昔食べたあの店のあの料理、大好きで通い続けているそんな素敵な「味」の思い出はないだろうか。時代を越えて愛される愛媛の老舗グルメ。今回は45年の歴史を持つ松山の喫茶店からこだわりのコーヒーと人気のカレーが登場する。

こだわりの一杯とリラックスしたひととき

店内に広がるいれたてのコーヒーの香り。こだわりの一杯を味わいながら過ごすリラックスしたひととき。

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愛媛・松山市味酒町にある「自家焙煎珈琲モア」は、そんな贅沢な時間を提供し続けている老舗純喫茶だ。

お客の大学生は「雰囲気がすごく良くて落ち着いているので勉強も集中できる」と語る。

お年寄りの女性客は「週に3、4日は来てるかな。もう何十年よ、私89歳だから」と笑顔で答える。通い続ける理由は「コーヒーですよ。1人ずつ豆を、どういうコーヒーが好きかを聞いていれてくれる」と語った。

自家焙煎のこだわり

1979年にオープンしたモアは、2024年6月に45周年を迎えた。

店のオーナーでマスターを務める堀久雄さん(72)に喫茶店を始めたきっかけを聞くと、「その頃は喫茶店をするのが格好良かった時代があるんですよね。自分も経営できるかもしれない。コーヒーのこと何も知らないのにお客さんの立場から見て良いなと思って」始めたという。

創業当時は全国的な喫茶店ブームで、松山市内にも今よりも多くの店舗があったそうだ。元々は松山で会社員をしていた堀さんも、喫茶店ブームに乗っかり、27歳で会社員を辞めたあと東京のコーヒー専門学校で基礎を学び、モアをオープンした。

現在も年に1度は世界のコーヒー園地を巡り、豆を買い付けていて、店では厳選した16種類を取り揃えている。

堀さんは「これが一番浅く焼いたコーヒー豆」と説明する。「浅ければ浅いほど甘い香りがします。深いと苦い感じ」と、焙煎の違いによる味わいの変化を教えてくれた。

モアのコーヒーは生豆を仕入れ、品種ごとに焼き加減を自分で調整する「自家焙煎」が特長だ。「自家焙煎の一番のメリットは新鮮さ」と堀さん。店で使われるのは、焙煎後1週間から10日以内の香りや風味が新鮮な豆だという。

30年ほど前はまだ珍しかった手法の「自家焙煎」をいち早く店に取り入れ、豆の特長を生かした味づくりを目指した。

ドリップにもこだわりがある。「コーヒーの微粉の中に穴がいっぱい空いている。そこにお湯が入り膨れてくる。膨れきったとこでコーヒーが溶け出したところを2回目で(サーバーに)押し出す」と堀さんは説明する。

目の細かい布のフィルターを使うことで、にごりのないすっきりとした味わいになるそうだ。「泡が出てくると『そろそろおわり』とコーヒーが教えてくれる」と語った。

取材にあたったテレビ愛媛の堀本直克アナウンサーは、少し強めに焙煎した上質の「ハワイコナ」を試飲。「いい香り、すごくすっきりしています。シャキッとするし、ブラックコーヒーに透明感」と感想を語った。

看板メニューのチキンカツカレー

モアではフードメニューも充実している。創業当時から続くメニューもあり、懐かしい味わいが多くの人に親しまれているという。

店の一番人気メニューは「チキンカツカレー」。創業当時から同じレシピで作られている看板メニューである。タマネギとニンジンがベースのダシをコンソメで味付け、カレーフレークで煮込んだソース(ルー)は、揚げたてサクサクのカツと相性抜群だ。

試食した堀本アナは「サクサク!熱々!味ジュワ~!」と感激。「おいしい…これは元気がでます。幸せです」と絶賛した。

常連客も「すごい、きょうはまろやか。いつもまろやかだけど、きょうは特にまろやか」と評する。

人と人をつなぐ憩いの場

45年もの間地域に愛され続ける喫茶店モア。お客さんは堀さんとの会話も楽しみにしているようだ。

ある常連客は「私が困ったときに言葉をかけてもらい、元気になっている」と語る。大学生も「マスターがすごく優しい。長時間いても優しく声をかけてくれたり」と語る。

堀さんは「やっぱり一番大事なのはお客様とのコミュニティ。そういう場を提供するのが喫茶店の本当の本来の意味かもしれない」と語る。さらに「コーヒーでも本物を出し続ける。まだまだコーヒーに対してやれることはいっぱいあります」とも語った。

人と人をつなぐ老舗の喫茶店。飽くなきこだわりが育んだ「本物の一杯」を味わってみてはいかがだろうか。

(テレビ愛媛)

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