CTCひなりが運営するカフェでは、障がいがあるスタッフが働きやすいよう、特性に合わせた工夫を取り入れている。専門家は、障がい者雇用を戦力化するには職域の拡大やキャリア形成、社員間の交流が重要だと指摘する。

初の外部出店…工夫で接客負担を軽減

さまざまな工夫で、「働く障がい者」を後押しする。

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ランチタイムに列ができているのは、「HINARI CAFE 麻布」。伊藤忠テクノソリューションズの障がい者雇用を担う特例子会社CTCひなりが経営するカフェだ。

忙しいランチタイムも、障がいがある4人のスタッフと1人のジョブサポーターで店を回している。店内では、「バターチキンカレー残り1つです」「はい、ありがとうございます」とやりとりする声が響いていた。

CTCひなりが行う事業
CTCひなりが行う事業

社員178人のうち、約7割の123人が障がいがあるというCTCひなりは、グループ内でオフィスの清掃や事務代行などの事業を手がけ、カフェもその中の一つだった。

「HINARI CAFE 麻布」で販売するメニュー
「HINARI CAFE 麻布」で販売するメニュー

そのひなりカフェが2024年9月、障がいのあるスタッフの前向きな声に背中を押される形で、初めてグループの外に出店した。

CTCひなり・芝美和子社長:
一般のお客様もいらっしゃるということで、そこのコミュニケーションで、店のメンバーに負荷がかからないか、お客さまに対して失礼なことがないかとか、どういうことが想定されるかという懸念はございました。

そんな懸念をよそに、スタッフの金井書子さんと前島壮太さんがテキパキと接客をこなしていた。そこには、彼らの不得意なことを減らす工夫があった。

お弁当を購入する人たちが、前島さんに渡すカラフルなカード。これはお弁当に貼られているシールに対応している。

CTCひなり ジョブサポーター・稲山莉奈さん:
言語の音声よりも、こういった視覚で見てもらう方が、彼らは分かりやすいという特性があります。

一方で、2人には得意なことがある。

CTCひなり・前島壮太さん:
去年の「チャレンジコーヒーバリスタ」は、2位でした。

2023年に行われた障がいがある人たちのバリスタ大会
2023年に行われた障がいがある人たちのバリスタ大会

2人は2023年に行われた、障がいがある人たちのバリスタ大会で準優勝に輝いた。

杉田昭浩ディレクター:
入れ方が違うんですかね。ミルクがフワフワで優しい感じがします。

CTCひなり ジョブサポーター・稲山莉奈さん:
金井さんはミルクの液から入れるようにしていて、最後に泡を上から入れています。

2024年のバリスタ大会の様子
2024年のバリスタ大会の様子

さらに、金井さんたちにアドバイスを受けた後輩たちが、2024年の大会で見事優勝した。チャレンジを続けるひなりカフェのスタッフたち。大切なのはチームワークだという。

CTCひなり・芝美和子社長:
それぞれにどういう特性を持っているか、相互理解が障がいのあるメンバー同士でも持っていて、そこをどういうふうに障害にならないように仕事を分担すればいいのか。そこのチームワークというのは、どこでも大事なことだと思います。

活躍できる業務領域を広げる工夫が必要

「Live News α」では、デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんに話を聞いた。

海老原優香キャスター:
松江さん、障がい者雇用について各企業でさまざまな取り組みが進んでいますよね。    

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
障がい者雇用の人数は増加し、重要性が増していますが、これからは企業にとっては法定雇用の義務を果たすだけでなく、いかに重要な戦力として活躍していただくかが重要です。

戦力化に取り組む上でのポイントとしては、「職域の拡大」「キャリア形成」「社員間の交流」の3つがあります。 

「職域の拡大」については従来、軽作業や定型業務に限定されがちでしたが、仕事の幅をいかに広げるかが重要です。

飲食店の接客などを通して営業面の貢献につなげる。加えて最近は、ITを活用した非対面の接客業務に範囲を広げる、さらにITスキルを生かした専門性の高い業務など、重要な戦力として働く領域を広げる工夫が必要です。

特性に応じた選択肢・中長期的な支援が鍵

海老原キャスター:
自分に合った働き方が選べると良いですよね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
次の「キャリア形成」について、インターンや教育プログラムによるスキルアップの機会や、障がいの特性に応じたキャリア選択の機会作り、中長期の視点でキャリア形成に取り組むことが重要です。

あるメーカーでは教育プログラムによってスキルアップを行い、入社4年目以降は本人の希望や業務状況を踏まえ、希望するキャリア(エキスパート、スペシャリスト、マルチクラスター)を選択する取り組みを行っています。

海老原キャスター:
そして3つ目が「社員間の交流」ということですね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
「社員間の交流」については、障がいのある社員と接する社内イベントの機会作りや、同一業務内での交流を日常化する工夫をすることで、障がい者の仕事内容や思いの理解を深めることが活躍の機会が広がるきっかけになります。

このように、障がい者雇用を戦力化する目線で取り組むことで、働く人と企業双方がWin-Winになる展開の広がりに期待します。

海老原キャスター:
実際に私も、こういったカフェやバザーなどに幼いころから行っていました。民間企業の法定雇用率は今後も増加していきます。障がいのあるなしに関わらず、一人一人の特性を正しく理解し、お互いに敬意をもって支えあうことが大切なように思います。
(「Live News α」9月27日放送分より)