自民・公明・国民民主は11日、「年収103万円の壁」ついて178万円までの引き上げを目指し、2025年開始で合意した。自民の森山幹事長は「1年でやれるわけではない」と話し、段階的に引き上げる考えを示す一方で、国民民主の榛葉幹事長は「178万円にこだわるか?」と聞かれ「もちろんです」と思惑の相違があらわになっている。

引き上げ合意も議論が続く…思惑の違い露わに

自民党、公明党、国民民主党は11日、「103万円」の年収の壁を「178万円を目指して2025年から引き上げる」ことで合意した。

この記事の画像(11枚)

働く学生や、パートの働き方は2025年からどう変わるのか。

青井実キャスター:
「2025年から引き上げる」ということは、決まったんですね。どのようにして自民党、公明党、国民民主党は合意したのでしょうか?

政治部デスク・西垣壮一郎:
これまでは、税金の政策を決める税調会長を決め、協議が続いていました。石破政権は少数与党のため、2024年度の補正予算を12日に、衆議院で可決させる必要があったために「政治判断」をする必要に迫られました。11日は、レベルを上げて「幹事長会談」を開いて、とにかく「2025年から」という国民民主党の要求を飲んだ形の決着としました。

宮司愛海キャスター:
気になるのが、“目指して”2025年から引き上げるという点です。これは178万円になるのか、それともその途中でどこかで妥協するのか、どちらでしょうか。

政治部デスク・西垣壮一郎:
早くも自民と国民民主の思惑の違いが、露わになっているんです。自民の森山幹事長は「1年でやれるわけではない」と言って、2025年は178万円ではなく、段階的に引き上げる考えです。一方で、国民民主の榛葉幹事長は「178万円にこだわるか?」と聞かれ「もちろんです」と言って、早くも思惑の違いが露わになっています。

青井キャスター:
どこで折り合いをつけていくかということかもしれませんが、どういう引き上げ額になっていくんでしょうか。

政治部デスク・西垣壮一郎:
既に12日から与党と国民民主の税調会長による交渉が始まっていて、交渉次第となります。壁の引き上げ額の基準となるのが、130万円と150万円という金額です。これは「特定扶養控除」といって、働く学生の年収が一定額以上になると 親などの扶養対象から外れて、親の所得税が増えます。

今の制度では、パートで働く人の年収の壁と同じく103万円が上限になっています。自民党と公明党は、これを130万円に引き上げることも検討しています、一方で国民民主は150万円まで広げる案です。「年収の壁」と「特定扶養控除」が同じ金額の方が分かりやすいので、103万円の壁の引き上げの目処として、130万円や150万円程度が考えられます。

青井キャスター:
130万と150万、どっちになるんですか?

政治部デスク・西垣壮一郎:
これは自民党の中では、国民民主党に配慮しなくてはという声もあって、150万円かなというような情勢が今ちょっと見られてますね。

宮司キャスター:
結局どこに落ち着くのか、ずっとこの議論やってますけれど、まだ見えてないですね。

青井キャスター:
では、どこが引き上げるにあたって、課題になってくるのか見ていきたいと思います。

木村拓也キャスター:
これまでもお伝えしている通り、もっと立体的に見なければいけないというところで、マイナス7.8兆円とも言われている税収の減少が課題となります。地方税をどうしていくかというのもそうですし、壁でいうと106万円とか130万円、扶養控除だけではなくて、社会保障の壁との整合性もどうしていくか、党内の調整が必要になってきます。この辺りが壁になってくるかと思います。

宮沢税調会長「釈然としない感じは正直ある」

青井キャスター:
その党内の調整ですが、自民党内の意見はまとまるんですか?

政治部デスク・西垣壮一郎:
11日に自民党の宮沢税調会長は「釈然としない感じは正直ある」と話していて、幹事長の政治判断のやり方に不満もあるようです。ただし、税金が決まらないと、集まるお金が決まらず、2025年の予算が決まらないので、課題があっても必ず意見をまとめていくことになります。

青井キャスター:
「釈然としない」ってことは、ちょっと飲み過ぎなんじゃないかというところも、もしかしたらあるのかもしれないですね。

政治部デスク・西垣壮一郎:
税金が足りないのに、そこの解決は答えがはっきり出ていないのに決め事だけするのは、釈然としないということですね。

青井キャスター:
引き上げ額は、いつ決まるんですか?

政治部デスク・西垣壮一郎:
2025年の予算の方針を決める期限から考えると、来週半ばまでには引き上げ額が決まる見通しです。

SPキャスターパックン:
締め切りがあるから、つなぎの案を早く可決していただきたいですが、経済の形態も人口の構成も違った時代の名残で、複雑で分かりづらい制度なので、本当はゼロから設計し直して、今の日本に合ったものに見直していただきたいです。

少なくとも段階的に引き上げるのではなくて、物価上昇に連動した一回決めたものが、徐々に毎年少しずつ壁が上がっていくようにしないと、また数年後にこの議論になってしまうんですよね。

青井キャスター:
国民民主党の意見を色々聞いていく自民党は、やはり少数与党として、今後いろんな党の意見を聞いていかざるを得ない状況になっていくわけですね。

政治部デスク・西垣壮一郎:
実は、自民党も国民民主党のご機嫌伺いばかりではないんです。このあと可決する補正予算では、立憲民主党の修正を受け入れたり、維新にも協議を呼びかけたりしており、国民民主党に対しては、あなただけじゃないんですよと牽制する姿勢も見せています。
(「イット!」12月12日放送より)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(11枚)