2024年8月に発生した台風10号は世界遺産の島、鹿児島・屋久島にも大きな被害を及ぼした。島内で観測された最大瞬間風速は実に46.8メートル。樹齢3000年と推定される屋久杉・弥生杉が、根元を残して折れ、今後の取り扱いをどうするかが課題となっている。

「弥生杉の取扱いに係る検討会」を設置

樹齢3000年と推定される弥生杉は、高さ26メートル周囲7.6メートルにもなる巨木だったが台風10号の影響で、根元から1.5メートルを残し、折れてしまった。

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弥生杉は観光コースとしても人気の高い白谷雲水峡の入口から最も近くにある屋久杉で、被災直後の取材に関係者からは「年配の方でも身近に行くことができた。それが倒れたのは悲しい」と落胆の声が聞かれた。

九州森林管理局は、自治体や観光関係者、樹木医などで構成される「弥生杉の取扱いに係る検討会」を設置し、今後について検討することになった。

そして10月29日、現地での検討会が行われた。
検討会のメンバーは現地で写真を撮影したり幹の中を実際に見たりして弥生杉の現状を確認した。折れた弥生杉は腐朽が進んでいてシロアリの被害も大きく、メンバーの一人で樹木医の間世田明里さんは「台風のあと強風の影響と、台風と風の角度が合うので、(折れたのは)強度不足と風の影響が考えられる」と話した。

現地視察のあとメンバーは弥生杉の今後の取り扱いについて協議した。話し合いは非公開だったが関係者によると、「折れてしまった弥生杉を現地で現状のまま保存し、訪れた人にそのままの姿を見てもらったらどうか」との提案があったという。

倒れても「強度を保っている状態」

この日、弥生杉の“最期”を目の当たりにした一人、樹木医の間世田さんは、こんなことも話していた。

鹿児島県樹木医会樹木医・間世田明里さん:
さすが屋久杉だと思いました。年輪が緻密なので腐朽がなかなか進行しづらく、強度をある程度保っているのをすごく感じました

記者の「倒れているにもかかわらず?」といった質問には、「そうですね、細胞自体は死んでいるが(木の中が)なかなか腐りにくいんですよ。それで強度を保っている状態がずっと続き、今まで頑張って立ってくれていたんだろうと思います」と返した。

折れた枝から新たな植生が広がった例も

現在、白谷雲水峡の一部は入場が制限されていて、弥生杉を巡るコースは立ち入り禁止となっている。

屋久島では2010年、樹齢2000年といわれた「翁杉」が根元近くから折れているのが見つかった。2005年には縄文杉でも、雪や風の影響で、長さ約4メートル、重さ4トンもの枝が折れた例がある。

しかし屋久島では折れたり枯れたりした杉の幹や枝に別な植物が着生し、そこから新たな植生が広がる光景が至る所で見られる。

折れる前の弥生杉
折れる前の弥生杉

提案通り弥生杉が現地に残れば、世界遺産の島に、また新たな自然が育まれる土台となっていくのではないか。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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