売り手市場が続き、中小企業の採用活動が困難になっています。名古屋市の企業では、これまで作っていた製品の「伝え方」を変えたことで、人が集まっています。

■中小企業は苦戦…新卒の学生採用

9月10日、愛知県岡崎市で「地元就職フェア」が行われました。会場では、多くの学生が説明を聞きに来る企業もあれば、なかなか人が集まらない企業もありました。

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中村精機の求人担当 金澤秀和さん:
(学生の集まりは)正直なところ少ないですね。ネームバリューがある会社さんの方がやっぱり強いので、そういったところと戦うのはちょっとつらいかなと。

売り手市場のいま、目標の採用人数に対して十分な採用ができていない中小企業は半数を超える58.4%と、新卒の学生を採用するのに苦戦しています。

小原建設の採用担当 澤田翔さん:
7~8人くらいまだ足りていない。大学3年生の夏のタイミングで出遅れちゃった。

売り手市場であることに加え、就職活動の早期化も、中小企業の採用活動を困難にしています。

岡崎商工会議所の市川優美子さん :
応募がなかなか集まらないことですとか、早いうちに学生さんに出会うというところで苦労されるところもあります。

■10年以上前はブースには人が来ず…劇的に変わった名古屋のメーカー

しかし、工夫して採用活動に成功した中小企業があります。

名古屋市中村区が本社のメーカー「船橋」は、飲食店や市場で使うエプロンや、通学向けの雨具などを作っています。

「漁師のカッパ」にも開発のこだわりがありました。

入社7年目の大谷真奈美さん:
漁師さんもマグロをとる人、カツオをとる人、貝をとる人で求められる仕様が違っているので、どういった仕様にするのが漁師さんに合うのかなというのを研究していて。

そうした独自商品を開発していますが、一時期は採用活動に苦戦していました。

舟橋昭彦社長:
10年以上前はよくある合同企業説明会とかにも参加させてもらったんですけど、全くブースには人が来ず、朝から晩までいても数名しか。

■「伝え方」変える“秘策”で新卒採用を5人獲得

長年にわたり大卒の新卒採用はゼロでしたが2016年以降、5人に増やすことができたといいます。そこにはある秘策がありました。

舟橋昭彦社長:
防水エプロンというものが、ただ単に水や雨から守るものではなくて、ハードな現場で働く人を生き生きと輝かせるためにあるんだと(企業の価値)を再設定して、そこのビジョンに共感してもらって入ってもらう。

船橋が製造している消防隊の防具は以前、「雨具メーカーです」と学生に会社を紹介していましたが、「命を守る製品を作っています」と伝え方を変えると、学生が集まるようになったといいます。

■学生が企業選ぶ基準は“社会や地域への貢献”

夏休み、船橋にインターンで来ていたのは岐阜大学1年生の石川壮太郎さんです。エプロンの作業手順書を作り、工場の効率化を図りました。

石川壮太郎さん:
社長さんの熱にすごく惹かれたというのがあって。企業って利益を出すのが一番の目的だけど、社会貢献という面でもしっかり考えて、エプロンを一つ一つ作っているところはすごくいいなと。

地元就職フェアに来場していた学生たちに、企業を選ぶ基準を聞きました。

大学生A:
(重視するのは)やっぱり地域貢献。

大学生B:
より中小企業の方が地域に貢献できるかなと思って。

売り手市場で新卒の採用が年々難しくなっていますが、社会や地域への貢献が、中小企業にとって採用の成功のカギのひとつとなっています。

(東海テレビ)

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