今、インターネット上に拡散されている、ある動画が物議を醸している。
薬局の棚に置かれた「かんせ」という商品を女性がカゴに入れると、レジへ進んで行った。さらに、渋谷のスクランブル交差点にある大型ビジョンの映像には、商品の広告が映っている。しかし、実はこの広告はフェイク(偽物)だ。
今回のテーマは「日本での販売を装うフェイク広告」だ。
問題の動画に「明らかな画像生成」
問題の動画を見てみると、関節痛などの薬が置かれている薬局の棚に置いてあるのは「かんせ」と書かれた商品だ。商品を手に取った女性は、買い物カゴの風邪薬や頭痛薬などと一緒にレジへと進んで行った。

レジの店員の胸元には、日本大手のドラッグストア「スギ薬局」の「スギグループ」と書かれている。

一方、ビックカメラの店内に貼られた広告にはアルファベットで「Kanse-tsu」と書かれ、値段が書かれている。
この「かんせ」と書かれた商品をみたことがあるか、街の皆さんに聞いてみた。
回答者A:
見たことないです。
回答者B:
ないです。かんせげ?かんせした?なにこれ。
スギグループはイット!の取材に対し、「当該の商品は販売していない」と答えている。
一体どういうことなのか。ITジャーナリストの三上洋さんは、これらは日本で販売しているように見せる「フェイク広告」だと断言する。

ITジャーナリスト・三上洋さん:
巧妙にAIの技術や偽商品を現場に持ち込んで、さも売っているように見せかけている、だますための動画だと思います。
なぜ、そう言い切れるのだろうか。

ITジャーナリスト・三上洋さん:
便秘薬の赤いやつは(棚の仕切りから文字が)透けているんですよ。でも「かんせ」の棚は半透明の部分が全然透けていない。これは明らかな画像生成、もしくは画像加工のミスだと思います。
不自然なところは、販売元のホームページでも確認できた。

韓国語の下に書かれていたのは「ついにかんせつが韓国の公式モールを立ち上げましたー!」という文だ。ところがよく見ると、ホームページに掲載されている男性の指が1本なかった。
商品名の表記もパッケージと一致せず。しかし、商品レビューは星5の最高評価が目立ち、「肩や膝の関節痛に効いた」といったコメントがいくつも書き込まれていた。
日本製の品物は中国や韓国で信頼度が高い
青井キャスター:
こういった商品、海外では多いんですかね。
SPキャスター パトリック・ハーランさん:
僕が思い出すのは、昔アメリカのテレビショッピングで見たやつです。名前も日本っぽいし、この商品は日本で大人気ですと言った売り文句で売ってたんだけど、日本で見たことないし、調べてみたらアメリカ製だったんです。だから現実は変わったんですけど、手口はよく似てるんですね。
青井キャスター:
専門家の三上さんに聞いてきました。このようなフェイク広告がなぜ出回ってしまうのでしょうか。

ITジャーナリスト・三上洋さん:
日本製の品物は中国や韓国で信頼度が高くとても人気です。例えば薬、化粧品、サプリメントなどで日本製、日本で人気というブランドで売ることがよく行われています。
日本は高齢者大国なので、そこで評価されている関節に効く薬と称して、中国や韓国の高齢者に売ろうということです。
青井キャスター:
街の人にも聞いてみました。日本製のものが海外で人気と聞くと、買いたくなりますか?
19歳:
ちょうど韓国のものとか見たりしているので、検討はします。
20代:
遠いところで流行っていることに共感というか。人気というのが身近ではないので。
20代:
それでだまされる人もいるかもしれない。

厚生労働省も一般論としてこのようなフェイク広告に対し、「他の薬の中に並んでいるかのように見せていて医薬品と認識をさせてしまうのであれば、間違いなく不適切。健康被害があってもおかしくないため、怪しいものには手を出さないでほしい」と注意を促している。
商品を販売している会社に問い合わせたが、返答はなかった。スギグループは、YouTubeやインスタグラムなどで出回っているフェイク広告に対し、差し止めを要求したという。
専門家は今後、「海外で人気!」などの実態のないフェイク広告が増えるかもしれないと指摘している。
(「イット!」1月13日放送より)