福岡市の繁華街、天神・大名地区。翌日から3連休を控えたこの日の夜、街には多くの若者が集い、深夜まで酒を飲み交わしていた。なかには路上で酔いつぶれた人の姿もみられる。終電もとうになくなり夜も更けた深夜3時前。天神の警固公園交番前には、数人の私服警察官がいた。

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酔っ払って寝込む人に声掛け

「公園を回って天神地区、大名とかを回ろうか」と打ち合わせを済ませた警察官が歩き始めて1分足らず。道端にうたた寝をする男性を見つける。周囲に不審人物がいないか確認し「こんばんは。警察です。大丈夫ですか」と声をかける。「仮睡者狙いがあっていて危険なので移動した方がいいですよ」と警察官に促された男性は「ありがとうございます」と応え、覚束ない足取りで歩き始めた。

福岡県内ではいま、酒に酔って公園や道端などで寝ている人から貴重品を盗む、いわゆる「仮睡者狙い」が横行していて、警察が警戒を強めているのだ。

「だめ。警察、警察。動かんで」

福岡県警の提供映像には、大名地区のビルの出入口付近で寝ている人の肩を叩き、起こそうとする男の姿が写っている。被害者が深い眠りについていることを確認したのか、次の瞬間、男が財布を盗んだのだ。警戒中の捜査員が目撃した決定的瞬間だ。

仮睡者から財布が盗まれる瞬間
仮睡者から財布が盗まれる瞬間

「ちょっと動かんで」とすかさず捜査員が声をかける。男は「すいません。ちょっと酔っぱらっとって。先、返してきます」と逃れようとするが「まだまだまだ。だめ。警察、警察。動かんで」。男は窃盗の現行犯で逮捕された。

警察によると、福岡県内では2023年、仮睡者を狙った窃盗事件が131件発生。コロナ禍が収束し、外で酒を飲む機会が増えるなか、窃盗捜査の精鋭、刑事部捜査第三課が対応に当たっている。田中警部補は「被害に気づかず、遺失届になっている件数もあるので、潜在的な件数は実際被害にあっている件数はもっと増えていると思う」と危惧する。

この日も屋外で寝る人が後を絶たない。田中警部補が「ずっと寝とったら財布とか盗られたりするんですよ」と寝ている男性に声をかける。男性は10分間に及ぶ懸命の声掛けでようやく起き上がることができた。

さらに歩みを進めると、また1人。「仮睡者狙いとかありようから気をつけて。寝てるときに、すられたりするから気を付けて下さい」と声をかける。しかし男性は、一度は起きたものの田中警部補たちが立ち去ると再び眠りについてしまった。

狙われやすい人の特徴は?

仮睡者のなかでも狙われやすい人の特徴はあるのか?田中警部補は「財布とかが簡単に見える状態の人。バッグが開いた状態で財布が見えていたり、後ろポケットに入れている財布が見えたりしている人が狙われやすい」と注意を促す。

犯行の瞬間をとらえた福岡県警の提供映像。道路わきに腰かけて寝ている被害者。鞄からは財布が見える状態だ。そして自転車に乗った男がゆっくりと近付いて来る。

男は鞄を物色し、財布を盗み走り去ろうとした次の瞬間!付近を警戒中の捜査員が男を追いかけ、強烈なタックルを浴びせた。まもなく応援のパトカーも駆け付け、自転車の男は御用となった。

酒に酔った人を標的にした窃盗事件。被害に遭いやすい場所として、路上はもちろん、終電間際の駅のホームやバスターミナル、車両のなかでも被害が発生しているという。特に路上は、大通りから路地に入った人目につきにくい場所で、寝ている人が標的になりやすく、警察は、こうしたエリアを重点的にパトロールしている。

酔っ払って寝込んでしまった人が…
酔っ払って寝込んでしまった人が…

「スリ犯係は検挙が一番なんですけど、被害を発生させないことも自分たちの仕事だと思っている。すり犯を見つけるためにこれからも歩き続けたい」と話す田中警部補。秋が少しずつ深まり、心地良い気候となるこの時期。警察は仮睡者ねらいが横行する可能性があるとして注意を呼びかけている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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