広島市で発生した大規模な陥没により、周辺の建物が傾いたりひびが入るなどした問題。住民説明会で「人災では?」という声が多く聞かれた。原因究明が急がれる中、専門家は事前の“ボーリング調査の数”を指摘する。

「早く自宅に入らせて」不安募る住民

9月26日午前、広島市西区福島町で幅15メートル・長さ40メートルにわたり市道が陥没し、周辺では建物が傾いたり、ひびが入るなどした。

【視聴者提供】道路が陥没して水があふれ出た様子
【視聴者提供】道路が陥没して水があふれ出た様子
この記事の画像(9枚)

広島市によると付近では当時、新たな雨水管を整備するための掘削工事が行われていた。
陥没から一夜明けた27日午前、広島市はボーリング調査を完了し、路面の状況から沈下はいったん収束したと判断。道路を埋め戻す作業を始めた。避難した住民のなかには市の職員と一緒に自宅に残したままの荷物を取りに行く人も見られた。

住民説明会が行われた広島市西区の観音小学校
住民説明会が行われた広島市西区の観音小学校

また、避難所に指定された近くの観音小学校では住民説明会が行われ、約60人の住民が参加。現場の状況や今後の生活支援・補償などが説明されたが、住民が期待する説明はされなかった。

「これは人災で間違いないですか?」と質問する住民に対し、広島市の担当者が「詳細はまだわかっていませんが、工事がきっかけで起きた事故だと認識しています」と返答。すると、最前列で話を聞いていた住民は「質問の答えになっていない」と指摘。広島市の担当者が「自然災害ではないということです」と言い直したため、住民からは「だから人災だろう」「人災と言いたくないんでしょ?」などと厳しい声が飛び交った。
「自宅に帰れない人がたくさんいる。大切なものを取りに帰りたい人も大勢いると思う。早く中に入れてもらいたい」と訴える参加者もいて、住民たちは不安を募らせている。

管理物件が被害にあったという参加者は「この日まで我慢すれば修復に入ってもらえるんだなとわかるような説明会にしてくれないと、僕らも来る意味がない」と話す。

地盤に影響少ない工法のはずが…

一方、27日午後からは広島市の松井一実市長が陥没した現場を初めて視察した。

松井市長は「シールド工法は安全を確保しながらやることになっているが、何らかの原因があって地盤そのものが沈下したと受けとめている。原因を早急に突き止めることをしっかりやってもらいたい」と会見。そのうえで住民への補償については「市と業者が協力して万全に行いたい」としている。

今回の大規模な陥没事故。専門家はどのように受け止めているのだろうか。

トンネル工学が専門の広島工業大学・岡崎泰幸講師は「シールドマシンは軟弱な地盤を対象とし、地下水や地盤変状に影響が少ないといわれている工法。そこで今回のようなことが起きたのはなぜだろう…」と首を傾げる。そして「トンネル径が6メートル、地表面からトンネルの上端まで約30メートルと5倍ぐらいあるので、安全に掘れるようにできる限り地表面から距離をとろうとしたのかなという印象」との見方を示した。

改めて、事故が起きた状況を整理する。
地下約30メートルで直径6メートルのシールドマシンが掘削工事を行っていた。広島市の見解や専門家によると、おそらく地盤の中に「もともと存在していた空洞」または「新たに生じた空洞」に地下水が多く含まれていたのではないかという。

その地下水がトンネル内にもれ出したことで空洞があいてしまい、地表の地盤も沈下し水道管が破断した可能性があるということだ。今回の工事は地表から5倍もの距離をとって作業していて、専門家は「安全に配慮していた」と評価している。

その上で指摘したのが、事前の地盤調査。岡崎講師は「調査数がもうちょっと多いとよかった可能性もあります。どう改善していくか、技術者の課題になっていくと思います」と話す。

トンネルを掘る前に複数箇所で地盤を調べる“ボーリング調査の数”が十分だったのかなど、今後検証していく必要がある。しかしボーリング調査の数を増やすと事業費も増えるため、公共事業ではそのバランスが難しい。安全性を高めるため、事前調査の在り方をどう改善していくのか。今回の事故で課題が浮き彫りになった。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。