1月5日に開幕する春高バレー、長崎の女子代表は初出場の西彼杵高校だ。九州文化学園から転任した名将・井上監督を慕い、常勝校から転校したメンバーを擁するチームは、さらに固い絆で日本一を目指す。
諦めない全員バレー
西彼杵高校女子バレーボール部は、諦めない気持ちを押し出した「レシーブ」と、選手全員が打てる「力強いスパイク」が武器だ。

11月の長崎県大会決勝では、新チーム結成直後の新人戦で負けた聖和女子と対戦した。
双子の3年生姉妹・佐藤侑音、佐藤佳音の攻撃を軸に、セッター平川のフェイントやミドルブロッカー林のスパイクなど、様々な攻撃パターンを織り交ぜた「全員バレー」で長崎の頂点に立った。

平川結香主将は「クラスの人からも『おめでとう』『頑張ってね』と言ってもらえた。たくさんの人が応援してくれたり見てくれていたのがうれしかった。自分たちのバレーをして全国大会で勝つ姿を見せたい」と話す。
名将とともに復活させた「西彼杵高校女子バレー部」
西彼杵高校は西海市大瀬戸町にある全校生徒94人の学校だ。

過疎化で生徒数が減る中、バレー部も部員減少のため休部状態だったが、2023年に九州文化学園の元監督・井上博明さんが西海市の誘いを受けて監督に就任。バレー部は5年ぶりに復活した。

井上監督は九文を全国大会で15回の優勝に導いた名将だ。現在の3年生9人は、井上監督の教えを求め、九文から西彼杵高校に転校してきた。

しかし転校から半年間は高体連主催の大会に出られないルールがあり、悔しい思いをした時期もあった。ようやく転校したメンバーが試合に出られるようになってからは勝利を積み重ね、2024年の夏のインターハイではベスト8。長崎県代表として単独チームで戦った秋の国スポは準々決勝進出、そして初めての春高の切符を手に入れた。

井上博明監督は「ありえない転校をさせてもらって春高全国大会に初出場となった。今まで高校スポーツの歴史上、絶対にありえないこと。そういう意味では、初出場だけど伝統校以上の思いを持って、バレーボールや高校生活ができていると思う」と話す。
地域も巻き込む結束力
バレー部復活からわずか1年で全国大会出場を決めた西彼杵高校。日頃から練習には地元の人たちが差し入れを持って応援に駆け付けてくれる。

自身や子供が卒業生という人もいて「練習の姿を見られるだけでも私たちは幸せ。この地域でいままでこの体育館が使われていなかったから、なおうれしい」とバレー部の活躍に喜びもひとしおだ。

チームは声を掛け合い、結束を強めてきた。失点などミスがあれば、監督やコーチの指示を仰ぐ前に、まずチームメイトで話し合う。学年を超えて意見を言い合える関係性は、寮生活を通して築かれた。

西彼杵の選手は全員、寮で暮らしている。掃除や食事の配膳などの役割分担は自分たちで決めている。この日の夕食はお好み焼き。部員全員が手分けして、手際よく作った。厳しい練習を離れて、寮では高校生らしい楽しい時間が流れる。

生活を共にすることで生まれたコミュニケーション力は、お互いを厳しくも刺激しあい、選手個人の責任感や技術を伸ばすことにもつながった。

3年生の佐藤佳音選手は夏のインターハイで優秀選手賞を受賞。「ブロックアウトでもいいし 空いてたら打ち込んだり フェイントで見分けたり 大事な一本を決めたい」と意気込みを語る。

2年生の田中心選手は下級生ながら信頼の厚いエースに成長した。
平川結香主将は「大勢応援してくれる人たちの中でバレーに集中できた3年間だった。技術はみんな上手くなってきている。あとは気持ちの問題」と話す。

名将を追った転校という特別な経験を経て、より固い絆で結ばれた西彼杵高校の選手たちは、抜群のチームワークと技術で日本一を目指す。
初戦は1月5日午前10時半から、秋田県代表の秋田令和との対戦だ。
(テレビ長崎)