元旦に発生した能登半島地震から半年以上が経過した。
  着々と被災した建物の公費解体が進む中、所有者の立ち合い無く、
       勝手に建物が解体されてしまったケースが数件報告されている。
立ち合いや連絡がなく始まった解体工事のせいで、
自分で瓦礫の中から取り出そうとしていた商売道具を処分されてしまった男性を取材した。

勝手に公費解体 商売道具を失う

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「ここから店、ここから住宅」
自宅兼店舗の建物があった更地で途方に暮れる男性がいた。
本郷明夫さんだ。

本郷さんは40年、輪島市河井町で印鑑の製造と販売をしてきた。
しかし店舗と自宅を兼ねていた建物は、能登半島地震で全壊判定となり、公費解体を申請。
公費解体の工事は、6月6日から始まる予定だったが…

本郷明夫さん:
3日にまだ始まっていなかったので、僕の方はまだなんだなと。
「明日ここまでやるか」と聞いたら「やらない」と言われた。
4日の3時か4時に来てみたら、なかった。

なんと、解体業者から連絡がないまま、無断で解体が始まっていたのだ。
解体に合わせて取り出そうとしていた道具や材料などは、一緒に処分されてしまっていた。
怒りやあきれが、ない交ぜになった声色で、本郷さんは語る。

本郷さん:
潰すときに「飯を食うための道具があるんだから連絡して」と言ったが
「公費解体は一回やると止まらない。
  止めてくれというなら自費解体でやってください」と…

瓦礫の中から取り出せたのは、折れ曲がった彫り道具だけ。
生業に必要なほとんどの道具を失ってしまった。

本郷さん:
「情けなかった、一応見つかったからよかったけど使えない。
手仕事は自分に合った物を使う。それがなくなったっていうことは自分で作るしかない。
これ全部もらいもん。この怒りはどこに持っていけばいいか…」

震災を乗り越え、40年続けてきた店を再建させようとしていた本郷さん。
なぜ危険を冒してまで、被災した店の瓦礫の中から
自分で道具を取り出したかったのか、とたずねると…

本郷さん:
それしかない。手仕事だからそれがないと僕の商売成り立たない。
その物を返してくれと思う。お金でどうこうというより物を返してほしい。

県によると、本郷さんのように所有者に無断で解体業者が解体を始めたケースは、
輪島市で3件確認されている。

馳知事は会見で…

馳知事:
「とんでもないですよね。立ち合いしなければいけないに、決まってるじゃないですか。
文句がきたというのは、ありえない話なのでですね。
これはコンサルなのか業者なのか厳しく抗議したいと思いますし
ありえない話ですよね。大変私も遺憾に思います」

同様に、輪島市は
「遺憾であり申し訳ない。今後同様の事が起きないよう業者に対し注意喚起した」
とコメントしている。

(石川テレビ)

石川テレビ
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