東京・千代田区で、サントリーが“適正飲酒”を学べる期間限定バーをオープンした。
サントリーでは、企業や大学向けの啓発やVR(仮想現実)体験も取り入れ、責任ある飲酒文化の普及を図っている。
専門家は、「ポジティブな飲み方」が酒文化の持続と顧客の生涯価値向上に資すると指摘している。

責任ある飲み方を学ぶ“適正飲酒”体験バー

「酒は飲んでも飲まれるな」という言葉もあるが、サントリーが“適正飲酒”を勧める新たな活動を始めると発表した。

バーの壁には飲酒についてのキャッチコピーが
バーの壁には飲酒についてのキャッチコピーが
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東京・千代田区の東京ミッドタウン日比谷に登場したバーでは、ワインに酎ハイ、ビールなどさまざまなお酒を楽しむ人たちの姿が見られた。

その壁に貼られているのは、「酒に溺れず、酒を味わう、これぞ適正飲酒の心」、「鏡にうつしても、恥ずかしくない飲み方を」と書かれた適正飲酒を呼びかける歴代のキャッチコピーだ。

ここは、6日から10日まで期間限定でオープンする、「適正飲酒」について理解を深めながらお酒を楽しめるバーだ。

1人1杯までで自分に合ったドリンクを選べる
1人1杯までで自分に合ったドリンクを選べる

飲めるのは1人1杯のみで、お酒とともに水とノンアルコール飲料も提供する。
メニューには、ドリンクに含まれる純アルコールの量も書かれていて、自分に合ったドリンクを選ぶことができる。

バーでお酒を楽しむ人
バーでお酒を楽しむ人

サントリー・鳥居信宏社長:
適正飲酒のことは、ずっと啓もうを続けてきましたし、今回、適正飲酒の大切さといろんなお酒・ノンアルコールも含めて、いろいろなものがあって、それを体験してもらって楽しんでいただくことが本当に大事だと思います。

サントリーは6日、「ドリンクスマイル」という、適正飲酒とお酒の魅力を伝える活動を新たに始めると発表した。
企業や大学、自治体向けに飲酒の知識を伝えるほか、VRでウイスキー蒸留所の見学ができるなど、体験コンテンツも提供する。

実は、「コロナ禍で自分の適正量を知らずに過ごしてきた新入社員に、正しいお酒の飲み方を教えてほしい」という企業側からの要望もあったという。

サントリー・鳥居信宏社長:
来年(2025年)に3万人の方にセミナーを展開していきたい。2030年ぐらいまでには、20万人、25万人とかそのぐらいまでは、直接セミナーをしていきたいなと思います。

2024年2月、厚生労働省が飲酒のリスクを周知するため、飲酒の量による健康リスクなどを示したガイドラインを国として初めて公表するなど、近年、適正飲酒の必要性が指摘されている。

サントリーでは、「お酒は何よりも適量です」という広告を展開するなど、1986年から適正飲酒の大切さを訴え続けてきた。
正しい量で長くお酒を楽しんでもらうために、酒類メーカーの取り組みが広がっている。

サステナビリティーを意識した企業活動

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
ーーサントリーが適正飲酒の啓発活動をさらに拡大するということですが、どのような背景があるのでしょうか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
世界中で「責任ある飲酒」の取り組みが進んでいます。消費者が飲酒について、十分な情報を得たうえで選択できるようにすることで、人々の飲酒のあり方を、より良いものに変えようという企業努力が見られます。

例えば、蒸留酒・ウイスキー業界のトップ企業であるディアジオは、「ドリンクIQ」というIQテストを開発し、消費者の飲酒知識を高めることを進めています。

グローバルな酒類メーカーにとって、適正な飲酒を啓発していくことは、とても大切なサステナビリティー活動の1つでもあります。

適正飲酒で豊かなライフスタイルを促進

堤キャスター:
ーー「飲酒は悪いこと」ではないので、お酒の魅力を伝えながら、ほどほどな飲酒を呼びかけるバランスが必要になりそうですね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
そうですね、お酒は人類がその歴史とともに育んできた文化でもあります。お酒の文化を未来へつなげるためにも、ポジティブな飲み方は大切です。最近は食事とのマリアージュによって、食もより豊かになります。

また、それぞれのお酒の歴史や作り手の思いといったストーリーは、人々の知的好奇心を刺激し、教養を高めてくれます。お酒と素敵につきあうためには、適正な量をたしなみ、お酒に飲まれないことが大切です。

堤キャスター:
ーーこのような啓発活動は、メーカー側にもメリットはありますか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
適正な飲酒は、人生のより長い時間、お酒を楽しむことを可能にしてくれます。顧客のLTV(Life Time Value、顧客生涯価値)という観点から見ても、企業と顧客双方にとって有益だと考えられます。

私たち消費者も、飲酒について知識を得ることで、誰もがスマートな飲み方を楽しめるようになるといいなと思います。    

堤キャスター:
アルコール度数の低いお酒の種類も増え、自分にあったお酒を楽しみやすくなったと感じています。
度数・量ともに、適正には個人差があるということを念頭に置いて、飲む責任を持ってお酒をたしなみたいですね。 
(「Live News α」11月6日放送分より)