厚生労働省が「高額療養費制度」の自己負担額の引き上げ案を検討している。一方で、医療費増加に伴い、現役世代の保険料負担を軽減することも同時に検討している。専門家は、引き上げを今行うことで、将来的な医療保険制度の財政健全化につながると指摘する。
「高額療養費制度」に新たな動き
突然襲ってくる大きなけがや病気で医療費が高額になった時、患者の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」。この制度を巡り、新たな動きがあった。
この記事の画像(12枚)5日のテーマは「高額療養費制度の自己負担額がアップ?ソレってどうなの?」だ。
高額療養費制度とは、手術や入院などで1カ月の医療費が上限額を超えると、その分払い戻される仕組みのこと。その自己負担額が引き上げられるという案について、東京・江東区の砂町銀座商店街で街の声を聞いた。
60代:
歯の治療で(高額療養費制度)使いました。それが高くなると困ります。やっぱり。
40代:
特に大きい病気の方の負担が増えるのはダメかなと思います。父はガンをやったので、大病しているときの負担が増えるのはちょっと悲しいなと思います。
高額療養費制度の自己負担額は、年齢や所得によって上限が決められている。70歳未満の患者の場合、3万5400円から25万2600円ほどの5つに分けられている。
具体的に例を挙げると、医療費が月100万円かかった場合、年収が500万円の人の現在の自己負担額は8万7430円と、医療費全体の10分の1以下になる。
街で取材を進めると、実際に高額療養費制度を利用しているという方に出会った。
20代:
払えないから(高額療養費)制度に頼っているのに。
30代:
(高額な療養費は)払えないし、払った分が痛手なので、戻してもらえるのは戻してもらわないと…治療やめちゃう場合も出てくるよね。
医療費が増加する中、厚労省は高額療養費制度の自己負担を増やすことを検討している。その一方で、保険料を多く払っている現役世代の加入者の負担を減らすことも同時に検討している。
保険料はどれだけ安くなるか、5日の審議会で示された試算では、患者の自己負担の上限額を5~15%引き上げた5つのパターンが示された。
最も大きい15%引き上げた場合、加入者1人あたりの保険料の負担は後期高齢者で年に1200円。現役世代は5600円減るとしている。5%の引き上げだと、年600円から3500円、負担が軽くなる計算だ。
30代:
実費の負担が減るのであればありがたい。家計がいま給料上がらず物価が上がっていく一方なので。
高額療養費は高齢者が多くを占める
SPキャスターパックン:
そもそも2015年から8年間で物価は8%近く、平均の世帯収入が16%近く上がってるんです。それに合わせての調整だというんですが、負担額が増える側、払う側は大変なのは間違いないですね。
青井実キャスター:
この制度の見直しですが、やはり必要なんでしょうか。
社会保険労務士・渋田貴正さん:
日本全体の問題として、少子高齢化という問題があります。高額療養費の対象の方は、どういう世代が多いか考えた時、大きな部分を占めているのは高齢者の方々だと思います。高齢者の自己負担限度額を収入に応じて引き上げることを今やっておけば、将来的な医療保険制度の財政健全化につながると思います。
青井キャスター:
審議会に出席した委員からは「一律の引き上げによる低所得者への過度な負担にならないよう、引き上げ幅の設定には留意する必要がある」などの意見が出ました。厚労省は、年内に具体的な対応を決めたい考えです。
(「イット!」12月5日放送より)