石川テレビアナウンサーの稲垣が、
能登各地で前を向いて頑張っている人を訪ねてる「能登人を訪ねて」。
今回お邪魔したのは、元旦の震災に続き豪雨に見舞われた輪島市門前町のワイナリーだ。
震災の乗り越えた輪島市「ハイディーワイナリー」へ
日本海を見下ろす丘の上に建つ、ハイディーワイナリー。
ここは日本ワインコンクールで金賞を受賞するなど、今注目のワイナリーだ。
にこやかに出迎えてくれたのは、このワイナリーの主人の高作正樹さん。
神奈川県出身で、12年前に父の故郷の輪島市門前町に移住。
ぶどう畑を開墾し、ハイディーワイナリーを立ち上げた。
元旦に能登を襲った震災当日。ハイディワイナリーも大きな被害を受けた。
被害の詳細を稲垣に語る高作さんは、自身の背後にあるたくさんのワインが置かれた棚や、
被災当時の写真を見せながら語ってくれた。
ハイディーワイナリー 高作正樹さん:
「積み重なっているワインとかが落ちてしまって、
機械なども損壊という形になったり、建物も傷ついてしまいました」
ワイナリーだけではない。
雰囲気がいいと評判だったレストランも大きな被害を受けた。
地盤に亀裂が入ってしまっているため、「全壊」の判定を受けていた。
建物内部に入った稲垣アナウンサーが見たのは、
かつてたくさんのお客でにぎわっていたであろう、閑散とした店内。
地盤・基礎を直さなければ、安全な状態でサービスを提供できない。
しかし大規模な工事となるため、すぐに修繕、営業再開するのは難しいという。
レストランの厨房は、震災発生時のまま。
ワイングラスが落ちて割れた破片が、薄暗い厨房の床に散乱していた。
レストラン再開のめどは立っていない
そんな中、幸いにも無事だったのが醸造所だ。
醸造途中のワインを試飲させてもらった。
今年の9月5日に収穫したばかりのブドウを使用したワインである。
震災を乗り越えた、醸造が始まったばかりの『2024』のワイン。
「糖分はもうほぼない状態ですね。まだまだ赤ちゃんワイン」と
愛着のある面持ちで説明してくれた。
稲垣:
のど越しの後に、ワインのふわっとしたあの香りが、口のここら辺から広がってきますね。
鼻に抜けるんですね
2025年の5月に完成するというこのワインは、まさに希望の光と言えるだろう。
能登の大地とブドウ畑
ブドウ畑の土地は元々、海の底だったと語る高作さん。
元旦の地震の際に起きたような、大規模な地殻変動や隆起を繰り返してきた
能登の大地だからこそ、いいブドウが育つのだという。
一見する限りでは、どのブドウも元気に青々と実っているように見えるが…
レストラン同様、畑の地盤にも大きな被害があったと言う。
高作さん:
土がうねってしまって、ブドウの棚が倒れてきてしまったり、
ひび割れによって根っこがあらわになってしまって、乾燥して死んでしまったり…
でも、収穫を何とか目指そうという気持ちは失われることなく続けてきました。
これまで、ハイディーワイナリーはブドウの収穫をご近所さんやボランティアさんに
手伝ってもらい、交流を深めてきた。
高作さんは、彼らがいたから、これまでも頑張ってこられたと語る。
この話を伺ったのは9月20日だった。
近くボランティアたちとブドウの収穫をすると喜んでいた高作さんだったが…
翌日の9月21日、あの豪雨が能登を襲った。
震災から立ち上がったブドウ畑 ワイナリーを襲った豪雨
高作さんがぶどう畑に入れたのは豪雨災害の発生から1週間後のことだった。
大雨の後、高作さんの元を再び訪ねた。
高作さん:
大雨で地盤の表層が洗い流されて、それと雨風がひどすぎて…
葉っぱに当たって圧力でぐーっとなぎ倒されてしまった。
せっかくブドウの実が成った木も、大雨になぎ倒されてしまっている。
高作さん:
地震の時の方が被害は大きかったんですけど、でもちょっとメンタルが…
気持ちの問題として、やっと頑張るぞ。とみんな団結してお店を再開しているところも
出てきた中で、今回のことなので…
再び襲った災害に、心が折れそうになった。
しかし、震災、豪雨の被害を乗り越えて育った能登のブドウを見ているうちに、
改めて能登で生きる喜びを実感したという。
高作さん:
僕らのブドウがワインになって、多くの方々の元に届いて、
多くの方々が喜んでくれるのであれば、僕らは前向きに事業を継続して、
地元一丸となって支え合っていきたい。
能登の土地がワイン造り・ブドウ畑開墾の決め手だったと語った高作さん。
自然は厳しくても、この能登を愛する気持ちは、変わらない。
高作さん:
「大自然には、いろんな試練や上手くいかないことなんてたくさんある。
それでもこれだけ豊潤な恵みを頂けるので、素晴らしいところだと思います」
(石川テレビ)