連続在職日数が歴代1位となった安倍首相。総裁任期の満了まで1年余りとなる中、2週連続で病院に通うなど健康不安説も取りざたされている。内閣改造や党役員人事、そして解散総選挙、「ポスト安倍」に向けてどう動くのか。
今回の放送では、飯島勲・内閣官房参与、小沢一郎氏の知恵袋と呼ばれた平野貞夫元参院議員、さらに2人のジャーナリストをお迎えし、政界に精通した4者による議論を深めた。

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安倍首相在職最長の要因には野党の分裂?

竹内友佳キャスター:
安倍政権の現状について。歴代総理在職日数は8月25日時点で2800日。安倍総理の在職が、歴代最長となった要因は。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
色々な理由がある。端的に言うとライバルがいなかった。もっと大きな意味でいえば、確実に経済の回復。問題もあるが、前の民主党政権と比べれば雇用情勢は大幅に改善している。それから人事の柱がしっかりしていた。ただ、最大の理由は国論を二分するようなテーマにあえて臨んだことだと思う。特定秘密保護法、集団的自衛権の見直し、安保法制、テロ準備罪など、批判も多いことをあえてやった。

柿﨑明二 共同通信社論説・編集委員:
選挙に勝ったこと。それは自民党が強いからではなく、野党が8年割れ続けたため。小選挙区になって8年割れ続けたのもはじめて。解散の技術があり、政権運営の妙もあるが、主には野党の分裂。8年とは小学1年生が中学2年生になる時間。野党の責任は大きい。

反町理キャスター:
野党が8年バラバラだったと。平野さんは。

平野貞夫 元参議院議員:
はい。大事な国会審議で野党の腰が引けているんですよ。

反町理キャスター:
攻め方が間違っていた?

平野貞夫 元参議院議員
平野貞夫 元参議院議員

平野貞夫 元参議院議員:
戦術ではなく根本的に、旧民主党の人たちがそれぞれこの国をどうしようかと、理念も方法も考えていないからですよ。今の再結集の動きはその反省のもとに行われている。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
反省していないんじゃないですか?

平野貞夫 元参議院議員:
反省してない人もいる。

安倍首相が病院に長時間いたのは点滴のためか

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授
飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授

竹内友佳キャスター:
健康不安説も取りざたされる、安倍総理の体調について。

飯島勲 内閣官房参与:
官邸の説明が下手だった、病院で時間がかかったのは点滴をしていたのだと思う
最初の退陣の後、潰瘍性大腸炎に効く新しい薬ができ、それを服用してここまで来ている。しかし薬がなかなか効かなくなってくるため、点滴が一番いいとなってくる。月1回でも、点滴をしに堂々と病院に通えばいい。

安倍首相による衆院解散の可能性は低い、あるならば年内

竹内友佳キャスター:
今後の政治日程について。9月に内閣人事の可能性は。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
体調次第。改造する力があるのか、それも健康に左右される。ただ、やるべき。残った任期が1年あるのだから。
また、議員の首を切ることになる解散には大義がなければいけない。コロナで大変な状況の中、野党が固まっていないから今なら勝てるとしても、ここに大義はない。もうひとつ、安倍総理に残された任期は1年。解散を力にして残った1年だけをやるのもおかしい。淡々と任期が終わるまでこなしていくべき。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員
橋本五郎 読売新聞特別編集委員

飯島勲 内閣官房参与:
来年9月が任期だというが、「総々分離」もあり得る。つまり、自民党総裁の任期が9月なのであって、これは総理大臣の任期ではない。総裁選で4選はしないが、暫時延長するというパターンもある。
また、今の安倍さんが解散する選択肢を取れるタイミングは限られる。11月に臨時国会、1月に通常国会。12〜1月に予算を出す。3月末から4月第1週に予算成立。それまで解散できない。オリンピックや都議会議員選の日程も影響する。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
飯島さんのいう通り、解散の選択肢は非常に限られている。年内か年初めか。あとはオリンピックができたとして、その余韻が残っているときだが、任期が近い。すると、あるとすれば年内。これが可能か。総理の体調とコロナの問題がある。また、いま解散すれば勝てる、という姿勢は選挙に響く。難しい。

「ポスト安倍」決定に安倍首相・麻生副総理の意向は働くか

反町理キャスター:
コロナと向き合う現状の中、もしもコロナも落ち着かずオリンピックも中止となり、年内に総理が退陣表明する場合。このときは菅さんか麻生さんを念頭に置くことになるか。

柿﨑明二 共同通信社論説・編集委員:
その場合、コロナの引き継ぎが不要な人とすると、理屈上それしかない。羽田まで飛ぼうとしていた飛行機が名古屋で降りるような緊急避難。

反町理キャスター:
そこで、党大会で地方票を入れると石破さんが勝つかもしれないからといって、国会議員票だけで総裁を選ぶ方式をとった場合は。すると自民党は次の総選挙でぼろ負けするという見立てもあるが。

柿﨑明二 共同通信社論説・編集委員
柿﨑明二 共同通信社論説・編集委員

柿﨑明二 共同通信社論説・編集委員:
それは次の総理が失敗する前提で言っていますよね?

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
安倍さんが自分の意向で次の総理を指名できるかのような発想は間違っている。本当にそうだろうか。

柿﨑明二 共同通信社論説・編集委員:
今の自民党には、かつてのような引きずり下ろす力・サボタージュする力がない。安倍さん・麻生さんが決めるということが今の状況では効くのでは。

反町理キャスター:
安倍さんと麻生さんの話し合いで、麻生さんに決まりますか?

安倍晋三総理大臣(左)、麻生太郎副総理兼財務相
安倍晋三総理大臣(左)、麻生太郎副総理兼財務相

柿﨑明二 共同通信社論説・編集委員:
70歳になっていない方がやめるときに80歳の方がなるのか、と。

反町理キャスター:
するとその場合は菅官房長官ということも。飯島さんは?

飯島勲 内閣官房参与:
もし安倍総理が解散して選挙に大勝すれば、後継者はどうなるかと。

反町理キャスター:
安倍総理の四選、任期延長になるのでは。

飯島勲 内閣官房参与:
その場合は党則改正で延長すればいい話。

河井夫妻選挙違反事件、金を受け取った側は

竹内友佳キャスター:
河井夫妻の選挙違反事件。夫妻は現金提供を認めたものの、陣中見舞いであり票の取りまとめを依頼したものではないと無罪を主張。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
金を配ったほうだけではなく、貰ったほうも問題。しかし貰った側は最初から起訴されない。これでいいのか、なぜ起訴しないのか。金額が少ないからだろうか。弁護人のいうことには一理ある。

反町理キャスター:
取引とすれば、このような司法取引はよいのか。

柿﨑明二 共同通信社論説・編集委員:
私も橋本さんと同意見。弁護人に反論の余地を与えてしまい、有罪になってもすっきりしなくなる。これからは貰った側を一切起訴しないのかという問題にもなる。同じことを積み重ねると裏取引という形になり、立件されないと皆が学習してしまう。やはり立件は必要だった。

飯島勲 内閣官房参与:
受け取った100名が「検察の調書は全然違う、圧力で認めてしまった」といったことにならないように起訴は最後まで進めてよい。受け取った100名も公職選挙法違反ですから。罰金3万円、公民権停止3年ないし5年、という処分は出る。

反町理キャスター:
公民権停止となると、議員は失職。

飯島勲 内閣官房参与:
そうです。法律上、違反した場合は5年の公民権停止。軽い場合は3年に短縮。罰金が3万円。間違いなく全員やられる。

BSフジLIVE「プライムニュース」8月25日放送