円相場が約3週間ぶりに1ドル=145円台を記録し、ドル買いが進行した。これはアメリカの経済指標が予想を上回り、FRBの大幅な利下げ観測が後退したためだ。専門家は、米国市場の動向が日本のマーケットに与える影響の大きさを指摘している。

円相場145円台に…輸出銘柄中心に大幅上昇

円相場が、約3週間ぶりに1ドル=145円台をつけた。

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26日の東京外国為替市場は、アメリカで発表された経済指標が市場予想を上回り、中央銀行にあたるFRBが大幅な利下げをするとの見方が後退したことから、ドル買い円売りが進んだ。

26日午後1時頃の円相場
26日午後1時頃の円相場

円相場は一時1ドル=145円台をつけ、約3週間ぶりの円安ドル高水準となった。

これを受け、東京株式市場では輸出関連銘柄などで買い注文が広がり、日経平均株価は1000円以上値上がりした。

一方、“世界経済の中心”アメリカでも、動きがあった。

ニューヨーク証券取引所の様子
ニューヨーク証券取引所の様子

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日本のマーケットに大きな影響を与えるのが、今私がいる、世界最大の金融センター「ニューヨーク・ウォール街」の動きです。アメリカは、景気を軟着陸させる緩和へと金融政策の舵を切りました。これから株式市場や為替はどう動き、アメリカ経済はどこに向かうのか、さらには日本への投資などについて、市場の関係者に取材を重ねました。

FRBはデータ精査で「リーク形式」へ

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
景気の行方が懸念されているアメリカは、馬渕さんの目にどのように映っていますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
国連開催中のニューヨークの街は活気にあふれつつも、値下げしないと購入しない消費行動が見られるなど、格差も目の当たりにしています。

ただ、今回取材したマーケットの関係者は、総じて個人消費は底固く、住宅市場はむしろ、ひっ迫しているほど強いなど、景気の先行きは明るいとする声が多かったです。

堤キャスター:
アメリカの4年半ぶりの利下げは、どう受け止められているのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
強い関心が寄せられているのは、市場の混乱を避けたFRBの市場とのコミュニケーションのあり方です。

事前の予想では、0.25%の利下げが濃厚でした。それがFRB高官が金融政策に関する発言を自粛する“ブラックアウト”と呼ばれる期間に、NYタイムズなどが「大幅利下げの可能性」と0.5%を匂わせる報道がありました。

これによって0.5%という大きな引き下げ幅でも、マーケットは冷静に受け止めたとする声は多いです。一方で、ブラックアウトの期間中でも、リーク形式のコミュニケーションがあるのかと、FRBのスタンスが変わったと意識されています。

それだけ、FRBとしても、雇用や消費などのデータをギリギリまで吟味しないと、判断できない経済状況だということだと思います。

日本の成長に「人材投資」さらなる賃上げ必須

堤キャスター:
東京のマーケットでは、海外からの投資が存在感を増していますが、日本への投資については、どう見られているのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
地政学リスクの視点から中国には投資できないなかで、日本への注目は高まっています。

そうした中で、アベノミクス以降、東京証券取引所が進めている透明性、ROEの改善などの市場改革は、アメリカの金融関係者に高く評価されていました。

ただ、今後の日本の成長についてはデフレから脱却できるイメージを持つ方と、まだ、足腰が弱いため、慎重な金融政策を求める声に分かれていました。

そんな日本が一段と成長するためには、「人材への投資」という明確な答えが返ってきました。日本の賃上げには高い評価をしているが、まだアジアの他の国よりも低いため、更なる、賃上げによって、企業の競争力高めることに期待が高いようでした。

堤キャスター:
経済の舵取りでは、長期的な成長を促す緩やかな調整が求められます。明日の自民党の総裁選、11月のアメリカ大統領選の行方なども含め、引き続き注視していきたいと思います。
(「Live News α」9月26日放送分より)

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