「台風10号」が日本に接近中
2020年も台風が発生している。5日にも特別警報級に発達することが想定される「台風10号」が日本の南の海上を北上中で、週末には九州地方などに接近する恐れもあるという。
こうした状況もあって、自宅の台風対策をする人もいると思うが、そのときには用心してほしいことがある。それが、換気扇の給気口など、空気の通り道をテープでふさぐという行為だ。
2019年10月に一度取り上げているが、再度取材して、改めて注意点を振り返りたい。
台風対策としてふさぐ人もいる
2019年10月に「台風19号」が日本列島を襲ったときには、非常に強い勢力だったため、雨風が部屋に流入するのを防ごうと、換気扇の給気口や排気口を養生テープなどでふさぐ行為がみられた。

給気口は壁面に取り付けられたもので、換気扇(換気システム)が作動したとき、外気を室内に取り込むものだ。確かに風の強い日は、換気扇からは空気を感じられるし、ほこりが室内に入ることもあるが、この行動は台風対策となるのだろうか。
レンジフードの製造メーカー「富士工業」に聞いたところ、雨風などは防げるが、ふさぐときに注意しなければならないこともあるという。
ほこりや雨風を防ぐ効果はある
――換気扇の給気口をテープなどでふさぐのは、台風対策となる?
効果はあると思います。自宅の換気扇としてよくみる、ファンに数枚の羽根を持つ「プロペラファン」やキッチン用換気扇の「レンジフード」で考えてみましょう。
プロペラファンは壁面に取り付けられ、室内と屋外を直接つなげています。テープなどを貼ると空気の通り道をふさぐことになるので、ほこりや雨風の侵入を防ぐ効果はあると思います。
また、レンジフードの給気口は室内に外気を取り入れるための空気の通り道ですので、こちらもテープなどでふさぐことで、ほこりや雨風の侵入を防ぐ効果はあると考えられます。

――排気側の出口(排気口)はふさがなくても大丈夫なの?
レンジフードの場合は、機器から排気口までダクトが配管されていて、レンジフード側の配管の根元には「シャッター」と呼ばれる、外気の流入を防ぐ装置が取り付けられています。これらの構造を考えると、排気口はテープなどでふさぐ必要はないと考えられます。
プロペラファンの場合は、壁を開けた状態で設置されていることが多いです。出口側からふさぐこともできますが、室内からふさいだ時点で雨風などを防ぐ効果はあると思います。

換気扇の給気口をふさぐことで、ほこりや雨風を防ぐ効果はあるとのことだ。だが実際にふさぐときは、注意しなければ思わぬ危険を招く可能性もあるという。
ふさぐことで一酸化炭素中毒の危険性も
――換気扇などをふさぐ場合、注意点などはある?
室内全ての換気扇の給気口をふさぐことはおすすめしません。今は隙間がない「高気密住宅」が増えています。冷暖房の効きやすさや防音性などの利点はありますが、隙間がないゆえに空気がこもりやすいです。
意識的に換気しなければ、建材から発生するホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物や、火を用いる機器の不完全燃焼により発生する、一酸化炭素などの有害物質を屋外に排出できなくなります。万が一、不完全燃焼が起きたら、一酸化中毒になる恐れもあるでしょう。

――それでは、どんなことに気を付ければ良い?
部屋全体の換気を確保することが大切です。全ての給気口をふさぐと空気がこもるので、ふさぐならテープに少し隙間を空けるなどして、空気の通り道を作るべきでしょう。
安全面や周囲の迷惑にならないことを考えるべき
――戸建てと集合住宅で、換気扇をふさぐ効果に違いはある?
基本的に変わりはないと思われます。ただ、高層の集合住宅の場合は換気扇の給気口も高い場所にあります。高所での作業は危険性がありますし、ふさいだ物体が剥がれて落下する可能性もあるので、換気扇の内側をふさぐことを考えるべきでしょう。安全面や周囲の迷惑にならないことを考えることをお勧めします。
――このほか、台風が来る前にできることはある?
給気口にフィルターがある場合は、掃除しておいても良いでしょう。

換気扇の給気口をテープでふさぐことは、雨風の対策に一定の効果はあるが、全ての空気の通り道をふさいでしまうと、一酸化炭素中毒の危険性もあるとのことだった。
台風対策として行ったことで、思わぬ状況を招かないように、換気扇の給気口をふさぐときは、空気の通り道を確保すること、火器類の使用に注意することを心がけてほしい。
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