「世襲(議員)ばかりというのは異常な事態ではないかと。ルパンだって三世までですよ!」と批判した立憲民主党の野田佳彦代表。
いくら叫んだところで、世襲政治はなくならない。
加藤紘一氏を父に持つ、前こども政策相の加藤鮎子候補。父は岸信夫氏、叔父は安倍晋三氏、そして曾祖父は岸信介氏という岸信千世候補。
大物政治家の後継者を応援すれば、「またこの地から総理大臣が出るかもしれません」と、つい自民党の森山幹事長だって…。
さらに、上西小百合議員への「自分が子ども産まなきゃダメだぞ」といったヤジや失言でお騒がせの大西英男元議員も、次男・大西洋平氏の初出馬に自ら拍手を送った。
大西英男氏に世襲批判について尋ねると、「私から(出馬を)頼んだわけじゃない。世襲でもなんでもない」と、独特の理論があるらしい。
これほどの批判を浴びながら、なぜ世襲はなくならないのか?
探ったのは、自民党の重鎮・二階俊博元幹事長のおひざ元、和歌山2区だ。
入ってみると早速、「国土強靱(きょうじん)化を提唱したのは二階俊博代議士です。二階代議士は、私の父です」と、三男の伸康候補が父の名前を出す。
そして行く先々では、有権者が「あ~よろしくね、お父さんからもずっとお世話になってます」「お父さんとも手を握って」「子どもの頃から二階さんって聞いてるから、ありがとうございます」などと語り、父への感謝が止まらない。
ある有権者は「高速道路通る時にいつも思います。二階先生のおかげでね、この道通れるって感謝しています」と話していた。
確かに地元への貢献は大きいのだろう。
そして、その力を借りれば勝利への道も確実なはずだった。
しかし、同じ選挙区で戦いを挑んできたのは、“裏金問題”で自民党を離党した世耕弘成氏だった。
この“仁義なき戦い”に、自民党の森山幹事長は「自民党がこんな苦しい選挙をしている時に、政治家としての配慮があってもよかったのではないか」と嘆いた。
そうした中、当の二階伸康候補は「父親の後を継がなければいけないとか、ほんとにそんなことはどうでもいい話です」と世襲批判をかわしながら、やっぱり最後は父親頼りの選挙戦。
「よう(父親と)似とんね」「がんばって」「激戦区、ホンマにいつも応援してるから」などの声がかけられた伸康候補。
沿道に出てきてくれた支援者も「(お父さんの時代からこう?)そう、いつもそう。みんなで応援している」と語り、さらに「お父さんの時もね、がんばっていただいてね。ほんとに長いご縁いただいてありがとうございます」と、握手をすれば握り返してくる手もあった。
確かにこれでは、世襲するなという方が難しいくらいだ。
そこで、本人にハッキリ聞いてみた。
多少の皮肉を込めて、「どこへ行っても、やはりお父さんの影が付きまとうのは仕方がない?」と尋ねると、「もちろん、もちろん。それは別に否定するわけではないんです。当然両親がいなければ、私はここに立っていることはなかったわけですし、両親に対する感謝、これはいつの時もあります…」と述べた伸康候補。
そんなことを聞いているのではないのだが…。
そして伸康候補は、「この広い選挙区の中で自分の思いをどこまで伝えられるか。それは私自身との闘いだと思っています。がんばります!」と語った。
「やっぱり世襲はなくならない」と思い知らされた和歌山の夕暮れだった。