高知県内でも教師のなり手不足が深刻となっている。小学校の教員採用試験では約7割が辞退。また県教職員組合が行ったアンケートでは、産休などによる代替教員が不足している現状が明らかになった。
「制度があっても使えない」
県教組は2024年9月、県内の小中学校の教師を対象に代替教員に関するアンケートを実施。35の教育委員会のうち31の回答があった。調査結果によると、病気や産休、退職などによる代替教員については、52件のうち32件が「1カ月以上配置できなかった」または「配置できなかった」という。
この記事の画像(13枚)また、教師が産休に入ることが分かっている場合は、年度初めから代替教員を配置しておく「先読み加配」制度が2023年度から始まっている。しかし2024年度、県内では小学校の教師11人が産休に入ることが分かっていたが、実際に配置できたのは3人だったことが分かった。
高知県教職員組合・畑山和則副執行委員長は、「制度があっても使えないのは大問題だと思いますし、7月に例えば産休に入る人に対して臨時教員が配置できないという状況を考えると、臨時教員不足は大変だなと思っています」と述べた。
小学校教員採用で辞退者が多い理由
新たな教師のなり手不足も深刻だ。県教育委員会によると、2025年度の小学校教員採用試験で合格した280人のうち、約7割にあたる204人が10月末までに辞退していた。県教委は新たに13人の追加合格を出し、12月15日には40人程度を2次募集するとしている。
なぜ小学校教師の採用試験に合格しても辞退する人が多いのか?
高知大学教育学部の岩城裕之副学部長に実態を聞いた。
「高知県の教員採用試験が割と全国で早い部類に入ります。全国で2位とか、1位だった時期もあります。県外でも受験会場があるので、そこで受けられる方もいる。こうなってくると併願できますので、例えば自分の地元は別の県だけど高知県が一番早いので高知県試しに受けてみようか、で合格しました。自分の県の採用試験がその後であるので受けてみた、で合格しました。じゃあどっち行きますか、地元に帰りますってなると、高知を受かったけれども辞退しないといけない。これが一番大きいかなと思っています」と岩城副学部長は指摘する。
これは小学校だけの事例なのだろうか。
岩城副学部長は「中高になってくると教科別になってくるので、非常に採用の人数が少ない。辞退者っていってもそこまで大きな数にならないというのはあるんじゃないでしょうか」と話した。
“意外だった”学生の相談
また、実際に教師を目指す学生に話を聞いたという岩城副学部長。
大学3年生の教育実習後、最終的に教員になるかどうかを決める際に「何が決め手になるか」について、一番多いのは「授業をやってみて大変だった」「授業づくりが大変だった」、「これを教員になって毎日やるとなると睡眠時間を取れるかどうかが心配」という意見だったという。
さらに岩城副学部長は「意外だったのは、『スーパー銭湯に行ったときに子どもたちの家族と会って、ものすごく自分はそういうの抵抗があるんだけど実際の先生たちはどうしているんでしょうか』とか、そういうプライバシーがなくなるんじゃないかってことだったり、大学の授業でやらないようなことが不安になっているというところがあります」と話した。
大学はこの不安を解消するため、ネットの情報だけでなく、働いている先生たちの話を「生で聞く」取り組みを企画しているという。
岩城副学部長は「学生さんたちは、本当に今いろいろ気になっている、教員として就職すると考えた時に気になっていることを、もうなんでもいいので聞いてみましょう。高知で働いている先生たちの話を生で聞いてみて、そこをぜひ話をしてもらいたいなと思っています」と話した。
談話会は、教育学部の3年生を対象に12月に行われる。
教師不足の背景には、県の若年人口の減少や働き方への不安があるようだ。
(高知さんさんテレビ)