄物川の川下の方に出没するのは理解できるが、いくらなんでもこの辺では…」と驚きを隠せない様子だった。

クマとみられる動物の足跡
クマとみられる動物の足跡

その不安が的中するようなことが続いた。大みそか、秋田市茨島7丁目でまたもクマが目撃された。クマがとどまった仁井田の倉庫からわずか2kmの距離だ。1月6日に周辺を取材してみると、動物の足跡が見つかった。クマの生態を研究する秋田県立大学の星崎和彦教授に確認してもらったところ、教授は「映像を見た限り、しっかりした爪があるのでクマだと思う」と話した。

春先により多くのクマ出没の可能性

冬眠しているはずの時期に、なぜクマが私たちの生活圏に現れるのだろうか。星崎教授は、「おそらくおなかが減って出没しているのではない。寝るところに困っているのではないか。大きな体が入るだけのしっかりした岩の隙間とか、寝る場所を探して出没しているということが起こりうる」と話し、「クマが市街地で冬眠している可能性がある」と指摘する。

また、星崎教授は「2~3月になると冬眠から目覚めたクマが出没する。街中への出没もあると心づもりが必要」と注意を呼びかける。「春先には今よりも多くのクマが出没する可能性がある」という。

本来なら姿を見ることがないはずの冬場の出没など、これまでの常識は通用しなくなった。いつでも、どこでも、誰でもクマに遭遇する恐れがあることを心にとめて生活しなければならない。

(秋田テレビ)

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