事件が起きたのは2020年8月。福岡市中央区の大型商業施設で当時15歳の少年が商業施設を訪れていた女性(当時21)を包丁で十数回刺し、刺殺したのだ。

事件を巡り、女性の遺族が、少年と少年の母親に損害賠償を求めている民事裁判の第1回口頭弁論が12月9日、福岡地裁で開かれた。
懲役10年以上15年以下の不定期刑
事件の裁判員裁判は、2022年7月から始まった。

公判で、少年は女性について「申し訳ない」と述べる場面もあったものの、謝罪の意思を問われた際には「謝罪というのが、どういうのか分からないので、特にない」と述べるなど、一貫性のない供述を繰り返した。

福岡地裁は「非常に凶悪な犯行で、人格的な未熟さなどを理由に保護処分を受けることは社会的に許容し難い」と指摘して、少年に懲役10年以上15年以下の不定期刑を言い渡し、判決は確定した。

反省の態度を見せない少年。女性の母親と兄は2023年3月、少年の犯罪行為とその母親の監督義務違反を理由に、総額約7820万円の損害賠償を求める訴えを起こしたのだ。
「思い出さない日はありません」
12月9日の第1回口頭弁論では、女性の母親が証言台に立ち、その苦しい胸のうちを語った。

「刑事裁判が終わって事件に区切りは?」という問いかけに対して女性の母親は「そんなわけありません。毎日毎日、思い出さない日はありません。事件当時の光景が浮かんできてよみがえってきて…。(少年の母親が)なぜ少年に関わってこなかったのか疑問しかありませんでした。母が、一番近い存在じゃないですか」と証言した。
一方、少年側の弁護士は「少年が長期間児童養護施設にいたことから母親に監督義務違反はない」と主張した。
「なぜ、そんなことを言うのか…」
また、裁判のなかで女性の母親は、被害者の思いを加害者に伝える「心情等伝達制度」を使ったことも明らかにした。母親は「人の心を持っているんだったら、謝罪の言葉が出てくるんじゃないかと。滅茶苦茶な言葉でした。『人は、あっけなく死ぬもんですね』(という言葉)。なぜ、そんなことを言うのか信じられないです」と証言した。

一向に見えない謝罪の態度に、女性の母親は記者会見で涙ながらに思いを口にした。「反省も何もしていないというか、逆に私たちを余計、怒らせるようなことを言ったり…、悔しさしかないです。何が原因でこういう事件を起こしたのか、犯人はもちろん(少年の)母親にもきちんと事件のことを向き合ってもらいたい。事件当日のこと、あの当時のことが頭に浮かんで悔しい思いでいっぱいです」。

判決は来年3月に言い渡される予定だ。
(テレビ西日本)