体に触らず、ひわいな行為をする「触らない痴漢」。
10月、京都府警は、髪の毛を執拗に嗅いだとして男を逮捕した。なぜ犯行に及んだのか。取材班に明かした、男の身勝手な動機とは。
【動画】『触らない痴漢』「においのほうが興奮する」女子高生の後ろに立って髪を“クンクン”におい嗅ぎ続けた男逮捕「バレないと思った」
■息を吹きかける、じーっと見る…「触らない痴漢」

Xの投稿:あからさまに匂い嗅いでくるやつ、ほんっとキモい。
Xの投稿:鼻息ずっとかけられる。
Xの投稿:いっそ触られれば110番できるのに。
SNSで相次いで投稿されたのは「触らない痴漢」の被害を訴える声。

「触らない痴漢」とは、首や耳などに息を吹きかける、じーっと見る、スマホのデータ共有機能でわいせつな画像を送り付ける、空いている席があるのにあえて隣に座るなど、“体に触れない”痴漢のことだ。

大学生を対象とした調査(クイックリサーチサービス「サークルアップ」調べ)では、女性の5人に1人が「触らない痴漢」の被害にあったことがあると回答していた。
しかし、被害に気付きにくいこともあり、検挙にはハードルがあるのが現状だ。
京都府警察本部 人身安全対策課 伊藤剛警部:行為自体も特殊なので、もしかすると被害が潜在化している可能性もあると考えている。触らない痴漢については、具体的な条文がないので、一件一件を“卑猥な行為”に当たるのか立証しないといけないので、一定のハードルがある。
■「触っていたら注意できるけど…」という声も

「触らない痴漢」は横行しているのか、街で聞いてみると…。
20代女性:空いてるのに、めっちゃ横に座ってくるのはある。痴漢とは思わないけど、ちょっときもいなと思う。
20代女性:体のラインとかをじろーって見られたりとか、めっちゃある。
50代女性:髪の毛の匂いを嗅がれることはありました。触られたわけではないので、気のせいかもしれないというのもあって、その時は黙ってやり過ごしました。ただただ、気持ち悪かったです。
60代男性:触ってるのを見たら注意できたりはするけど、この辺(触らない痴漢)は注意できひんわな。じっと見るっていうのは、ひょっとして知り合いかなって思うから、微妙なとこなんですよ。
40代男性:この6例だけだと、基本的に画像を送信せす、近くに寄らなければいいので、常に人から離れて生きていこうと思います。

「痴漢かどうか分からない」など、戸惑う声もあがる中、実は10月、京都府警では「触らない痴漢」で48歳の男を逮捕した。
記者リポート:男は女性の体を触れるのではなく、匂いを嗅いでいました。
男は、近鉄電車内で女子高校生に近づき、後ろから体を密着させ、髪の毛の匂いを執拗に嗅ぐなどした疑いがもたれている。
犯行が発覚したきっかけは、警察への匿名の通報だった。
警察への通報:女性の近くに立って髪の匂いを嗅いでいるやつがいる。
男は、女子高校生が電車を待っている時から狙ってついていき、犯行に及んだということだ。
警察は防犯カメラなどから男を特定。一度、指導を行ったが、男が犯行を繰り返したため、逮捕に至った。
男は略式起訴され、罰金40万円を命じられた。
■「興奮するから」と身勝手な動機を語った男

なぜ「触らない痴漢」を繰り返したのか。関西テレビは男を直撃。記者に明かした“身勝手な動機”とは。
Q.なぜ匂いをかぐ犯行に及んだ?
【逮捕された男】「興味があったからです」
Q.触るのではなく、匂いを嗅ぐのはなぜ?
【逮捕された男】「匂いのほうが興奮するからね」
男が明かしたのは「興奮するから」という身勝手な動機でした。さらに…。
Q.匂いを嗅ぐことは、罪だと思っていた?
【逮捕された男】「それは思っていなかった」
Q.捕まらないと思っていた?
【逮捕された男】「そうですね。警察に捕まった時は“やってしまったな”と思った。バレないと思っていた」
男が今、被害者に対し思うこととは。
【逮捕された男】「悪かったと思っています。申し訳なかった。自分の欲求に負けてしまった」

被害に気づきにくいからこそ、悪質ともいわれる「触らない痴漢」。被害を未然に防ぐにはどうしたらいいのか?
京都府警察本部 人身安全対策課 伊藤剛警部:犯人は被害者、ターゲットを事前に探しているので、電車に乗る時には周囲に不審な行動をとる人がいないか、十分注意してほしい。通常、犯人は顔を見られるのを嫌がりますので、相手の顔をにらんだり、それだけでも効果があります。
手口が多様化する痴漢。泣き寝入りする人を少しでも減らすために、知っておくべきこととは…。
■証拠がないと立件が難しい現状 どうすれば?

ある調査では、5人に1人が触らない痴漢の被害にあっているというデータもあった。
“触らない”ことで、被害者が「自分が自意識過剰なのかな?」と思いやすく、被害を訴えにくい心理を利用していて、非常に悪質だ。
被害申告をしないと、さらにこうした行為がエスカレートするおそれもあるので、被害にあったら相談してほしいと、警察は呼びかけている。
しかし、犯罪行為として立証するにはハードルも。
10月、女子高校生の髪を嗅いだ疑いで男が逮捕された。ここ2年で、京都府警には合わせて4件の相談が寄せられていたが、立件できたのは1件のみだった。
京都府警察本部 人身安全対策課 伊藤剛警部:認めなかった場合は、防犯カメラなどの証拠がない限り、検挙は難しい。行為をやめさせるための“指導・警告”にとどまる。
やはり証拠がないと、立件は難しいようだ。
菊地幸夫弁護士:被害に遭われた方が、例えば犯人が後ろにいたら、動画で撮っておくとか。何か工夫をするということになるでしょうね。ただ単に『匂いを嗅がれた』と言うだけですぐに警察が動いてくれるかというと難しい。
まず「触らなくても痴漢になる」という認識を社会全体で持つようにする。これが問題解決への第一歩なのではないだろうか。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年11月21日放送)